大阪府警が公表した令和7年末の資料では、大阪府内の暴力団組織は合計110組織、勢力数は約1,230人となっている。
注目すべきなのは、六代目山口組が府内の勢力の過半数を占めている点だ。組織数だけでなく、構成する勢力の規模にも大きな差がある。
令和7年末の大阪府内の勢力一覧大阪府警の公表値を整理すると、次のようになる。
出典:大阪府警察「大阪の暴力団勢力(令和7年末現在・概数)」
この数字から読み取れる要点は3つある。
- 六代目山口組の集中度が高い:約680人で、府内全体の約55%を占める。
- 神戸山口組と絆會はそれぞれ約50人:両団体の大阪府内の勢力は、六代目山口組と比較すると小規模。
- その他の団体も約450人:主要3団体だけで大阪の暴力団情勢全体を説明することはできない。
なお、ここでいう勢力数は大阪府内についての警察公表値であり、全国の構成員数と混同してはいけない。また、警察自身が概数であると説明しており、組織数や勢力数の合計には集計上の差が生じる場合がある。
つまり、大阪の暴力団情勢を調べる場合には、全国規模の組織図だけでなく、大阪府内の勢力を切り分けて見る必要がある。
【六代目山口組・神戸山口組・絆會】大阪での勢力と現在の関係

大阪の暴力団情勢を理解するうえで欠かせないのが、六代目山口組の分裂後に続く組織間の対立だ。
六代目山口組は大阪府内の最大勢力は、全国的にも最大規模の指定暴力団として知られる。
2015年8月末、六代目山口組が分裂し、神戸山口組が結成された。その後、対立関係が続き、2017年には神戸山口組傘下組織の一部が離脱して任侠山口組を結成。2020年2月には絆會へと名称を変更した。
2025年の警察庁資料でも、六代目山口組は神戸山口組、池田組、絆會との対立関係を背景に、特定抗争指定暴力団等としての指定期限が延長されたと報告されている。
大阪府内では六代目山口組が約680人と突出しており、勢力図の中心的存在となっている。
神戸山口組と大阪の関係は、六代目山口組から分裂して成立した組織である。
大阪府内の勢力数は約50人、組織数は5組織。全国規模の組織の動向と大阪での勢力規模は、分けて理解する必要がある。
警察庁の令和7年の組織犯罪情勢では、六代目山口組との特定抗争指定暴力団等としての指定期限延長を受け、警戒区域外で会合を開催したことが記録されている。
絆會と寝屋川市の動きについては、2025年の動きが大阪の情勢を考えるうえで重要だ。
警察庁の公表資料によると、2025年7月、大阪府公安委員会は、大阪市内に所在していた施設に代わり、大阪府寝屋川市内の施設が絆會の主たる事務所である旨を公示した。
大阪府内での勢力数は約50人、組織数は5組織となっている。
ただし、主たる事務所の所在地と、実際の活動範囲や構成員の居住地は同じ意味ではない。所在地の変更だけで、組織の勢力範囲全体が変わったと判断することはできない。
【2025年の検挙実績】大阪府警は暴力団関係者665人を検挙
大阪府警の暴力団対策を評価するうえで、勢力数と並んで重要なのが検挙実績だ。
大阪府暴力追放推進センターが公表する令和7年の統計によると、大阪府警による暴力団構成員等の検挙人員は665人。前年の666人から1人減少した。
一方、大阪府警の犯罪統計では、暴力団犯罪の検挙件数は757件。前年の1,000件から243件減少している。
検挙人員と検挙件数の違い| 指標 | 令和6年 | 令和7年 |
|---|---|---|
| 検挙人員 | 666人 | 665人 |
| 検挙件数 | 1,000件 | 757件 |
検挙人員は検挙された人の数、検挙件数は事件の数を示す。両者は異なる指標であり、同じ意味ではない。
人員がほぼ横ばいである一方、件数が減少している点は、単純な人数の増減だけでは犯罪情勢を判断できないことを示している。
資金獲得活動と詐欺への対応大阪府暴力追放推進センターの統計では、665人のうち、伝統的資金獲得活動に関する検挙人員は210人で、前年より4人増加した。
詐欺による検挙人員は37人で、前年より4人減少している。
この数字から見えてくるのは、暴力団対策が暴力事件の摘発だけでは完結しないという点だ。
資金獲得活動や詐欺など、組織の経済的基盤に関わる犯罪への対応も必要になる。
大阪府警の令和7年の活動実績では、暴力団排除特別強化地域内の飲食店から、用心棒の役務を提供する対価として金銭を受け取っていた暴力団幹部らを、暴力団排除条例違反で検挙した事例も紹介されている。
暴力団対策法による中止命令は大阪で70件もう一つ注目したいのが、暴力団対策法に基づく中止命令だ。
大阪府暴力追放推進センターによると、2025年に大阪府警察が発出した中止命令は70件。全国の754件の約9.2%に相当する。
内訳では、暴力的要求行為の禁止に関するものが38件で、主な行為は次のとおりだ。
- 不当な贈与要求
- 現場助勢
- 不当な債務免除等の要求
中止命令は、暴力団員による不当な要求行為などをやめさせるための行政上の措置である。
暴力団対策法第11条では、指定暴力団員が暴力的要求行為を行い、相手方の生活や業務の平穏を害している場合などに、公安委員会が行為の中止を命じられると定めている。
この制度は、犯罪の摘発だけでなく、被害の拡大を防ぐための仕組みでもある。
【大阪府暴力団排除条例】特別強化地域16地区と禁止行為
大阪府警の暴力団対策で重要な柱となっているのが、大阪府暴力団排除条例だ。
この条例は、警察による取締りだけに依存せず、行政、府民、事業者が一体となって暴力団の活動を社会から排除することを目的としている。
2024年7月の条例改正で何が変わった?大阪府暴力団排除条例は2011年4月に施行され、その後も改正が行われている。
特に注目されるのが、2024年7月1日に施行された一部改正だ。
大阪府警によると、特定営業者と暴力団との利益供与などについて、罰則を伴う禁止規定が整備された。
対象となる特定営業には、次のような業種が含まれる。
- 風俗営業
- 性風俗関連特殊営業
- 特定遊興飲食店営業
- 接客業務受託営業
- 飲食店営業
- 特殊風俗あっせん事業
- 客引き等に関係する営業
また、一定の地域に営業所を有する建設業者についても規制対象が設けられた。
特定営業者が暴力団員を業務に従事させたり、用心棒の役務を受けたり、その対価として利益を供与したりする行為は禁止されている。
違反した場合には、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される規定が設けられている。
暴力団排除特別強化地域は16地区条例改正では、特定営業に関する暴力団排除特別強化地域も指定された。
大阪府警の公表資料では、府内の主要繁華街などを中心に、町丁目単位で16地区が指定されている。
主な地区名は次のとおりだ。
- キタ地区
- 京橋地区
- 夢洲地区
- ミナミ地区
- 谷町・上本町・鶴橋地区
- 松島地区
- 天王寺・阿倍野地区
- 新世界・西成地区
- 十三地区
- 西中島地区
- 今里地区
- 翁橋地区
- 岸和田地区
- 和泉地区
- 門真地区
- 足代・小阪地区
加えて、建設業に関する暴力団排除特別強化地域として、大阪市、堺市、岸和田市、枚方市、門真市、東大阪市の6市が指定されている。
ここで注意したいのは、特別強化地域に指定された場所で、すべての商取引や営業活動が一律に禁止されるわけではないということだ。
規制の対象となる営業、行為、地域が条例で具体的に定められている。
暴力団事務所への規制も強化条例には、暴力団事務所の開設・運営に関する規制もある。
一定の禁止区域で暴力団事務所を開設または運営した場合、公安委員会は中止を命じることができる。
また、疑いがある場合には関係者に説明や資料の提出を求め、対象施設への立入検査を行う制度も設けられている。
これは、暴力団の資金獲得活動を抑えるだけでなく、地域住民の生活環境を守るための制度でもある。
【暴力団対策法と大阪府暴力追放推進センター】市民を守る相談・支援制度
暴力団対策は、警察が事件を捜査して検挙するだけでは十分ではない。
不当要求を受けた事業者や、暴力団事務所の周辺で不安を抱える住民が、適切な支援を受けられる環境も必要だ。
大阪府暴力追放推進センターの役割は、暴力団などの反社会的勢力に関する相談を受け付ける公益財団法人だ。
警察への相談をためらう人や、どこに相談すればよいか分からない人も利用できる。
相談対応には、警察OBをはじめ、弁護士、保護司、少年指導委員などの経験や専門知識を持つ相談委員が関わっている。
主な相談内容は次のとおり。
- 暴力団からの不当要求や金銭要求
- 事業者に対する用心棒料などの要求
- 暴力団事務所に関する相談
- 特殊詐欺や薬物などに関連する不当要求
- 暴力団からの被害やトラブルへの対応
相談業務で知り得た秘密は守られる仕組みになっている。
大阪府内の相談窓口| 相談窓口 | 電話番号 |
|---|---|
| 中央相談室 | 06-6946-8930 |
| 淀川相談室 | 06-6303-8930 |
| 堺相談室 | 072-221-8930 |
相談時間:月曜日~金曜日(祝日等を除く)午前9時30分~午後5時。来訪相談は事前予約が必要。
暴力団とのトラブルを個人で解決しようとするのは危険が伴う。金銭要求や脅迫を受けた場合は、相手と直接交渉するのではなく、警察や専門相談機関に連絡することが基本となる。
【2026年の大阪府警重点目標】トクリュウと暴力団対策の新しい課題
2026年の大阪府警の重点目標では、従来の暴力団対策に加え、匿名・流動型犯罪グループへの対策が明確に掲げられている。
この匿名・流動型犯罪グループは、一般に「トクリュウ」と呼ばれる。
トクリュウと従来型暴力団の違い従来型の暴力団は、一定の組織構造や上下関係を持ち、指定暴力団などの制度によって組織として把握されている。
一方、トクリュウには、SNSや求人サイトなどを利用して犯罪の実行役をその都度募集する特徴がある。
警察庁の令和7年版犯罪情勢では、トクリュウの中核部分が匿名化され、犯罪実行者が流動化している実態が説明されている。
加えて、暴力団構成員がトクリュウの首領やメンバーとなる例、トクリュウから暴力団への資金の流れが確認される例も報告されている。
つまり、暴力団とトクリュウは完全に無関係な存在ではない。組織間の資金や人的なつながりを解明することが警察の重要な課題になっている。
令和8年大阪府警察重点目標の内容大阪府警が公表した令和8年の重点目標では、次のような対策が掲げられている。
| 重点分野 | 主な対策 |
|---|---|
| 暴力団対策 | 暴力団総合対策の推進 |
| トクリュウ対策 | 犯罪グループの実態解明と取締り |
| 特殊詐欺対策 | 詐欺の取締りと被害防止 |
| SNS型詐欺対策 | 投資詐欺・ロマンス詐欺への対応 |
| 薬物犯罪対策 | 薬物犯罪の取締り |
| 犯罪収益対策 | 犯罪によって得られた収益の追跡 |
特に注目されるのが、匿名・流動型犯罪グループ等の犯罪組織に対する総合対策だ。
大阪府警は、暴力団総合対策だけでなく、薬物犯罪や外国人組織犯罪、犯罪収益対策も同じ重点分野に位置付けている。
また、2025年の大阪府警の活動実績では、匿名・流動型犯罪グループの情報を部門横断的に集約・分析し、主要メンバーを対象とする取締りを推進したことが紹介されている。
実際に、他府県で結成されたグループが大阪府内の対立するグループを襲撃しようとした事件では、首領やメンバーら27人が検挙されたと公表されている。
2026年の警察活動は何を重視するのか2026年4月2日の国家公安委員会委員長代理の記者会見でも、トクリュウと暴力団などとの関係が取り上げられた。
警察庁は、匿名・流動型犯罪グループの中核的人物を特定し、違法なビジネスモデルそのものを解体する方針を示している。
同会見では、警察庁に設置された匿名・流動型犯罪グループ情報分析室や、200人規模に拡充された「匿流ターゲット取締りチーム(T3)」についても説明された。
これは全国的な警察体制の強化であり、大阪府警の重点目標に掲げられたトクリュウ対策とも方向性が一致する。
大阪の暴力団対策は、単に既存組織の構成員を減らすだけでなく、犯罪収益の流れや組織間の連携を解明する段階に入っている。
【大阪府警とヤクザに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年現在、大阪の暴力団は何人いる?
大阪府警が公表した最新の年末統計である令和7年末の数字では、約1,230人。六代目山口組が約680人、神戸山口組が約50人、絆會が約50人、その他が約450人となっている。
Q2:大阪で最も勢力が大きい暴力団はどこ?
大阪府内では六代目山口組が最大勢力。令和7年末の公表値では約680人、80組織となっている。
Q3:大阪府警は2025年に暴力団関係者を何人検挙した?
2025年中の暴力団構成員等の検挙人員は665人。暴力団犯罪の検挙件数は757件だった。
Q4:大阪の暴力団排除特別強化地域はどこ?
キタ、ミナミ、京橋、新世界・西成、十三、西中島など、府内の主要繁華街を中心に16地区が指定されている。建設業については別途6市が指定されている。
Q5:暴力団から金銭を要求されたら、どこに相談すればいい?
大阪府暴力追放推進センターや最寄りの警察署に相談できる。大阪府暴力追放推進センターの中央相談室は06-6946-8930。相談は無料で、秘密を守る仕組みも設けられている。
2026年の大阪府内の暴力団情勢を把握するうえで、最も重要な基準は、構成員の人数だけで判断しないことだ。
令和7年末の勢力数は約1,230人で、六代目山口組が約680人を占める。一方、2025年の暴力団関係者の検挙人員は665人、検挙件数は757件だった。
大阪府警は暴力団対策法や大阪府暴力団排除条例を活用し、資金獲得活動や用心棒料の要求などへの取締りを進めている。
さらに2026年は、トクリュウとの関係や特殊詐欺、SNS型詐欺、犯罪収益の追跡が重要な課題となっている。
【プロの結論】
大阪の暴力団情勢を正しく理解するには、次の3つの視点が欠かせない。
1. 勢力の規模:六代目山口組を中心とする組織別の人数と組織数を把握する。
2. 資金獲得活動:検挙人員だけでなく、詐欺、用心棒料、不当要求などの犯罪類型を見る。
3. 新しい犯罪組織との関係:従来型暴力団だけでなく、匿名・流動型犯罪グループとの資金・人的関係にも注目する。
大阪府警の2026年の重点目標は、こうした犯罪組織の変化に対応する方向を示している。今後の情勢を追う際も、警察の年末統計、検挙実績、条例の運用状況を組み合わせて判断することが、実態を見誤らないためのポイントになる。