那須御用邸は、栃木県那須郡那須町の那須高原に位置する、皇室の方々が静養されるための施設です。大正15年(1926年)に設置され、昭和天皇をはじめ、歴代の天皇や皇族にゆかりのある場所として知られています。2026年現在も宮内庁が管理する御用邸の一つであり、一般的な観光施設とは異なる役割を担っています。
一方、かつて御用邸の敷地だった森林の一部、約560haは2008年に宮内庁から環境省へ移管され、2011年には「那須平成の森」として一般開放されました。現在では、豊かな自然を守りながら、一般の人々が散策や自然体験を楽しめる場所になっています。
那須御用邸の場所や設置された歴史、本邸・附属邸の違い、現在の役割、一般公開の有無まで、宮内庁・環境省・宮内公文書館などの公的資料をもとに解説します。
【場所と現在】那須御用邸はどこにある?2026年も皇室の静養施設として使用

那須御用邸があるのは、栃木県那須郡那須町です。
環境省が公表した御用邸用地の資料では、所在地は栃木県那須郡那須町大字湯本207-1ほかとされています。那須高原の中腹に位置し、標高はおよそ570~1,420メートルに及びます。
周囲には那須連山の山々や森林、温泉地が広がり、夏場でも比較的涼しい高原環境が特徴です。
この立地は、御用邸が設置された目的とも深く関係しています。もともと那須御用邸は、皇族が夏の暑さを避け、自然豊かな環境で静養するための施設として整備されました。
2026年現在の那須御用邸の役割宮内庁の公式施設案内によると、御用邸は天皇皇后両陛下をはじめとする皇室の方々の静養の場として使用されています。
那須御用邸もその一つであり、現在も皇室ゆかりの施設として位置づけられています。
重要なのは、那須御用邸が単なる歴史的建造物や観光名所ではないという点です。
建設から約100年が経過した2026年現在も、皇室の静養という本来の役割を持つ施設です。
宮内庁が案内する現行の御用邸には、那須御用邸のほか、神奈川県の葉山御用邸、静岡県の須崎御用邸があります。
それぞれ異なる地域環境に位置していますが、皇室の静養を支える施設という共通点があります。
【歴史】那須御用邸はなぜ大正15年に設置された?昭和天皇との関係
那須御用邸の歴史を理解するうえで重要なのが、大正15年(1926年)という設置年です。
この施設は、当時皇太子だった裕仁親王、後の昭和天皇のための御用邸として建設されました。
建設候補地に那須が選ばれた理由宮内庁の宮内公文書館が公開している歴史資料によると、新しい避暑用御用邸の候補地については、大正13年(1924年)ごろから調査が進められていました。
候補として挙がったのは、次の3地域です。
- 油壺(現在の神奈川県)
- 那須岳山麓地方(現在の栃木県)
- 箱根(現在の神奈川県)
当時の調査資料では、既存の御用邸について、周辺地域の発展や敷地の広さなどの課題が指摘されていました。
そのなかで那須が評価された理由は、主に次の点です。
1. 夏でも比較的涼しい気候
那須岳の山麓は、避暑地として適した爽やかな気候を備えていました。
2. 広大で景観に恵まれた土地
山々を望む雄大な景観があり、静養だけでなく運動にも適した環境が確保できました。
3. すでに宮内省が土地を所有していた
那須御料地として取得済みの土地があったため、新たに土地を購入する必要がありませんでした。
こうした条件が重なり、那須が山麓地方の有力候補となりました。
1926年7月に完成、8月に初めて行啓宮内公文書館の記録によると、那須御用邸は大正15年7月に新設され、同月16日に竣工しました。
そして同年8月12日、皇太子裕仁親王が初めて那須御用邸を訪れています。
その後、昭和天皇の時代を経て、歴代の天皇や皇族が利用する静養施設として受け継がれてきました。
那須御用邸の歴史年表| 年代 | 出来事 | 歴史的な意味 |
|---|---|---|
| 明治23年(1890年) | 那須御料地が設置される | 御用邸建設の基盤 |
| 大正13年ごろ(1924年) | 新しい避暑用御用邸の候補地調査 | 那須などが候補になる |
| 大正15年7月16日(1926年) | 本邸が竣工 | 那須御用邸の始まり |
| 大正15年8月12日 | 裕仁親王が初めて行啓 | 皇太子の静養施設として使用開始 |
| 昭和10年(1935年) | 附属邸が建設される | 施設が拡充される |
| 平成9~13年度(1997~2001年度) | 森林の自然環境調査 | 動植物や生態系の状況を把握 |
| 平成20年3月(2008年) | 約560haの森林を環境省へ移管 | 自然環境の保全と一般利用へ |
| 平成23年5月22日(2011年) | 那須平成の森が開園 | 一般の人々が自然に触れられる場所に |
【建物と歴代天皇】本邸・附属邸の役割は?昭和天皇から続く皇室との関係
那須御用邸には、本邸と附属邸があります。
宮内庁の公式案内では、本邸は大正15年、附属邸は昭和10年に建設されたと説明されています。
両者の建設時期には9年の差があり、御用邸が長い期間にわたって整備されてきたことが分かります。
本邸と附属邸の違い本邸は1926年に建設された御用邸の中心となる建物です。
那須御用邸の設置当初から存在する建物であり、皇室の静養施設としての歴史を象徴する存在です。
一方、附属邸は1935年に建設された追加の建物です。
名称上、本邸に付属する施設として位置づけられています。ただし、宮内庁が一般向けに公開している資料では、両建物の部屋ごとの用途や具体的な使い分けまでは詳述されていません。
建物の名称だけから、現在の具体的な居住者や使用状況を決めつけることはできません。
また、御用邸には本邸・附属邸のほか、櫻鳴亭、澄空亭、清森亭という木造の御休所もあります。
歴代天皇と那須御用邸那須御用邸は、昭和天皇との関係から始まり、平成の時代にも皇室とのつながりを保ってきました。
特に注目したいのは、歴代天皇と那須の自然との関係です。
昭和天皇は植物学に深い関心を持ち、那須の植物に関する研究や著作を残されました。
また、上皇陛下も御用邸の森林に生息する動植物の調査に関心を寄せられています。
1997年度から2001年度にかけて実施された栃木県立博物館による調査では、ブナやミズナラの自然林をはじめ、多様な動植物が生息・生育していることが確認されました。
この調査が、後に森林の一部を一般の人々に開放する構想につながっていきます。
つまり、那須御用邸の歴史には、皇室の静養だけでなく、自然環境への関心という側面もあります。
【環境省移管の経緯】約560haが那須平成の森になった理由
那須御用邸を調べる際、特に重要なのが、約560haの森林が環境省へ移管された出来事です。
これは単なる土地の管理変更ではありません。
皇室ゆかりの森林を保全しながら、国民も自然に触れられる場所として活用するという、新しい取り組みでした。
2008年3月に宮内庁から環境省へ移管那須御用邸の敷地には、長年にわたり人の立ち入りが限られていた豊かな森林が残されていました。
その自然環境を調査した結果、ブナやミズナラの森林を中心に、多様な動植物が確認されました。
こうした自然を将来に残しながら、一般の人々にも自然と触れ合う機会を提供するという考えから、御用邸用地の一部を環境省へ移管することになりました。
移管が実施されたのは平成20年(2008年)3月です。
移管された土地は、一般に約560haと紹介されています。
環境省の行政資料では、所管換の対象区域を約570haとし、その内訳を北側地区約567ha、旧競技場付近約3haと整理しています。
ここで数字の違いに注意が必要です。
- 約560ha: 那須平成の森の施設紹介などで使われる面積。
- 約570ha: 環境省の移管対象区域に関する行政資料上の面積。
対象範囲や面積の整理方法が異なるため、両方の数字が公的資料に登場します。
那須平成の森は2011年5月22日に開園移管後は、自然環境を保護しながら一般の人々が利用できる施設の整備が進められました。
そして、2011年5月22日、日光国立公園の一部として那須平成の森が開園しました。
開園日は国際生物多様性の日でもあります。
施設の整備だけでなく、自然環境のモニタリング調査や遊歩道の整備、自然体験プログラムの準備なども進められました。
現在の那須平成の森は、単に森林を歩ける観光地ではありません。
自然を守りながら、その価値を来園者に伝え、環境について学べる場所として運営されています。
【徹底比較】那須御用邸と那須平成の森は何が違う?
那須御用邸と那須平成の森は、もともと同じ土地の歴史につながっています。
しかし、現在は管理主体も目的も異なります。
両者を混同しないためには、次の違いを押さえておくと分かりやすいでしょう。
| 比較項目 | 那須御用邸 | 那須平成の森 |
|---|---|---|
| 所在地 | 栃木県那須郡那須町湯本 | 栃木県那須郡那須町高久丙 |
| 歴史 | 1926年に設置 | 2011年に開園 |
| 成り立ち | 皇室の静養施設 | 御用邸用地の一部を活用 |
| 管理主体 | 宮内庁 | 環境省を中心とする管理運営体制 |
| 主な目的 | 皇室の静養 | 自然環境の保全・自然体験・環境学習 |
| 面積 | 移管前の用地は約1,200ha | 約560ha |
| 一般公開 | 通常の一般観光向け公開施設ではない | 一般利用が可能 |
| 主な施設 | 本邸・附属邸・御休所 | フィールドセンター・遊歩道など |
| 利用方法 | 皇室の静養の場 | 散策・自然観察・ガイドウォーク |
両者の最大の違いは、施設としての目的です。
那須御用邸は、現在も皇室の静養のために使用される施設です。
一方、那須平成の森は、自然環境を守りながら一般の人々が利用できる場所として整備されています。
そのため、那須平成の森を訪れても、那須御用邸の本邸や附属邸を見学できるわけではありません。
両者は歴史的につながっていますが、現在の施設としては明確に区別する必要があります。
約560haの森林が一般開放された意味この取り組みの特徴は、森林を単純に観光地へ転換したわけではないことです。
人の立ち入りが限られていた環境を保全しながら、自然を学ぶ機会を提供する仕組みが整えられました。
特に、自由に散策できる区域と、ガイド同行で利用する区域を分けている点は重要です。
自然を楽しむことと、自然を守ることを両立させるための管理方法が採用されています。
【一般公開・見学】那須御用邸の内部は見られる?那須平成の森なら散策できる
那須御用邸に興味を持った人が最も気になるのが、実際に見学できるかどうかでしょう。
結論からいえば、那須御用邸の本邸・附属邸は、通常の観光施設のように一般公開されている場所ではありません。
宮内庁の御用邸案内でも、那須御用邸は皇室の静養施設として紹介されており、一般向けの常設見学コースや通常の参観受付は案内されていません。
一方、那須平成の森は一般の人々が訪れることのできる施設です。
那須平成の森には2つのエリアがある那須平成の森は、大きく次の2つのエリアに分かれています。
1. ふれあいの森
一般の来園者が自由に散策や自然体験を楽しめる区域です。
フィールドセンターを中心に園路が整備されており、駒止の滝の観瀑台へ続く遊歩道などもあります。
車椅子で利用できる園路も整備されているため、幅広い世代が自然を楽しめます。
このエリアの利用は無料です。
2. 学びの森
自然環境をできるだけ守ることを重視した区域です。
自由な立ち入りは制限されており、インタープリターと呼ばれる自然解説員と一緒に歩くガイドウォークで利用します。
所要時間は2時間からで、森の生態系や動植物について詳しく学べます。
また、フィールドセンターでは30分間の無料ミニプログラムも実施されています。当日申し込みが可能です。
2026年の開園時間・休園日那須平成の森の公式案内による基本的な利用時間は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 通常の開園時間 | 9:00~16:30 |
| 5月・7月・8月 | 9:00~17:00 |
| 休園日 | 水曜日 |
| 祝日と水曜日が重なる場合 | 原則として翌日休園 |
| 例外 | ゴールデンウイーク・お盆・年末年始は無休 |
| ふれあいの森 | 無料 |
| 一部プログラム | 有料 |
2026年11月の通常の開園時間は9時から16時30分までです。
ただし、臨時休園やイベントによる変更もあるため、訪問当日は公式カレンダーで確認することをおすすめします。
アクセスと訪問時の注意点那須平成の森フィールドセンターの所在地は、栃木県那須郡那須町高久丙3254です。
自動車の場合は、那須ICまたは那須高原スマートICから向かうルートが便利です。
普通車約60台分の駐車場があります。
公共交通機関については注意が必要です。2021年4月から那須平成の森への路線バスの乗り入れは行われていません。那須湯本エリアからタクシーを利用する方法が案内されています。
また、紅葉シーズンなどは那須街道周辺で渋滞が予想されます。
訪問する場合は、時間に余裕を持った計画が必要です。
【プロの結論】那須御用邸を知るなら、皇室の歴史と自然保全の両面を見るべき
那須御用邸を理解するうえで、単に皇室の別荘として捉えるだけでは、その歴史的な意味を十分に理解できません。
1926年の設置から現在まで続く皇室の静養施設という役割と、約560haの森林が一般開放された自然保全の取り組み。この2つを合わせて考えることが大切です。
特に注目したいのは、2008年の環境省への移管です。
それまで皇室の施設用地として管理されていた森林の一部が、自然環境を維持しながら国民にも開かれる場所へと変わりました。
これは、皇室ゆかりの土地の歴史を残しながら、その自然的価値を広く共有する取り組みとして捉えられます。
読者が実際に訪問先を選ぶ際には、次の基準が参考になります。
- 皇室の歴史や御用邸の成り立ちを知りたい人: 宮内庁の公式資料や那須高原ビジターセンターの展示資料を確認する。
- 那須の自然を体験したい人: 那須平成の森のふれあいの森を散策する。
- 森林の生態系について学びたい人: インタープリターによるガイドウォークに参加する。
- 本邸や附属邸の内部を見学したい人: 一般向けの通常見学施設ではないことを理解しておく。
このように、目的によって調べるべき施設や利用方法は異なります。
【那須御用邸に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:那須御用邸は現在も天皇陛下が利用しているのですか?
A1:はい。2026年現在も宮内庁が管理する皇室の静養施設として位置づけられています。ただし、個別の滞在日程や現在の利用状況については、公開されている情報と区別して考える必要があります。
Q2:那須御用邸は一般公開されていますか?
A2:本邸や附属邸は、通常の観光客向けに一般公開されていません。一般の人が訪問できる関連施設としては、約560haの森林を活用した那須平成の森があります。
Q3:那須平成の森は那須御用邸と同じ場所ですか?
A3:もともとは那須御用邸の敷地の一部でしたが、2008年に約560haが環境省へ移管され、別の施設として整備されました。現在は自然保護と一般利用を目的とする日光国立公園の施設です。
Q4:那須御用邸の本邸と附属邸はいつ建てられましたか?
A4:本邸は大正15年(1926年)、附属邸は昭和10年(1935年)に建設されました。宮内庁の公式資料で確認できます。
Q5:那須平成の森は無料で見学できますか?
A5:ふれあいの森の散策は無料です。ただし、一部の自然体験プログラムは有料です。学びの森は自由散策ができず、ガイドウォークへの参加が必要です。
那須御用邸は、栃木県那須町に位置する、1926年設置の皇室の静養施設です。
本邸は大正15年、附属邸は昭和10年に建設され、昭和天皇をはじめ歴代の天皇や皇族との関係を築いてきました。
2026年現在も宮内庁が管理する施設として、その役割を維持しています。
一方、2008年には敷地の一部にあたる約560haが環境省へ移管され、2011年5月22日に那須平成の森として一般開放されました。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
- 那須御用邸:皇室の静養を目的とする施設
- 那須平成の森:自然環境の保全と一般利用を目的とする施設
那須御用邸の歴史を知ることは、皇室と那須高原の関係を理解することにつながります。そして那須平成の森を訪れることは、その歴史のなかで守られてきた豊かな自然を実際に体験する機会になります。
皇室の歴史を伝える場所と、国民が自然に触れられる場所。その両方が存在することこそ、現在の那須御用邸を理解するうえで最も要点です。