2026年現在、日本人宇宙飛行士は誰を指すのか。日本人として宇宙へ行った人、JAXAに正式認定された宇宙飛行士、NASAやロシアの宇宙機関で活動した日系人、そして民間契約で宇宙旅行を実現した日本人は、すべて同じカテゴリーに入るわけではない。名前を調べると人数や一覧に違いが生じるのは、宇宙飛行の経験、国籍、所属機関、正式な資格の有無が異なるためだ。
2026年11月現在、JAXAに在籍する現役宇宙飛行士は星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂、諏訪理、米田あゆの6名。一方、1990年に初めて宇宙へ行った秋山豊寛や、2021年に民間契約でISSを訪れた前澤友作・平野陽三も、日本人の宇宙飛行の歴史を語るうえで欠かせない存在である。国籍とルーツ、職業資格と商業搭乗を分けると、日本人宇宙飛行士の全体像が見えてくる。
【まず答え】日本人宇宙飛行士とは誰を指す?狭義と広義の定義を整理
日本人宇宙飛行士という言葉には、実は複数の意味がある。日常的には日本人で宇宙に行った経験がある人物を指すことが多いが、宇宙機関の人事や資格制度では、宇宙飛行士として選抜・認定された職業人と、商業契約によって宇宙へ渡航した民間人を区別する。
狭義の日本人宇宙飛行士はJAXAの選抜・認定者狭義では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が選抜し、宇宙飛行士候補者として採用した後、基礎訓練や審査を経て正式認定した人物を指す。
このカテゴリーでは、宇宙に行った回数だけが資格の判断基準ではない。宇宙飛行士として認定され、地上での訓練、宇宙船の運用、ISSの維持管理、科学実験、ミッションの準備などを担当することも職務に含まれる。
そのため、2024年に認定された諏訪理と米田あゆは、まだ宇宙飛行を経験していなくても、正式なJAXA宇宙飛行士である。
広義では宇宙飛行経験者や商業宇宙飛行参加者も含む広義では、日本国籍を持ち、宇宙飛行を経験した人物や、民間企業との契約で宇宙へ渡航した人物も対象になる。
代表例が1990年の秋山豊寛、2021年の前澤友作と平野陽三である。いずれも日本人として宇宙へ行った実績を持つが、JAXAが選抜した職業宇宙飛行士と同じ経歴・資格を持つわけではない。
ここで押さえたいのは、宇宙へ行った事実と、宇宙機関の正式な宇宙飛行士として認定された事実は別という点だ。
宇宙飛行士・コスモノート・宇宙飛行参加者の違い宇宙飛行士は英語でAstronaut、ロシア語圏ではCosmonaut(コスモノート)と呼ばれる。名称は活動する国や宇宙機関の歴史によって異なる。
一方、民間の宇宙旅行に参加する人は、NASAの公式資料などではSpaceflight Participant(宇宙飛行参加者)と呼ばれる場合がある。宇宙船に搭乗する点では共通していても、職業上の役割や所属機関による資格認定は同一ではない。
つまり、宇宙飛行士という言葉を正確に使うには、国籍、選抜機関、訓練、認定、搭乗時の役割を確認する必要がある。
【2026年最新】現在の日本人宇宙飛行士は6名!現役メンバー一覧
2026年11月現在、JAXAの公式プロフィールで現役として掲載されている日本人宇宙飛行士は6名である。
2026年3月31日には古川聡がJAXAを退職した。これにより、2026年初頭の公的資料に見られた現役7名という数字は更新され、現在の在籍者は6名となっている。
星出彰彦:3度の宇宙飛行を経験したISS船長経験者星出彰彦は1968年東京都生まれ。1999年に宇宙飛行士候補者として選抜され、2008年、2012年、2021年の3度にわたって宇宙飛行を経験した。
2008年にはスペースシャトルでISSに向かい、日本実験棟「きぼう」の船内実験室の取り付けに参加。2021年にはISS第65次・第66次長期滞在の指揮を執り、日本人として2人目のISS船長を務めた。
国際的なチーム運営と宇宙ステーションの運用経験を持つ、現役メンバーの中心的な存在である。
油井亀美也:航空自衛隊出身、2026年1月に地球へ帰還油井亀美也は1970年長野県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊で勤務し、2009年にJAXAの宇宙飛行士候補者に選抜された。
2015年に初飛行を経験し、ISSでは宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機のロボティクス運用などを担当した。
2度目の飛行となったCrew-11では、2025年8月にISSへ到着。約5か月半の長期滞在を経て、2026年1月15日にクルードラゴン宇宙船で地球へ帰還した。
航空自衛隊で培った飛行経験と、ISSでの実務能力を兼ね備える宇宙飛行士である。
大西卓哉:民間航空会社出身、3人目の日本人ISS船長大西卓哉は1975年東京都生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業し、全日本空輸でパイロットとして勤務した後、2009年にJAXAへ入社した。
2016年に初飛行し、2025年にはクルードラゴンCrew-10でISSへ向かった。第72次・第73次長期滞在ではフライトエンジニアを務め、さらに日本人として3人目のISS船長に就任した。
2025年8月に地球へ帰還しており、宇宙船の操縦に関する知識と航空機の運航経験を宇宙活動に生かしている。
金井宣茂:医師・潜水医学の経験を持つ宇宙飛行士金井宣茂は1976年生まれ。防衛医科大学校を卒業し、医師として防衛医科大学校病院や自衛隊関連の医療機関などで勤務した。
2009年にJAXAへ入社し、2011年に宇宙飛行士として認定。2017年12月から2018年6月までISSに滞在し、約168日間の宇宙滞在を経験した。
宇宙では医学実験、健康管理、船外活動などに参加。医師としての専門知識を宇宙医学や長期滞在時の健康研究に役立てている。
諏訪理:2027年ごろのISS長期滞在ミッションに指名諏訪理は1977年生まれ。プリンストン大学大学院で地球科学の博士号を取得した後、青年海外協力隊、国連世界気象機関、世界銀行などで勤務した経歴を持つ。
2023年7月にJAXAへ入構し、宇宙飛行士候補者として基礎訓練を開始。2024年10月21日付で正式なJAXA宇宙飛行士に認定された。
2026年1月には、2027年ごろに予定されるISS長期滞在ミッションの搭乗員に指名された。JAXA公式プロフィールではCrew-14への搭乗が2027年3月以降の予定として掲載されている。
地球科学と国際機関での勤務経験を持つことから、科学的な専門性と国際協力の両面で期待される人物だ。
米田あゆ:日本人女性宇宙飛行士の新世代米田あゆは1995年生まれ。東京大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部附属病院、日本赤十字社医療センターなどで医師として勤務した。
2023年4月にJAXAへ入構し、宇宙飛行士候補者として基礎訓練を開始。諏訪理とともに2024年10月21日付で正式認定を受けた。
2026年には米国での水上サバイバル訓練などにも参加している。医師としての臨床経験を持ち、将来のISS活動や有人宇宙探査を担う新世代の宇宙飛行士である。
なお、現役とはJAXAに在籍し宇宙飛行士として活動していることを意味し、現在宇宙空間に滞在しているという意味ではない。
【歴代一覧】日本人宇宙飛行士14名の経歴と宇宙飛行の実績
日本人の宇宙飛行の歴史を振り返ると、1990年の秋山豊寛から始まり、科学者、医師、パイロット、技術者など、多様な経歴を持つ人材が宇宙へ進出してきた。
以下は、秋山豊寛と、JAXAが選抜・認定した歴代13名をまとめた一覧である。秋山は商業契約による宇宙飛行の先駆者であり、JAXAの宇宙飛行士13名とは資格上のカテゴリーが異なる。
| 氏名 | 宇宙飛行・認定時期 | 主な実績・位置づけ |
|---|---|---|
| 秋山豊寛 | 1990年 | 日本人初の宇宙飛行。TBSの宇宙特派員としてソユーズTM-11でミールへ渡航。 |
| 毛利衛 | 1992年・2000年 | 日本人初のNASAスペースシャトル搭乗者。宇宙実験を担当。 |
| 向井千秋 | 1994年・1998年 | アジア人初の女性宇宙飛行士。スペースシャトルに2度搭乗。 |
| 若田光一 | 1996年・2000年・2009年・2013年・2022年 | 日本人最多の5回の宇宙飛行。日本人初のISS船長。2024年JAXA退職。 |
| 土井隆雄 | 1997年・2008年 | 日本人初の船外活動を実施。ISS建設にも参加。 |
| 野口聡一 | 2005年・2009年・2020年 | 3度の宇宙飛行を経験。日本人として初めてクルードラゴンに搭乗。 |
| 星出彰彦 | 2008年・2012年・2021年 | 3度の宇宙飛行を経験。2021年にISS船長を担当。 |
| 山崎直子 | 2010年 | スペースシャトルに搭乗。日本人女性として2人目の宇宙飛行士。 |
| 古川聡 | 2011年・2023年 | 医師出身。ISS長期滞在を2度経験。2026年3月JAXA退職。 |
| 油井亀美也 | 2015年・2025年 | 航空自衛隊出身。Crew-11でISS長期滞在を経験。 |
| 大西卓哉 | 2016年・2025年 | 民間航空会社出身。2025年に日本人3人目のISS船長を担当。 |
| 金井宣茂 | 2017年 | 医師出身。ISSに約168日間滞在。 |
| 諏訪理 | 2024年認定 | 世界銀行などを経てJAXAへ。2027年ごろのISS長期滞在予定。 |
| 米田あゆ | 2024年認定 | 医師出身。将来の有人宇宙ミッションに向けて訓練中。 |
この一覧から分かるように、日本人宇宙飛行士のキャリアは一様ではない。宇宙科学の研究者だけでなく、医師、航空自衛隊のパイロット、民間航空会社の操縦士、国際機関の専門家などが選ばれている。
日本人初の宇宙飛行は1990年の秋山豊寛日本人で最初に宇宙へ行ったのは、JAXAの宇宙飛行士ではなく、当時TBSの社員だった秋山豊寛である。
1990年12月2日、秋山は旧ソ連のソユーズTM-11に搭乗し、宇宙ステーション・ミールへ向かった。TBSの40周年記念事業として実施されたプロジェクトで、宇宙から地球の映像や無重力環境での生活を生中継した。
JAXAの公式FAQも、秋山を日本人初の宇宙飛行者として紹介している。
一方、NASAのスペースシャトルに日本人として初めて搭乗したのは毛利衛である。1992年9月、スペースシャトルで宇宙へ向かい、搭乗科学技術者として材料実験やライフサイエンス分野の実験を担当した。
したがって、「日本人初の宇宙飛行者」と「日本人初のNASAスペースシャトル搭乗者」は別人であり、秋山豊寛と毛利衛を混同しないことが大切だ。
日本人宇宙飛行士の歴史を変えた若田光一歴代の中でも、若田光一は日本の有人宇宙開発を象徴する存在だ。
1996年に初飛行を経験して以降、スペースシャトルとソユーズ、クルードラゴンという異なる宇宙船で飛行した。2014年には日本人初のISS船長となり、国際クルーの指揮を担当した。
2022年10月から2023年3月までのCrew-5ではISSに155日間滞在。5回の宇宙飛行による累計滞在時間は504日18時間35分に達し、JAXA公表の日本人最長記録を持つ。
2024年3月にはJAXAを退職したが、その業績は日本人宇宙飛行士の国際的な評価を語る際に欠かせない。
【国籍と日系ルーツ】日本国籍の宇宙飛行士と日系アメリカ人は別枠
「日本人宇宙飛行士」という検索で混乱しやすいのが、国籍と民族的ルーツの問題だ。
日本国籍を持つ宇宙飛行士と、日本にルーツを持つ外国籍の宇宙飛行士は、どちらも日本との関係を持つ人物だが、所属機関や法的な国籍は異なる。
JAXAの宇宙飛行士には日本国籍が必要JAXAが公開している2021年度の宇宙飛行士候補者募集要項では、日本国籍を有しない者は応募資格がないと定められていた。
当時の募集では、一定の実務経験と医学的条件も設けられていた。修士号取得者については実務経験1年、博士号取得者については3年の実務経験に相当する扱いがあり、学歴だけでなく職業上の経験も重視された。
JAXAは、宇宙飛行士として働く人材について、異なる専門分野の知識を持ち寄り、チームでミッションを遂行する能力を重視している。
NASAの宇宙飛行士は米国市民権が必要NASAの職業宇宙飛行士に応募する場合は、米国市民権が必要となる。米国の永住権を持つだけでは応募資格を満たさない。
NASAが公表している現在の応募条件では、基本的に次の要件が設けられている。
- 米国市民であること。
- 認定された大学などでSTEM分野の修士号を取得していること。
- 学位取得後に関連分野で3年以上の実務経験を持つこと、または一定のジェット機操縦経験を有すること。
- NASAの長期宇宙飛行に必要な身体検査に合格すること。
なお、博士課程での一定の研究期間や医学博士などは、修士号の条件を満たす代替要件として認められる場合がある。
ここで注意したいのは、日本人宇宙飛行士がNASAの宇宙飛行ミッションに参加していても、必ずしもNASA職員として採用されたわけではないということだ。
日本の宇宙飛行士はJAXAが選抜・認定し、国際協力の枠組みを通じてNASAのミッションに参加する。所属機関と国籍によって資格の位置づけが決まるのである。
日系人の代表例はエリソン・オニヅカとダニエル・タニ日本人宇宙飛行士と混同されやすい人物として、日系アメリカ人の宇宙飛行士がいる。
エリソン・オニヅカは1946年、ハワイ生まれ。日系アメリカ人の両親を持ち、米国空軍での経験を経てNASAの宇宙飛行士に選ばれた。1985年のスペースシャトル・ディスカバリーで宇宙飛行を経験し、アジア系アメリカ人として初めて宇宙へ行った人物として知られる。
1986年のチャレンジャー号事故で亡くなったことでも知られ、米国の有人宇宙開発史に名前を残している。
ダニエル・タニも日系アメリカ人のNASA宇宙飛行士である。1961年に米国ペンシルベニア州で生まれ、マサチューセッツ工科大学で機械工学を学んだ。2001年のスペースシャトル・エンデバー、2007年のディスカバリーなどに搭乗し、ISSでの活動も経験した。
この2人は日本にルーツを持つ宇宙飛行士だが、日本国籍のJAXA宇宙飛行士ではない。日系人という民族的・家族的背景と、日本国籍という法的な身分は区別する必要がある。
【正式資格と商業契約の違い】NASA・ロスコスモス・民間宇宙飛行を比較
日本人が宇宙へ行く方法は、宇宙機関に選抜される職業宇宙飛行士の道だけではない。商業契約による民間宇宙飛行も実際に行われている。
ただし、宇宙船に搭乗したという共通点だけで、すべての参加者を同じ資格の宇宙飛行士として扱うことはできない。
JAXAの正式認定は候補者選抜と基礎訓練を経て成立するJAXAでは、宇宙飛行士候補者として選抜された後、基礎訓練を受け、必要な知識や技能を習得して審査を通過することで正式な宇宙飛行士として認定される。
2021年度の募集を経て選抜された諏訪理と米田あゆは、2023年から基礎訓練を開始。約2年間の訓練を修了し、2024年10月21日付で正式認定された。
訓練には、宇宙機やISSのシステムに関する知識、科学・技術分野の学習、チーム活動、緊急時の対応などが含まれる。
この仕組みは、宇宙飛行士が単に宇宙へ行く乗客ではなく、宇宙船と宇宙ステーションの運用を担う専門職であることを示している。
NASAとロシアの宇宙機関では資格体系が異なるNASAでは、米国市民を対象にした独自の宇宙飛行士選抜制度がある。一方、日本人のJAXA宇宙飛行士は国際パートナーとしてNASAの訓練やミッションに参加する。
ロシア側については、旧ソ連時代から続くコスモノート制度があり、宇宙飛行士の選抜や訓練、宇宙船の運用を担ってきた。
なお、検索で見かける「ロシア連邦宇宙局(RSA)」という名称は、現在の組織名称としては古い。ロシア連邦宇宙局は2015年の制度改革を経て廃止され、同年に設立された国営企業「ロスコスモス(Roscosmos)」へ機能が引き継がれた。2016年1月から新しい組織体制が適用されている。
したがって、2026年のロシア側の宇宙飛行や商業搭乗を説明する場合は、旧ロシア連邦宇宙局と現在のロスコスモスを区別することが正確である。
民間契約による宇宙飛行は正式な職業資格と同じではない商業宇宙飛行は、宇宙機関の職業宇宙飛行士選抜とは異なる契約形態で実施される。民間参加者も宇宙船の安全な利用に必要な訓練を受けるが、それだけでNASAやJAXAの宇宙飛行士として認定されるわけではない。
日本人の代表例は次の3人である。
秋山豊寛:1990年の商業宇宙飛行の先駆者秋山豊寛はTBSの宇宙プロジェクトに参加し、旧ソ連との契約に基づいてソユーズTM-11で宇宙へ渡航した。
宇宙からの生中継を担当したジャーナリストであり、日本人初の宇宙飛行者という歴史的な位置づけを持つ。ソ連側で訓練を受けた経験もあるが、JAXAが選抜した職業宇宙飛行士とは異なる経歴である。
前澤友作:民間人としてISSへ渡航実業家の前澤友作は2021年12月、ロシアのソユーズMS-20に搭乗してISSへ向かった。
ロスコスモスの宇宙飛行士アレクサンドル・ミスルキンとともに飛行し、約12日間の宇宙滞在を経験した。これは民間宇宙旅行会社Space Adventuresとロスコスモスの契約による商業宇宙飛行だった。
前澤はISSでの生活や宇宙からの映像発信などを行い、日本国内でも民間人による宇宙旅行への関心を高めた。
平野陽三:前澤友作と同じミッションに参加平野陽三は前澤友作の宇宙飛行に同行した民間参加者である。2021年12月、ソユーズMS-20に搭乗し、前澤とともにISSへ渡航した。
NASAはこのミッションについて、ミスルキンをロスコスモスの宇宙飛行士、前澤と平野をSpaceflight Participantsとして紹介している。
つまり、前澤と平野は実際に宇宙飛行を経験した日本人である一方、JAXAの職業宇宙飛行士として選抜・認定された人物ではない。
この違いは、宇宙旅行が一般の人にも開かれ始めた現在、特に重要な判断基準となっている。
【日本人の宇宙飛行の歴史】1990年からISS、そして月探査へ
日本人の宇宙飛行の歴史は、単なる搭乗者の増加だけでは説明できない。初期の宇宙実験、国際宇宙ステーションの建設、長期滞在、商業宇宙飛行、そして月探査へと活動の目的そのものが変化してきた。
1990年代:日本人が初めて宇宙へ進出1990年の秋山豊寛の飛行は、日本の一般社会に宇宙からの生中継という新しい映像体験をもたらした。
その後、1992年には毛利衛がスペースシャトルに搭乗。1994年には向井千秋が宇宙飛行を経験し、アジア人初の女性宇宙飛行士となった。
1997年には土井隆雄が日本人初の船外活動を実施。日本の宇宙活動は、宇宙空間での科学実験から宇宙施設の組み立てや維持管理へと広がった。
2000年代:ISS建設と国際協力の拡大2000年代には、日本人宇宙飛行士が国際宇宙ステーションの建設や運用に本格的に参加するようになった。
若田光一、野口聡一、星出彰彦、山崎直子らがスペースシャトルで宇宙へ向かい、日本実験棟「きぼう」の設置や各種実験を担当した。
特に「きぼう」は、日本が独自の有人宇宙技術を実証する重要な施設となり、宇宙環境を利用した科学研究の拠点として運用されてきた。
2010年代:長期滞在と宇宙での専門業務が定着2010年代には、ISSでの長期滞在が日本人宇宙飛行士の主要な活動となった。
古川聡、星出彰彦、油井亀美也、金井宣茂らが長期滞在ミッションに参加。宇宙医学、材料科学、生命科学、地球観測など幅広い実験を実施した。
また、ISS船長を務める日本人も現れ、日本が国際有人宇宙活動において重要な役割を担うようになった。
2020年代:民間宇宙船と月探査への移行2020年代には、民間企業が開発した有人宇宙船への搭乗が本格化した。野口聡一は2020年、クルードラゴンでISSへ向かい、日本人として初めて同宇宙船に搭乗した。
2021年には前澤友作と平野陽三が商業契約でISSへ渡航。宇宙飛行の担い手が国家機関の職業宇宙飛行士だけではなくなったことを象徴する出来事だった。
一方、JAXAは2021年度の宇宙飛行士候補者募集において、ISSだけでなく、月周回有人拠点ゲートウェイや月面活動も将来の活動領域として想定した。
2024年には諏訪理と米田あゆが新たに認定され、2026年には諏訪のISS長期滞在ミッションへの指名も発表された。
日本人宇宙飛行士の活動は、地球低軌道での実験やISS運用から、将来の月探査に向けた技術・人材育成へと広がっている。
【プロの結論】日本人宇宙飛行士の実態は所属・国籍・搭乗歴で見分ける
日本人宇宙飛行士を調べる際、最も大きな誤解を生むのは「宇宙に行った人なら全員が同じ資格を持っている」という考え方である。
実際には、JAXAの正式認定者、NASA所属の米国宇宙飛行士、日系アメリカ人の宇宙飛行士、ロシア側のコスモノート、民間契約による宇宙飛行参加者という異なるカテゴリーが存在する。
宇宙飛行士の情報を見極める4つの判断基準人物の位置づけを確認するときは、次の4点を順番に見ると分かりやすい。
- 国籍:日本国籍なのか、米国籍などの外国籍なのか。日系ルーツだけで日本人と判断しない。
- 所属機関:JAXA、NASA、ロスコスモスなど、どの機関に所属していたのかを確認する。
- 資格・認定:宇宙飛行士候補者なのか、正式認定された職業宇宙飛行士なのか、商業宇宙飛行参加者なのかを区別する。
- 宇宙飛行の実績:実際に宇宙へ行ったのか、訓練中なのか、将来のミッションに指名されている段階なのかを確認する。
2026年現在のJAXA所属の現役宇宙飛行士は6名だが、6名全員が宇宙へ行ったわけではない。
諏訪理と米田あゆは正式認定を受けた宇宙飛行士だが、宇宙飛行はこれからである。反対に、古川聡や若田光一はすでにJAXAを退職しているものの、宇宙飛行士としての実績が失われたわけではない。
このため、「現役宇宙飛行士」「歴代宇宙飛行士」「宇宙へ行った日本人」という3つの人数を混同してはいけない。
宇宙旅行の参加者と職業宇宙飛行士は役割が違う商業宇宙飛行の普及によって、宇宙へ行くこと自体は以前より多様な人に開かれつつある。しかし、宇宙船に乗ることと、宇宙船を運用する専門職として選抜・訓練されることは別の話だ。
民間参加者にも安全訓練は必要だが、職業宇宙飛行士には長期的な訓練、科学実験、船外活動、宇宙ステーションの維持管理、緊急事態への対応など、より広い責任が求められる。
したがって、商業宇宙旅行の参加者を低く評価する必要はない一方で、職業宇宙飛行士と同じ資格を持つと誤解するのも適切ではない。
日本人宇宙飛行士の実態を理解するうえでは、宇宙へ行ったという結果だけでなく、そこに至るまでの選抜制度、所属機関、専門性、そして宇宙で担った役割まで見ることが重要である。
日本人宇宙飛行士に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年現在、日本人宇宙飛行士は何人いますか?
A1:JAXAに在籍する現役宇宙飛行士は6名です。星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂、諏訪理、米田あゆが該当します。歴代のJAXA選抜・認定者は13名で、最初に宇宙へ行った秋山豊寛を加えると14名として整理できます。
Q2:日本人で最初に宇宙へ行った宇宙飛行士は誰ですか?
A2:1990年12月2日に旧ソ連のソユーズTM-11で宇宙へ向かった秋山豊寛です。当時はTBSの社員で、宇宙からの生中継を担当しました。NASAのスペースシャトルに日本人として初めて搭乗した人物は、1992年の毛利衛です。
Q3:日本人宇宙飛行士になるにはNASAの資格が必要ですか?
A3:必ずしも必要ではありません。日本人の場合、基本的にはJAXAの選抜を受け、候補者としての基礎訓練を修了し、正式認定される道があります。NASAの職業宇宙飛行士に応募するには米国市民権が必要であり、JAXAの宇宙飛行士がNASAのミッションに参加することとは別の制度です。
Q4:前澤友作や平野陽三も正式な宇宙飛行士ですか?
A4:2人は2021年に商業契約でISSへ渡航した宇宙飛行参加者です。宇宙飛行の実績はありますが、JAXAやNASAの職業宇宙飛行士として選抜・認定された人物ではありません。
Q5:日系アメリカ人の宇宙飛行士も日本人宇宙飛行士に含まれますか?
A5:広義の日本との関係を持つ宇宙飛行士として紹介されることはあります。ただし、エリソン・オニヅカやダニエル・タニは米国のNASA宇宙飛行士であり、日本国籍のJAXA宇宙飛行士とは区別されます。
Q6:次に宇宙へ行く予定の日本人宇宙飛行士は誰ですか?
A6:JAXAの公式プロフィールでは、諏訪理が2027年ごろにISS長期滞在ミッションへ参加する搭乗員として指名されています。予定時期やミッション計画は変更される可能性があります。
日本人宇宙飛行士という言葉は、単に日本人で宇宙へ行った人だけを意味するわけではない。JAXAの正式認定を受けた職業宇宙飛行士、NASAなど外国の宇宙機関に所属する日系人、商業契約による宇宙飛行参加者では、国籍や資格、宇宙での役割が異なる。
2026年11月現在、JAXAに在籍する現役宇宙飛行士は6名。諏訪理と米田あゆという新世代の宇宙飛行士が加わり、油井亀美也や大西卓哉らがISSでの活動実績を重ねている。2026年3月には古川聡がJAXAを退職し、歴代メンバーの顔ぶれにも変化が生まれた。
一方、秋山豊寛の1990年の飛行から、前澤友作と平野陽三の2021年の商業宇宙飛行まで、日本人が宇宙へ進出する道は広がっている。日系人のNASA宇宙飛行士も含めれば、日本と宇宙開発の関係はさらに多面的だ。
これからはISSでの長期滞在だけでなく、ゲートウェイや月面探査に向けた活動も重要になる。日本人宇宙飛行士を正しく理解するには、人数だけで判断せず、国籍、所属機関、正式資格、実際の搭乗実績という4つの視点を持つことが欠かせない。
主な事実確認資料: JAXAの現役・歴代宇宙飛行士プロフィール、2024年の認定発表、2026年の退職発表・飛行実績、NASAの宇宙飛行士応募要件とISSミッション記録、内閣府の宇宙政策資料、ロシアの宇宙機関に関する法令。