妊娠の可能性があるものの、家族やパートナーに話せない場合、医療機関に行くこと自体が怖い場合もあります。
そのようなときは、産婦人科だけでなく、自治体や専門の相談支援機関を利用できます。
こども家庭庁は2026年3月24日、予期せぬ妊娠に気づいた人に向けた情報を公開し、医療機関や自治体の相談窓口を利用するよう案内しています。
こども家庭庁が案内する主な相談先1.思いがけない妊娠の相談窓口サイト
予期しない妊娠に悩む人が、地域や相談内容に応じた支援先を探せる窓口です。
相談内容には、次のようなものがあります。
- 妊娠したかもしれないが、確認方法がわからない
- 妊娠を家族やパートナーに知られたくない
- 妊娠した場合の選択肢を知りたい
- 出産や中絶にかかる費用が心配
- 産婦人科に行くことが不安
- 誰にも相談できず、一人で悩んでいる
相談先によって電話、メール、LINEなど利用できる方法が異なります。匿名相談や無料相談に対応する窓口も掲載されています。
2.性と健康の相談センター
都道府県などの自治体が設置する相談窓口です。
予期せぬ妊娠だけでなく、不妊症、不育症、妊娠・出産、女性の健康に関する相談にも対応しています。
医療機関を受診する必要があるのか、どのような支援制度を利用できるのかなど、状況に応じた相談ができます。
3.女性相談支援センター(#8778)
生活や家庭、人間関係などに困難を抱える女性を支援するため、都道府県が設置している相談機関です。
妊娠の悩みだけでなく、DV、経済的な困窮、家庭内の問題など、複数の不安が重なっている場合にも相談できます。
こども家庭庁の相談窓口案内では、これらの支援先が紹介されています。
相談窓口と医療機関はどう使い分ける?相談窓口と産婦人科には、それぞれ異なる役割があります。
- 妊娠の可能性や選択肢について話したい場合:妊娠相談窓口
- 妊娠検査で陽性になった場合:産婦人科
- 出産・育児・経済的な支援を知りたい場合:自治体の相談窓口
- 性暴力やDVが関係している場合:女性相談支援センターや性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター
相談する段階で、出産するか中絶するかを決めている必要はありません。
妊娠の継続に不安がある場合でも、まずは現在の状況を伝えるだけで構いません。
妊娠確認にかかる費用も相談できる妊娠検査薬で陽性になった場合、産婦人科では超音波検査などによって妊娠の状態を確認します。
こども家庭庁が2026年に公開した情報では、初回受診費用の目安は5,000~10,000円程度とされています。医療機関や検査内容によって変わります。
また、自治体によっては、経済的な事情を抱える妊婦を対象とした「低所得の妊婦に対する初回産科受診料支援事業」を実施しています。
受診費用が用意できないという理由で、妊娠確認を先延ばしにする必要はありません。住んでいる自治体に補助制度の有無を確認してください。
【人工妊娠中絶】方法・費用・妊娠9週までの経口中絶薬を解説
妊娠検査で陽性となり、妊娠を継続しないことを考えている場合は、人工妊娠中絶について医療機関に相談できます。
日本では、妊娠週数や法律上の条件によって選択できる方法が異なります。
特に重要なのが、妊娠12週未満の初期中絶と、12週以降の中期中絶では、医療的な対応や身体への負担が異なるという点です。
人工妊娠中絶ができる期間と法律上の条件母体保護法では、人工妊娠中絶を実施できる期間を妊娠満22週未満としています。
つまり、通常は妊娠21週6日までが対象です。妊娠22週以降は人工妊娠中絶を行うことができません。
また、単に本人が希望すれば誰でも自由に実施できるという制度ではありません。
母体保護法第14条では、次の条件を定めています。
- 妊娠の継続または分娩が、身体的・経済的理由によって母体の健康を著しく害するおそれがある場合
- 暴行や脅迫、抵抗・拒絶できない状態での性交によって妊娠した場合
実施できるのは、原則として都道府県の医師会が指定する母体保護法指定医師です。
妊娠週数の判断や実施可能性については、医師による診察が必要です。
妊娠12週未満:手術による人工妊娠中絶妊娠12週未満の初期中絶では、主に次の方法が用いられます。
吸引法
吸引器具を使用して子宮内容物を吸引する方法です。
手動式真空吸引法(MVA)と電動式の吸引法があります。
掻爬法(そうは法)
専用の器具を用いて子宮内容物を取り除く方法です。
どちらの方法を選択するかは、妊娠週数、身体の状態、医師の判断などによって異なります。
日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2023」では、妊娠12週未満の人工妊娠中絶について、妊娠週数の確認、術前検査、手術方法や麻酔方法の説明、術後の確認などを求めています。
妊娠12週以降:中期中絶妊娠12週以降になると、初期中絶とは対応が異なります。
一般的には、子宮収縮を促して分娩に近い形で胎児や胎盤などを排出する方法が用いられます。
身体への負担が大きくなるため、入院管理が必要となるケースが一般的です。
加えて、妊娠12週以降の中絶では、死産届や火葬などの手続きが必要になる場合があります。
妊娠週数が進むほど医療的・制度的な対応が複雑になるため、妊娠を継続しない可能性がある場合は、早い段階で産婦人科に相談してください。
経口中絶薬「メフィーゴパック」とは?ミフェプリストン/ミソプロストール
妊娠初期に使用する経口人工妊娠中絶薬。2023年4月に国内で製造販売が承認されました。
メフィーゴパックは、手術とは異なる方法で人工妊娠中絶を行うための薬剤です。
国内で承認されている対象は、次の条件を満たす人です。
- 子宮内妊娠が確認されている
- 妊娠63日(妊娠9週0日)以下である
- 母体保護法指定医師による診察・管理のもとで使用する
2種類の薬剤を使用し、1剤目のミフェプリストンを投与した後、36~48時間後に状態を確認して2剤目のミソプロストールを使用する仕組みです。
重要なのは、メフィーゴパックは薬局やインターネットで自由に購入できないことです。
厚生労働省の規定により、母体保護法指定医師が所属する登録医療機関でのみ実施できます。使用中は緊急時に対応できる医療体制が必要であり、使用後も原則として1週間を目安に再受診して中絶の成否を確認します。
手術と経口中絶薬の違い| 比較項目 | 手術による中絶 | メフィーゴパック |
|---|---|---|
| 主な対象 | 初期・中期 | 妊娠9週0日以下 |
| 方法 | 吸引法・掻爬法など | 2種類の薬剤による方法 |
| 実施場所 | 指定医師の医療機関 | 指定医師の登録医療機関 |
| 医療管理 | 術前・術後の診察 | 投与中・投与後の管理 |
| 注意点 | 麻酔や手術に伴うリスク | 出血、腹痛、嘔吐など |
経口中絶薬は、必ずしも手術より身体的負担が小さいと一概にはいえません。
厚生労働省が公表した国内第Ⅲ相試験では、ミソプロストール投与後24時間までに中絶が成功した割合は93.3%でした。
一方、下腹部痛や嘔吐などの有害事象も報告されています。重度の子宮出血など重大な副作用にも注意が必要です。
そのため、薬剤による方法と手術のどちらが適しているかは、妊娠週数や健康状態を踏まえて医師と相談する必要があります。
人工妊娠中絶の費用はいくら?中絶費用は、妊娠週数、医療機関、手術方法、麻酔、術前検査、術後診察などによって異なります。
全国一律の料金設定はありません。
相談支援団体「にんしんSOS東京」が公開している参考料金では、次のような金額が示されています。
- 妊娠11週までの初期中絶:手術費用約10万~15万円
- 初期中絶の術前検査:約1万~2万円
- 妊娠12~14週の中期中絶:約30万円前後
- 妊娠16~21週の中期中絶:約45万円前後
これは全国平均や公定価格ではなく、あくまで相談支援機関が示す参考料金です。実際の費用は施設ごとに確認してください。
なお、経済的理由などによる人工妊娠中絶は、原則として健康保険の対象外です。一方、治療上の必要性がある場合には保険適用となるケースがあります。
費用を比較する際には、手術料金だけでなく、診察料、検査費用、麻酔費用、薬剤費、術後診察費などを含めた総額を確認することが大切です。
パートナーの同意は必要?未婚の場合はどうなる?人工妊娠中絶を考える際、法律上の同意要件も確認しておく必要があります。
母体保護法第14条では、原則として本人と配偶者の同意が必要とされています。
ただし、ここでいう配偶者は、単なる交際相手や性交の相手と同じ意味ではありません。
- 未婚で法律婚・事実婚の配偶者がいない場合:本人の同意が基本となる。
- 配偶者が所在不明の場合:本人の同意だけで足りる場合がある。
- 配偶者が意思を表示できない場合:本人の同意だけで足りる場合がある。
- DVなどで婚姻関係が実質的に破綻し、同意を得ることが困難な場合:本人の同意だけで実施できる場合がある。
- 性暴力による妊娠の場合:加害者の同意は必要ない。
DVなどに関する配偶者同意の取り扱いは、2021年3月の厚生労働省の解釈通知で明確化されています。
同意書について不安がある場合は、医療機関や相談支援窓口に事情を説明してください。
【プロの結論】望まない妊娠で後悔しないための判断基準
望まない妊娠への対応で、最も大切なのは、妊娠の可能性と時間的な制約を切り分けることです。
緊急避妊薬、妊娠検査、相談窓口、人工妊娠中絶は、それぞれ役割が違います。すべてを同じ段階の選択肢として考えると、必要な対応が遅れる可能性があります。
判断するときは、次の4点を優先してください。
1.性交からの経過時間を最初に確認する
72時間以内なら、妊娠検査の結果を待つのではなく、緊急避妊薬について相談してください。妊娠検査薬では、性交直後の妊娠を確認できません。
2.妊娠検査薬の陰性だけで安心しない
使用時期が早いと偽陰性になる場合があります。月経予定日との関係や性交からの経過時間を踏まえ、適切なタイミングで再検査してください。
3.妊娠週数を早めに確認する
人工妊娠中絶を考える場合、妊娠9週までの経口中絶薬、12週未満の初期中絶、12週以降の中期中絶では、方法も医療管理も違います。受診を遅らせないことが選択肢を確保するうえで重要です。
4.費用や家庭の事情も相談してよい
経済的な事情、パートナーとの関係、家族に知られたくない事情なども、妊娠相談窓口で話せる内容です。相談したからといって、その場で出産や中絶の決断を求められるわけではありません。
望まない妊娠は、本人だけが責任を抱え込む問題ではありません。医療と社会的支援の両方を利用しながら、自分の身体と生活について納得できる判断をすることが大切です。
【望まない妊娠】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:望まない妊娠かもしれない場合、最初に何をすればいい?
A1:性交から72時間以内なら、まず緊急避妊薬について産婦人科または販売対応薬局に相談してください。月経が遅れている場合や妊娠の可能性が高い場合は、適切な時期に妊娠検査薬を使用し、産婦人科を受診しましょう。
Q2:緊急避妊薬は72時間を過ぎたら絶対に使えない?
A2:国内で一般的に使用されるレボノルゲストレル製剤は、性交後72時間以内の服用が承認された使用方法です。72時間を過ぎた場合も自己判断で諦めず、産婦人科に連絡して経過時間に応じた対応を相談してください。
Q3:2026年現在、アフターピルは薬局で誰でも購入できる?
A3:対象薬局で購入できますが、すべての薬局が対応しているわけではありません。研修修了薬剤師による説明と、本人の面前での服用が必要です。購入前に厚生労働省の販売可能薬局一覧を確認してください。
Q4:妊娠検査薬が陰性なら妊娠していない?
A4:必ずしもそうではありません。検査時期が早い場合は、妊娠していても陰性になる可能性があります。一般的な検査薬は月経予定日の約1週間後から使用し、月経が来ない場合は再検査や産婦人科への相談を検討してください。
Q5:人工妊娠中絶は妊娠何週までできる?
A5:日本では原則として妊娠満22週未満までです。メフィーゴパックは子宮内妊娠が確認された妊娠63日(9週0日)以下が対象です。いずれも医師による診察と法令上の条件を満たす必要があります。
望まない妊娠に気づいたとき、必要なのは一人で答えを出すことではありません。性交から72時間以内なら緊急避妊薬、妊娠の可能性があるなら適切な時期の検査、妊娠が確認されたら産婦人科や専門相談窓口というように、段階に応じた対応があります。
2026年2月2日には緊急避妊薬の薬局販売が始まり、3月にはレソエル72も発売されました。妊娠初期の選択肢としてメフィーゴパックも承認されています。以前より入手方法や医療の選択肢は広がっていますが、購入条件や妊娠週数の制限、医療機関での管理は依然として重要です。
不安を抱えているなら、まずは医療機関や自治体の妊娠相談窓口に連絡してください。出産するかどうかを含め、どのような選択をする場合も、正確な情報と適切な支援を受けることが、自分の身体と将来を守る第一歩になります。