「スギ薬局調剤ミス薬剤師」と検索する人が知りたいのは、2021年に東京都杉並区のスギ薬局で発生した調剤過誤の詳細、糖尿病薬が混入した原因、薬を服用した女性が亡くなった経緯、そして薬剤師や運営会社がどのような責任を負ったのかという点だろう。
この問題では、2021年10月に74歳の田村マキさんに処方された薬へ、別の患者の糖尿病治療薬が混入。田村さんは低血糖後脳症を発症し、2022年5月2日に亡くなった。遺族は2024年8月にスギ薬局と薬剤師らを提訴し、同年11月22日、約4200万円の支払いを伴う訴訟上の和解が成立した。2026年現在、注目すべきなのは、金銭的な解決だけでなく、その後に実施された再発防止策と企業の安全管理体制である。
【事件の概要】スギ薬局の調剤ミスで何が起きたのか?

問題となったのは、スギホールディングスの子会社である株式会社スギ薬局が運営する東京都杉並区の店舗で発生した調剤過誤だ。
亡くなったのは、東京都杉並区に住んでいた田村マキさん。当時74歳だった。
田村さんは持病のため訪問診療を受けており、診察後に医師の処方箋をスギ薬局にFAXで送付する形で薬を受け取っていた。調剤された薬は店舗の従業員によって自宅まで届けられていたという。
問題が発生したのは2021年10月18日。
田村さんに処方された薬を一回分ずつ小分けにする作業で、直前に別の患者の薬を扱った際に分包機に残っていた糖尿病治療薬が混入した。
しかも、混入した薬は通常の調剤後に行われる薬剤鑑査でも発見されず、そのまま患者に渡された。
この事故で見逃されたのは、単なる薬の種類の間違いだけではない。処方された錠数と実際に包装された錠数にも明確な違いがあった。
薬局で行われる調剤は、薬を取りそろえるだけの仕事ではない。処方箋との照合、薬剤の確認、用量の確認、最終的な交付まで、複数の工程を経て初めて患者に薬を渡せる。
今回の事件は、こうした安全確認の仕組みが十分に機能しなかったことを示す事例となった。
弁護士ドットコムニュースや弁護士JPニュースの2024年の報道では、分包機への薬剤残留と鑑査での見落としが、事故の重要な経緯として説明されている。
【2021年10月から2024年11月】調剤過誤・死亡・訴訟和解までの時系列
事件の理解には、調剤過誤が発生した2021年と、訴訟が提起された2024年を分けて整理する必要がある。
特に、薬の混入が起きた日、病院が異常を発見した日、女性が亡くなった日、そして裁判上の和解が成立した日は、それぞれ異なる。
事件の経緯一覧| 時期 | 出来事 | 内容 |
|---|---|---|
| 2021年10月18日 | 誤調剤発生 | 分包機に残っていた別患者の糖尿病薬が混入 |
| 2021年11月14日 | 体調急変 | 田村さんの体調が急変 |
| 2021年11月15日 | 意識不明 | 救急搬送され、低血糖脳症が疑われる |
| 2021年11月16日 | 誤調剤判明 | 病院の薬剤師が薬の異常を発見し、薬局へ照会 |
| 2021年11月17日 | 家族への連絡 | スギ薬局の担当者が長男に調剤過誤を伝える |
| 2022年5月2日 | 女性が死亡 | 74歳で死亡。死亡診断書には低血糖後脳症の記載 |
| 2024年8月28日 | 民事提訴 | 遺族がスギ薬局と薬剤師らを提訴 |
| 2024年11月22日 | 訴訟上の和解 | 約4200万円の支払いを伴う和解が成立 |
| 2024年12月 | 再発防止対応 | 会長による直接謝罪や改善に関する報告 |
| 2025年1月 | 和解成立の報告 | 遺族側代理人が全面和解について公表 |
この時系列で注目したいのは、調剤過誤が2021年に起きていたにもかかわらず、遺族が民事訴訟を起こしたのは約3年後の2024年だった点だ。
誤調剤の事実が判明した後も、死亡との因果関係や企業としての責任をめぐる問題が残り、遺族側と会社側の話し合いは続いた。
2024年8月28日、遺族は東京地方裁判所に損害賠償請求訴訟を提起。報道では当初、約3850万円の請求と伝えられた。
その後、11月22日に和解が成立した。千葉日報などの報道では、和解時の請求額は約4210万円とされ、スギ薬局側が満額を支払う内容だった。
提訴時と和解時で報道された金額に違いがあるため、両者を混同しないことが大切だ。
この事件は、単なる調剤ミスの報道から、薬剤師個人の責任と企業の安全管理責任を問う問題へと発展した。
【糖尿病薬混入の原因】分包機に残っていたメトホルミンとグリメピリド
今回の調剤過誤で特に重要なのが、混入した薬剤の種類と、薬を小分けにする分包機の管理状況だ。
混入した糖尿病治療薬は2種類薬剤師向け専門メディア「じほう」の2024年12月の報道によると、混入した薬は次の2種類だった。
- メトホルミン塩酸塩錠250mg
- グリメピリドOD錠1mg
いずれも糖尿病治療に用いられる薬剤であり、田村さん自身の処方薬ではなかった。
混入の仕組みは、前の患者の薬が分包機に残ったまま、次の患者の薬を包装する作業に移ってしまったことにある。
28包中7包に糖尿病薬が混入今回の事故では、田村さんの薬は本来、1包につき2.5錠となるように28包用意される予定だった。
ところが、実際には28包のうち7包に、前の患者の糖尿病薬が1錠ずつ混入した。
その結果、該当する7包は本来の2.5錠ではなく、合計4.5錠になっていた。
| 確認項目 | 本来の状態 | 実際の状態 |
|---|---|---|
| 分包数 | 28包 | 28包 |
| 1包の錠数 | 2.5錠 | 混入した7包は4.5錠 |
| 混入薬 | なし | メトホルミン、グリメピリド |
| 混入原因 | 該当なし | 前の患者の薬が分包機に残留 |
出典は、じほうの専門報道および2024年8月の弁護士JPニュースによる遺族側の説明だ。
なぜ鑑査でも発見できなかったのか?通常、分包作業が終了した後には、薬剤師が薬の種類や数量を確認する薬剤鑑査が行われる。
今回の問題では、分包機に薬が残っていたことに加え、処方された錠数より2錠多い薬包が鑑査を通過してしまった。
スギ薬局側は、後の報道で鑑査を実施したものの見落としたという説明をしていたとされる。
一方、遺族側は、2.5錠と4.5錠という明確な数量の違いが確認できなかったことに疑問を示した。
ここには、二つの異なる安全確認の問題が存在する。
1. 前の患者の薬が残っていないかを確認する工程。
2. 分包された薬が処方箋の内容と一致しているかを確認する工程。
どちらか一方だけでなく、複数の工程で異常を発見できなかったことが、今回の事故の重大なポイントだ。
【低血糖後脳症と死亡】遺族とスギ薬局で争われた因果関係
今回の事件で最も重い問題は、誤調剤された薬を服用した田村さんが意識不明となり、その後亡くなったことだ。
2021年11月14日から意識不明に報道によると、田村さんは2021年11月14日に体調が急変した。
その後、11月15日に意識不明となり、救急搬送された。
搬送先の病院で薬を調べたところ、お薬手帳に記載されていない糖尿病薬が混入していたことが判明した。
11月16日には病院の薬剤師からスギ薬局に照会があり、調剤過誤が確認された。
その翌日の11月17日、薬局の担当者から長男に連絡が入り、誤調剤の事実が伝えられたという。
田村さんはその後も意識を回復することなく、2022年5月2日に亡くなった。
死亡診断書には直接の死因として心不全が記載され、その原因として低血糖後脳症が記されていたと弁護士ドットコムニュースは報じている。
会社側が認めたことと認めていなかったこと訴訟前の重要な争点は、調剤過誤そのものと、死亡との医学的・法的な因果関係が別の問題として扱われていたことだ。
| 争点 | 遺族側の主張 | 会社側の説明 |
|---|---|---|
| 調剤過誤 | 誤った薬が混入した | 誤調剤の事実を認める |
| 薬剤鑑査 | 必要な確認が十分に行われなかったと指摘 | 鑑査で見落としたとの説明 |
| 死亡との因果関係 | 誤調剤による低血糖後脳症が死亡につながった | 訴訟前は因果関係を認めていなかった |
| 企業責任 | 個人だけでなく会社の管理体制にも問題がある | 再発防止と誠実な対応を表明 |
2024年8月の提訴時点で、スギ薬局側は調剤過誤を認めながらも、死亡との因果関係については認めていなかった。
遺族側は、誤調剤がなければ田村さんがこのような健康被害を受けることはなかったとして、会社と薬剤師らの責任を追及した。
約4200万円の訴訟上の和解が成立2024年11月22日、東京地裁で和解が成立した。
弁護士ドットコムニュースによると、スギ薬局側は約4200万円を満額支払う内容で和解し、スギホールディングスの榊原栄一代表取締役会長が遺族に直接謝罪することも約束された。
遺族側の説明によると、和解条項には、調剤過誤によって田村さんが意識障害に至り、家族と話すこともできないまま亡くなったことへの謝罪が盛り込まれた。
スギホールディングスも同日、公式サイトで和解成立を発表し、遺族への謝罪を公表している。
ただし、ここで区別したいのは、民事訴訟上の和解と刑事裁判の有罪判決は異なるという点だ。
今回の解決は民事上の和解であり、薬剤師個人の刑事責任について裁判所が有罪判決を下したという意味ではない。
金銭的な賠償と謝罪によって民事訴訟は終結したが、事故の原因を社会全体で検証する必要性は残された。
【薬剤師の処分と会社の責任】スギ薬局の再発防止策は何が変わった?
調剤過誤が起きると、実際に薬を取り扱った薬剤師の責任が注目される。
しかし、薬剤師が個人として負う責任と、薬局を運営する会社が負う責任は同じではない。
今回の事件では、遺族側も薬剤師個人のミスだけで問題を終わらせるべきではないと訴えていた。
薬剤師は処分されたのか?この点について、薬剤師向け専門メディア「じほう」は2024年12月10日の記事で、スギ薬局側の説明を報じている。
それによると、提訴された薬剤師については、調剤過誤が発覚した直後に社内規定に沿って処分されており、当時はすでに調剤業務に携わっていなかったという。
ただし、処分の具体的な内容や期間、個々の薬剤師に対する処分の詳細は公表されていない。
したがって、懲戒解雇や薬剤師免許の取り消しなど、具体的な処分内容を断定することはできない。
また、社内処分と厚生労働省による行政処分は別の制度である。社内規定に基づく処分があったことだけで、薬剤師免許の行政処分まで行われたと判断することはできない。
薬剤師個人だけでなく会社の責任も問われた理由今回の訴訟では、株式会社スギ薬局に加えて、調剤を担当した薬剤師2人と管理薬剤師1人が被告となった。
遺族側が問題視したのは、薬剤師個人の作業ミスだけではない。
薬局の業務管理、薬剤師の配置、教育、鑑査体制など、企業としての安全管理が適切に機能していたかという点だ。
特に、遺族側は薬剤師不足と店舗拡大を背景とする業界全体の問題を指摘していた。
一方、スギ薬局は専門媒体の取材に対して、当該店舗は法定人員を満たしており、事故当日の業務量も通常の対応可能な範囲だったと説明している。
この両者の見解の違いは、今回の事件を考えるうえで重要だ。
法定の人員基準を満たしていることと、個々の調剤工程で十分な安全確認が実施できていることは、必ずしも同じではない。
スギ薬局が公表した再発防止策スギホールディングスは2024年8月28日の公式発表で、事故発生後から取り組んできた対策を明らかにした。
主な内容は次のとおりだ。
- 全店舗で調剤薬鑑査の指導を再徹底する。
- 調剤室の環境を整備する。
- 調剤マニュアルの遵守を徹底する。
- 倫理・コンプライアンスに関する再教育を行う。
- 店舗管理を徹底し、再発防止に継続して取り組む。
加えて、2024年12月18日付のPHARMACY NEWSBREAKは、榊原会長が同月15日に遺族へ直接謝罪したことや、調剤マニュアルの変更、研修内容の更新、システム化の推進について報じている。
遺族側代理人の柳原由以弁護士も2025年1月6日、前年12月にスギ薬局から謝罪と再発防止に向けた調査の報告を受けたと公表した。
これらは事故後の重要な改善措置だが、具体的なシステムの仕様や、第三者調査の詳細な報告書全文、対策の達成度を示す数値までは、公開された情報から確認できない。
本当に重要なのは、マニュアルを変更したという事実だけではない。分包機の残薬確認、薬剤鑑査、異常検知、教育体制が実際の店舗業務で機能しているかどうかだ。
【2026年最新】スギ薬局の調剤ミス、その後はどうなった?
2026年11月現在、この事件について押さえておきたいのは、民事訴訟の終結と、企業による再発防止対応がすでに報告されていることだ。
2024年12月に会長が遺族へ直接謝罪2024年11月22日の和解成立後、同年12月15日にはスギホールディングスの榊原栄一会長が遺族に直接謝罪した。
加えて、調剤マニュアルの変更や研修内容の更新など、再発防止に向けた取り組みについても説明が行われたと報じられている。
遺族側代理人の法律事務所は2025年1月6日、会長からの直接謝罪と満額支払いを伴う全面和解が成立し、2024年12月に謝罪と調査報告を受けたと発表した。
民事訴訟は終結したが、刑事責任とは別問題2024年11月の和解時点では、遺族側は薬剤師らに対する刑事告訴を取り下げない意向を示していた。
ただし、その後の刑事手続きの最終的な結果については、2026年11月時点で確認できる公表資料から確定的な結論を示すことはできない。
ここで注意したいのは、民事訴訟が和解で終結したことを、刑事責任まで確定した、あるいは刑事手続きもすべて終了したという意味に解釈しないことだ。
2026年時点で注目すべき課題この事件のその後を評価する際には、次の3点が重要になる。
1. 調剤工程の安全性
分包機に残った薬が次の患者の薬に混ざらないよう、機械の清掃や切り替え時の確認を徹底する必要がある。
2. 薬剤鑑査の実効性
処方箋と実際の薬の種類・数量を照合する工程が、形式的なチェックで終わっていないかが問われる。
3. 組織としての安全管理
薬剤師の教育や人員配置、管理薬剤師の監督、事故発生時の情報共有まで含めた仕組みが必要になる。
今回の問題は、薬剤師一人の注意力だけに頼る安全管理では、重大な事故を防ぎきれないことを示している。
2026年現在も、個別事案については、和解後の再発防止策が現場でどのように定着しているかが重要な評価ポイントとなる。
【よくある質問】スギ薬局の調剤ミスと薬剤師に関するFAQ
Q1:スギ薬局の調剤ミスはいつ発生した?
A1:2021年10月18日、東京都杉並区のスギ薬局店舗で発生した。分包機に残っていた別患者の糖尿病薬が、74歳の田村マキさんの処方薬に混入した。
Q2:混入した薬はメトホルミンとグリメピリド?
A2:はい。じほうの報道によると、メトホルミン塩酸塩錠250mgとグリメピリドOD錠1mgの2種類が混入していた。
Q3:調剤ミスによって亡くなった女性は誰?
A3:東京都杉並区の田村マキさん。当時74歳で、2022年5月2日に亡くなった。死亡診断書には、心不全の原因として低血糖後脳症が記載されていたと報じられている。
Q4:スギ薬局は約4200万円を支払った?
A4:2024年11月22日の訴訟上の和解で、約4200万円の満額支払いが報じられた。また、スギホールディングス会長による遺族への直接謝罪も和解に伴う対応として約束された。
Q5:担当した薬剤師は処分された?
A5:じほうの2024年12月の報道によると、スギ薬局は、関係する薬剤師を調剤過誤発覚直後に社内規定に沿って処分し、当時は調剤業務に携わっていないと説明している。具体的な処分内容は公表されていない。
Q6:スギ薬局は再発防止策を実施した?
A6:会社は全店舗での鑑査指導の再徹底、調剤室の環境整備、マニュアル遵守、倫理・コンプライアンス教育などを公表した。その後、マニュアル変更や研修更新、システム化の推進も報じられている。
Q7:2026年現在、裁判はまだ続いている?
A7:2024年11月22日に民事訴訟上の和解が成立しており、その民事訴訟は終結している。ただし、刑事手続きについては、別途その結果を確認する必要がある。
スギ薬局の調剤過誤事件は、薬剤師が取り扱う医薬品の管理と、調剤工程における安全確認の重要性を改めて浮き彫りにした。
2021年10月、分包機に残っていたメトホルミンとグリメピリドが別の患者の薬に混入し、74歳の田村マキさんに交付された。田村さんは低血糖後脳症を経て2022年5月に亡くなり、遺族は2024年にスギ薬局と薬剤師らを提訴した。
その後、約4200万円の支払いと会長による謝罪を伴う和解が成立。会社は調剤マニュアルや研修の見直しなど、再発防止に向けた対応を進めた。
今回の事件から得られる教訓は、大きく3つある。
第一に、調剤ミスを個人の注意力だけの問題にしてはならない。
薬剤師の確認不足が直接のきっかけになったとしても、機械の管理方法、鑑査体制、教育、人員配置など、組織全体の安全管理を検証する必要がある。
第二に、薬剤鑑査は形式的な作業であってはならない。
今回のように、本来2.5錠の薬包が4.5錠になっていたにもかかわらず見逃された事例では、確認手順そのものの実効性が問われる。
第三に、事故後の説明と再発防止までが企業の責任である。
賠償金を支払い、謝罪を行うことは重要だ。しかし、それだけで失われた命が戻るわけではない。事故の原因を究明し、改善策を継続的に検証し、同じことを二度と起こさない仕組みをつくることが求められる。
2026年現在、この事件は民事訴訟上の和解という形で一区切りを迎えている。しかし、薬局に求められる安全性と説明責任は、和解成立によって終わるものではない。
スギ薬局の調剤ミス事件が残した最大の教訓は、薬剤師個人の責任追及だけではなく、患者の命を守るために企業全体の安全管理を機能させなければならないということだ。
主要な確認資料- スギホールディングス「調剤過誤事案に関する民事訴訟の提起につきまして」(2024年8月28日)
- スギホールディングス「和解成立のお知らせ」(2024年11月22日)
- 弁護士ドットコムニュース(2024年8月28日・11月22日)
- じほう「薬剤師・医療ニュース from じほう」(2024年12月10日)
- PHARMACY NEWSBREAK(2024年12月18日)
- 柳原由以弁護士所属のアリエ法律事務所「スギ薬局調剤過誤訴訟全面和解成立」(2025年1月6日)