ギネス世界記録の公式ページで確認できる最新の計算記録は、314,000,000,000,000桁(314兆桁)です。記録カテゴリーの名称は「Most accurate value of pi」。達成者として登録されているのはStorageReviewとMicron Technology Inc.で、達成日は2025年11月18日となっています。
注目したいのは、計算に要した時間です。ギネス世界記録の発表によると、今回の計算は110日間で完了しました。前回の成功した計算に要した226日間と比較すると、大幅な短縮です。計算桁数を300兆桁から314兆桁へ増やしながら、処理期間を短くした点が技術的な見どころです。
なお、2026年6月1日に公開されたギネス世界記録の関連記事には、見出しに「340 trillionth digit」と記載されています。一方、同じ記事の本文は314兆桁と明記しており、公式の記録カテゴリーも314兆桁です。見出しの340兆桁を新記録と解釈するのは適切ではありません。2026年11月5日時点では、314兆桁が確認できる公式記録です。
この数字を正しく理解するには、達成日、記録保持者、計算期間を分けて確認することが大切です。ギネス世界記録の登録情報と2026年6月の公式関連記事は、いずれも314兆桁を示しています。
【記録保持者は誰?】StorageReviewとMicron Technologyの挑戦

314兆桁の記録を達成したのは、米国のStorageReviewとMicron Technologyです。
このプロジェクトの特徴は、数学者が手作業で数字を求めたわけでも、巨大なスーパーコンピューターを何百台も並べたわけでもないことです。高性能なサーバーと大容量SSDを組み合わせ、1台のサーバーで長期間にわたる計算を実行しました。
計算に使用した主なハードウェア314兆桁を支えたシステム
Dell PowerEdge R7725
計算を実行した2Uサーバー。1台の筐体に高性能CPUと大量のSSDを搭載。
Micron 6550 ION NVMe SSD
61.44TBモデルを40台使用。合計約2.4PBの容量を確保。
AMD EPYC 9965
192コアCPUを2基搭載。合計384コアで膨大な演算を処理。
StorageReviewの技術報告によると、40台のSSDのうち34台を計算用の作業領域に割り当て、残り6台を最終結果の保存に使用しました。計算ソフトウェアのy-cruncherが処理中に必要とする一時データは非常に大きく、最終的な円周率の数字を保存する容量だけでは足りません。
Micronの技術解説では、計算に利用できる容量は約2.1PB、全体では約2.4PBと説明されています。計算中に同時使用されたストレージ容量は最大約1.43PiBに達しました。
ここで重要なのは、Micron製SSDが単に完成した数字を保存するために使われたわけではないことです。計算途中に発生する大量のデータを読み書きし続け、長期間にわたって安定した性能を維持する役割を担いました。
この記録は円周率の計算競争であると同時に、企業向けストレージ技術の耐久性と性能を示す実証実験でもあります。
【歴代記録を比較】100兆・202兆・300兆・314兆桁の更新史
円周率の計算記録は、コンピューターの処理能力だけでなく、大容量ストレージの進化とともに更新されてきました。
特に2022年以降は、Google Cloud、StorageReview、KIOXIA、Linus Media Groupなど、IT企業や技術チームが記録更新に参加しています。
円周率の計算記録・歴代年表| 時期 | 計算桁数 | 達成チーム・企業 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 100兆桁 | Google Cloud | クラウド環境を活用した大規模計算 |
| 2024年3月 | 105兆桁 | StorageReview | Solidigm製SSDを活用 |
| 2024年6月 | 約202兆桁 | StorageReview | 85日間の連続計算を含む大規模プロジェクト |
| 2025年4月2日 | 300兆桁 | KIOXIA・Linus Media Group | ギネス世界記録に認定 |
| 2025年11月18日 | 314兆桁 | StorageReview・Micron Technology | 最新の公式記録 |
この年表で注意したいのは、すべての計算実績が同じ意味でギネス世界記録に認定されたわけではない点です。2024年の105兆桁や202兆桁はStorageReviewが公表した計算実績であり、2025年の300兆桁と314兆桁はギネス世界記録の公式認定が確認できる記録です。
2025年4月2日に達成された300兆桁は、KIOXIAとLinus Media Groupの共同プロジェクトによるものです。KIOXIAの公式発表では、2.2PBのSSDストレージを使用し、約7か月半にわたって計算を実行したと説明されています。
これに対し、StorageReviewとMicron Technologyは、2025年7月31日に計算を開始し、11月18日に完了。約110日間で314兆桁に到達しました。
300兆桁から314兆桁への更新は、数字だけなら約4.7%の増加です。しかし、計算期間を約226日から110日へ短縮した点も見逃せません。単純に計算能力を増強するだけではなく、ストレージの構成やデータ処理の効率を改善した成果といえます。
なお、300兆桁の達成発表は2025年5月16日付のKIOXIA Americaのプレスリリースで公表されましたが、実際の記録達成日は4月2日です。発表日と達成日を混同しないようにしたいところです。
【計算の仕組み】円周率314兆桁はどうやって求めた?
そもそも円周率とは何でしょうか。
円周率πは、円の円周を直径で割ったときに得られる数学定数です。一般的には3.1415926535……と表されますが、小数部分は無限に続き、同じ数字の並びが一定周期で繰り返されることもありません。
そのため、314兆桁を計算したといっても、円周率のすべての数字を求め終わったわけではありません。無限に続く数字のうち、先頭から314兆桁分を計算したという意味です。
1. Chudnovskyアルゴリズムで円周率を計算今回の314兆桁計算で使用されたのは、1988年に発表されたChudnovsky(チュドノフスキー)アルゴリズムです。
この方法は、円周率を求めるための収束性の高い無限級数を利用します。通常の方法で少しずつ計算するのではなく、巨大な整数演算を効率的に処理することで、膨大な桁数を扱えるようにします。
計算ソフトウェアには、Alexander Yeeが開発したy-cruncherが使用されました。同ソフトウェアは円周率をはじめとする数学定数の超高精度計算に対応しており、Chudnovsky方式などのアルゴリズムを利用できます。
2. FFTなどを利用して巨大な数値を処理314兆桁を求めるには、通常の電卓や一般的なプログラミング処理では対応できない規模の整数演算が必要です。
そこで重要になるのが、FFT(高速フーリエ変換)などを応用した高速な多倍長演算です。多倍長演算とは、一般的なコンピューターの整数型や浮動小数点型では扱いきれない巨大な数値を、複数のデータに分けて計算する技術です。
また、途中の計算結果を一時保存するチェックポイントや、計算結果の検証に必要なデータも大量に発生します。今回のプロジェクトでSSD容量が2PBを超えたのは、このような中間データを扱う必要があったためです。
3. 最終結果の検証も欠かせない何兆桁もの数字を計算できたとしても、途中に演算ミスやデータ破損があれば、その結果は正確ではありません。
超高精度計算では、計算処理そのものに加えて、データの整合性や結果の検証が不可欠です。110日間にわたる長時間の処理でシステムを安定稼働させたことも、今回の達成を支えた重要な要素でした。
つまり、円周率の計算記録はCPUの速さだけで決まるものではありません。演算能力、メモリー容量、SSDの読み書き性能、システム全体の安定性がそろって初めて実現できる挑戦なのです。
【意外と違う】円周率の計算ギネスと暗唱ギネスの違い
「円周率ギネス」と検索すると、314兆桁という数字と、人間が円周率を何桁まで暗記したかという記録が一緒に紹介されることがあります。
しかし、この2つは競技の内容も、達成方法も、評価基準も異なります。
コンピューターによる計算記録
StorageReview・Micron Technologyが2025年11月18日に達成。計算ソフトウェアと高性能サーバーを使用。
人間による暗唱記録
Rajveer Meenaが2015年3月21日に達成。目隠しをして約10時間かけて暗唱。
ギネス世界記録の「Most decimal places of Pi memorized」というカテゴリーでは、インドのRajveer Meenaが70,000桁を暗記した記録が掲載されています。
達成日は2015年3月21日。VIT Universityで挑戦し、目隠しをした状態で約10時間かけて円周率を暗唱しました。これはコンピューターによる計算ではなく、人間の記憶力を競う記録です。
加えて、暗唱には1分間で何桁を思い出せるかという別カテゴリーも存在します。ギネス世界記録によると、Fang Zhaoは2025年8月31日に中国・北京で598桁を1分間に想起する記録を達成しました。
このように、同じ円周率をテーマにした記録でも、長時間かけて大量の数字を暗記する競技と、短時間で正確に数字を思い出す競技は別々に管理されています。
314兆桁という数字を見て「人間が314兆桁を暗記した」と誤解しないように注意しましょう。
【知っておきたい真実】314兆桁を計算する意味とよくある誤解
ここまで数字を増やす必要があるのか、疑問に感じる人もいるでしょう。
実際、日常生活で円周率を使う場合、314兆桁もの精度は必要ありません。学校の数学や一般的な工学計算では、用途に応じて数桁から数十桁程度の精度で十分なケースが大半です。
では、なぜ企業や研究チームは何兆桁もの計算に挑むのでしょうか。
円周率計算はストレージ技術の限界を試す実験今回の314兆桁計算で重要だったのは、数学的な数字の更新だけではありません。
2PBを超えるSSDを搭載し、数か月間にわたって大量のデータを読み書きし続けることで、最新のストレージシステムがどれほど安定して動作するかを確認できました。
こうした技術は、円周率計算以外にも、大規模な科学シミュレーション、AI関連のデータ処理、高性能コンピューティング(HPC)などに応用できる可能性があります。
Micron Technologyも今回の成果について、単純なピーク性能より、長時間にわたる安定したデータ供給と予測可能な処理性能に意義があると説明しています。
314兆桁は円周率の完全な値ではないもう一つの誤解は、314兆桁まで計算すれば円周率の正確な値が確定するという考え方です。
円周率は無理数であり、小数部分は無限に続きます。そのため、どれだけ桁数を増やしても、有限の桁数で完全な表現を終えることはできません。
ギネス世界記録のカテゴリー名にある「Most accurate value of pi」は、無限に続く円周率の小数展開をどこまで正確に計算できたかを競うものです。314兆桁は、円周率の終わりではありません。
13桁の数字の組み合わせがすべて登場した?今回の記録には、もう一つ興味深い特徴があります。
ギネス世界記録の公式ページは、今回の計算で、13桁からなるすべての数字の組み合わせが円周率の中に少なくとも一度は現れることが確認されたと紹介しています。
これは314兆桁という膨大な数字を調べたことで得られた興味深い観察結果です。ただし、有限の範囲で全組み合わせが見つかったことは、円周率の数字が無限の範囲で完全に均等な分布を持つことの証明ではありません。
こうした数学的な発見も、単なる桁数競争とは異なる円周率計算の面白さです。
【円周率ギネスに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年現在、円周率のギネス世界記録は何桁ですか?
A1:2026年11月5日時点で公式記録ページに掲載されているのは314兆桁です。StorageReviewとMicron Technologyが2025年11月18日に達成しました。
Q2:314兆桁の計算に何日かかりましたか?
A2:約110日間です。2025年7月31日に計算を開始し、11月18日に完了しました。前回の300兆桁の計算に要した約226日と比べ、大幅な短縮となりました。
Q3:300兆桁の記録を達成したのは誰ですか?
A3:KIOXIAとLinus Media Groupです。2025年4月2日に300兆桁を達成し、ギネス世界記録に認定されました。約2.2PBのSSDストレージを使用しています。
Q4:円周率の314兆桁は人間が暗記した数字ですか?
A4:違います。コンピューターによる計算記録です。人間の暗唱記録では、Rajveer Meenaによる70,000桁の記録がギネス世界記録の公式ページに掲載されています。
Q5:円周率は314兆桁で終わりですか?
A5:いいえ。円周率は無理数なので、小数部分は無限に続きます。314兆桁は、現在までに計算・記録された範囲を示しています。
Q6:円周率の計算にはどんなソフトウェアが使われましたか?
A6:今回のStorageReviewとMicron Technologyの計算には、y-cruncherが使われました。Chudnovskyアルゴリズムを利用し、高性能CPUと大容量NVMe SSDによって膨大な計算を実行しています。
2026年11月現在、円周率の計算におけるギネス世界記録は314兆桁です。StorageReviewとMicron Technologyが2025年11月18日に達成し、約110日間の計算で300兆桁の従来記録を更新しました。
今回の記録を理解するうえで押さえたいのは、次の3点です。
- 記録保持者:StorageReviewとMicron Technology
- 達成日:2025年11月18日
- 計算環境:40台のMicron製NVMe SSDを搭載したDell PowerEdge R7725サーバー
また、KIOXIAとLinus Media Groupが達成した300兆桁から314兆桁への更新は、SSDの大容量化や高速化、長時間稼働の安定性が記録更新を支えた事例でもあります。
円周率は無限に続くため、314兆桁が最終記録になることはありません。今後、さらに大容量のストレージや高速な演算技術が登場すれば、新しい記録が生まれる可能性があります。
円周率ギネスを見るときは、単純な桁数だけでなく、誰が、いつ、どのような計算環境で達成したのか、そして公式認定された記録なのかを確認することが大切です。