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【栄養状態・地域差・階級差】江戸時代の人々の体格を左右したものとは?

津田 美咲 津田 美咲 • 更新: • 公開: • 読了約 11 分
目次

江戸時代の平均身長を理解するには、単に食事の量だけでなく、どのような食品を食べ、どのような環境で成長したのかを見る必要があります。

江戸時代の身長と栄養状態の関係

身長の伸びには、幼少期から思春期までの栄養状態が深く関係します。

十分なエネルギーやタンパク質を摂取できない状態が続いたり、感染症などによって成長が妨げられたりすると、最終的な身長に影響する可能性があります。

江戸時代の食生活を考えるうえで興味深いのが、京都市の伏見城跡遺跡から出土した人骨の研究です。

京都大学の片山一道らが実施した科学研究費助成事業の研究では、約630人分の江戸時代人骨を分析し、京都の町民の体格や健康状態、食生活などを調査しました。

その結果、成人の平均推定身長は次のようになっています。

- 男性:約157.9cm
- 女性:約144.3cm

この結果は、江戸東京の庶民を対象とした研究とは異なる地域でも、男女ともに150cm台前半から半ば程度の小柄な体格が確認されたことを示しています。

江戸時代の人々は何を食べていた?

江戸時代の食事といえば、米を中心とした和食を思い浮かべる人が多いでしょう。

しかし、当時の食生活は地域によって異なり、魚介類や野菜なども重要な食料でした。

2011年に『Anthropological Science(Japanese Series)』に掲載された研究では、伏見城跡遺跡から出土した人骨27個体について、炭素・窒素の安定同位体比を分析しています。

内訳は男性9人、女性12人、子ども6人です。

分析からは、伏見の人々が淡水魚や海産魚、陸上植物などをタンパク質源として利用していた可能性が示されました。

また、男性の同位体比には女性との差があり、男性のほうが海産魚類や貝類を多く摂取していた可能性も指摘されています。

こうした研究は、江戸時代の人々が一様に質素な食事をしていたわけではないことを示しています。

幼少期の健康状態を示す歯の痕跡

さらに興味深いのが、太宰府市教育委員会が2021年に刊行した『サコ・浦山遺跡』の発掘調査報告書です。

同報告書では、近世人骨の歯に見られるエナメル質減形成について分析しています。

エナメル質減形成とは、歯の形成期に何らかの障害が生じた痕跡です。

原因として、幼少期の栄養障害、胃腸疾患、麻疹や水痘などの感染症、高熱を伴う病気などが挙げられています。

この痕跡は、当時の人々が成長期にどのような環境ストレスを受けていたのかを考える手掛かりになります。

ただし、歯に痕跡があることだけで、その人の身長が低かったと断定することはできません。身長と健康状態を考える際には、複数の身体的証拠を組み合わせる必要があります。

江戸時代の身長には地域差があった?

江戸時代の平均身長は、全国どこでも同じだったわけではありません。

代表的な研究を比べると、次のような違いが見られます。

- 江戸の庶民:男性約155〜157cm、女性約143〜146cm
- 京都の町民:男性約157.9cm、女性約144.3cm
- 九州の近世人骨:遺跡や埋葬集団によって異なる推定値が報告されている

特に太宰府市の発掘調査報告では、甕棺や早桶など異なる埋葬施設の人骨が比較されています。

同じ近世の資料でも、集団によって推定身長が異なることが分かります。ただし、一部の集団は計測できた個体が1〜2体にとどまるため、地域全体の平均とみなすことはできません。

地域差を考える際には、食料事情だけでなく、遺跡の年代や被葬者の属性、サンプル数も確認する必要があります。

武士と庶民では身長に大きな差があった?

江戸時代の身分制度を考えると、武士と庶民では身長にも大きな差があったように思える可能性があります。

ところが、平本嘉助の1996年の研究を紹介する江戸東京博物館の資料では、次のような比較が示されています。

- 江戸庶民:男性155〜156cm、女性143〜145cm
- 将軍・大名:男性平均157cm
- 将軍家などの正室・側室:女性平均145cm

この比較では、武士階級と庶民の間に大きな身長差は認められなかったと推察されています。

身分が高ければ必ず背が高かったという単純な構図ではありません。

身長には幼少期の生活環境や栄養状態などが関係しますが、階級だけで個人の体格を説明することはできないのです。

【2026年最新資料】江戸時代の平均身長を調べるなら何を参考にすべき?

江戸時代平均身長

2026年11月時点で、江戸時代の平均身長を調べる際に参考になる主要資料を整理します。

江戸東京博物館のレファレンス資料

最初に確認したいのが、東京都江戸東京博物館の図書室が公開している「江戸時代の男女の平均身長はどれくらいか」です。

この資料は2025年3月27日に更新されています。

男性155〜158cm、女性143〜146cmという推定範囲のほか、鈴木尚、鈴木隆雄、平本嘉助の研究成果がまとめられています。

複数の研究を横断して確認できるため、一般読者が最初に参照する資料として適しています。

2026年に確認できる最新の現代人の身長統計

現代人との比較では、厚生労働省の「令和6年国民健康・栄養調査報告」が重要です。

2024年に実施された調査の詳細データは2026年9月に政府統計の総合窓口で公開されました。

特に第14表には、年齢階級別の男女の身長について、人数、平均値、標準偏差が掲載されています。

江戸時代の人骨研究と現代の全国統計を組み合わせることで、約200〜300年の時間を隔てた日本人の体格の変化を比較できます。

研究資料を見極める4つのポイント

江戸時代の平均身長について調べるときは、次の項目を確認すると、数字の違いに惑わされにくくなります。

1. 対象地域: 江戸、京都、九州など、どこの人骨を調査したのか。
2. 標本数: 男性・女性それぞれ何体の人骨を計測したのか。
3. 推定方法: 大腿骨を使ったのか、どの身長推定式を採用したのか。
4. 対象年代: 江戸前期なのか後期なのか、あるいは江戸時代全体なのか。

例えば、男性157.11cmという数字と155.09cmという数字があっても、直ちにどちらかが間違いとはいえません。

異なる研究条件で算出された推定値だからです。

2026年時点では、江戸東京博物館の資料を基礎に、平本嘉助の原著論文や鈴木隆雄の著書を照合し、現代の比較対象には厚生労働省の最新調査を使う方法が合理的です。

【江戸時代の平均身長】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:江戸時代の男性の平均身長は155cmだったのですか?

男性の平均身長は、おおむね155〜158cmと推定されています。155cmは一般的な目安の一つですが、平本嘉助の研究や鈴木尚の著書では157cm前後の数値も示されています。

Q2:江戸時代の女性の平均身長は145cmだったのでしょうか?

はい、145cm前後が代表的な目安です。研究によって143〜146cm程度の幅があり、鈴木尚の著書で紹介される庶民の平均推定値は145.62cmです。

Q3:江戸時代の前期と後期では、どちらが高身長でしたか?

関東地方の人骨資料では後期のほうが高い推定値になっています。男性は前期155.09cmから後期156.49cm、女性は143.03cmから144.77cmへ上昇しています。

Q4:縄文時代の人は江戸時代の人より背が高かったのですか?

平本嘉助の関東地方の研究では、縄文時代の平均推定身長は男性約159.1cm、女性約148.1cmで、江戸時代より高い数値になっています。ただし、縄文時代の調査標本は少ないため、地域差や資料数に注意が必要です。

Q5:江戸時代の人の身長は、なぜ人骨から分かるのですか?

大腿骨などの長さと生前の身長には相関関係があるためです。研究者は骨の最大長を測定し、日本人の骨格に適した身長推定式に当てはめて計算します。

Q6:江戸時代の平均身長を調べる最新資料は何ですか?

歴史資料では、2025年3月27日更新の東京都江戸東京博物館のレファレンス資料が参考になります。現代人との比較には、2026年に詳細データが公開された厚生労働省の「令和6年国民健康・栄養調査報告」が利用できます。

江戸時代の平均身長は、男性がおおむね155〜158cm、女性が143〜146cmと推定されています。

発掘された人骨を使った研究からは、当時の日本人が現代人より小柄だったことだけでなく、時代や地域、生活環境によって体格に違いがあったことも分かります。

【プロの結論】重要なのは平均値だけでなく、その背景にある生活環境

江戸時代の平均身長を考えるうえで、特に押さえておきたいのは次の3点です。

- 時代による変化: 関東地方では前期より後期の推定平均身長が高い。
- 生活環境との関係: 食生活や疾病、幼少期の栄養状態が成長に関係していた。
- 研究方法の違い: 人骨の保存状態、標本数、推定式によって平均値が変わる。

江戸時代の人々を一律に「男性155cm、女性145cm」と捉えるだけでは、当時の暮らしや身体的特徴の全体像は見えてきません。

縄文時代との比較では、古代の日本人が江戸時代の人々より高身長だったという興味深い結果もあります。一方、現代の日本人は江戸時代の推定値を大きく上回っています。

平均身長の変化は、日本人の身体だけでなく、食生活や健康環境、社会の変化を映し出す歴史資料でもあります。

2026年現在、過去の人骨研究と最新の国民健康・栄養調査を照らし合わせることで、江戸時代から現代までの日本人の体格の変遷を、より具体的に理解できるようになっています。

主な参考資料

- 東京都江戸東京博物館「江戸時代の男女の平均身長はどれくらいか」(2025年更新)
- 平本嘉助「縄文時代から現代に至る関東地方人身長の時代的変化」(1972年)
- 鈴木尚『骨は語る 将軍・大名家の人々』(東京大学出版会、1985年)
- 鈴木隆雄『日本人のからだ』(朝倉書店、1996年)
- 平本嘉助「江戸時代人の身長と棺の大きさ」(1996年)
- 片山一道ら「江戸時代京都町民の人物像、生命表、病歴などを探る骨考古学的研究」(科学研究費補助金研究成果報告書、2011年)
- 厚生労働省「令和6年国民健康・栄養調査報告」(2026年公表)

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津田 美咲

スポーツ報道7年。連盟の公式記録、試合結果、会見の書き起こしで数値と経歴を確認しています。

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