妊娠が判明した後に考える選択肢は、出産だけではありません。妊娠を継続するか、中絶を選択するか、出産後に自分で育てることが難しい場合に養育を託すかなど、本人の意思と身体の安全を踏まえた判断が必要です。
母体保護法で認められる人工妊娠中絶日本の人工妊娠中絶は、母体保護法に基づいて行われます。
同法第14条では、母体保護法指定医師が、次のいずれかに該当する場合に人工妊娠中絶を実施できると定めています。
- 妊娠の継続または分娩が身体的・経済的理由によって母体の健康を著しく害するおそれがある場合
- 暴行や脅迫によって、または抵抗・拒絶できない状況で妊娠した場合
人工妊娠中絶が認められる期間は、原則として妊娠22週未満です。妊娠週数は最終月経などから機械的に決めるのではなく、指定医師が医学的に判断します。
中絶の方法は妊娠週数によって異なる2026年現在、日本では手術による方法と経口妊娠中絶薬による方法があります。
| 方法 | 対象となる妊娠週数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 手術法 | 妊娠12週未満 | 吸引法などで子宮内容物を取り除く |
| 経口妊娠中絶薬 | 妊娠9週0日以下 | 医療機関で指定された薬剤を使用する |
| 妊娠12週以降 | 妊娠22週未満 | 医学的状況に応じた処置が必要 |
経口妊娠中絶薬の「メフィーゴパック」は、手術を行わず薬剤によって妊娠を終了させる方法です。
ただし、自宅で自由に服用できる一般薬ではありません。医療機関で医師の管理下において使用し、服用後の出血や子宮内容物の排出についても確認を受けます。
厚生労働省の患者向け資料では、手術法と薬剤法の双方について、メリット・デメリットや合併症の可能性を説明したうえで選択するよう案内しています。
未成年の中絶に親の同意は必要?これは未成年妊娠を調べる人が特に気にする問題です。
母体保護法第14条に記載されている同意は、本人と配偶者の同意です。親権者の同意を一律に義務付ける規定はありません。
日本産婦人科医会も、未婚者の場合は本人の同意のみで足り、未成年者についても本人が同意できるとの解釈を示しています。
したがって、未婚の17歳の妊婦が人工妊娠中絶を希望する場合、法律上、親の同意が必須とされているわけではありません。
ただし、実際の医療現場では、麻酔、入院、手術承諾書などについて医療機関独自の手続きが設けられている場合があります。本人の同意能力や医療上の安全性も含め、個別に確認する必要があります。
また、配偶者がいる場合の同意については別の取り扱いがあり、未婚の交際相手や妊娠の相手男性の同意が法律上一律に必要ということではありません。性暴力による妊娠の場合も、加害者の同意は必要ありません。
中絶費用はどれくらい?人工妊娠中絶の費用には全国一律の料金設定がありません。
通常の中絶は自費診療として扱われるため、医療機関や妊娠週数、手術方法、麻酔、検査、術後診察などによって金額が変わります。
相談時には、次の費用を分けて確認することが大切です。
- 初診・妊娠確認の検査費用
- 手術または薬剤の費用
- 麻酔・処置費用
- 術後の診察費用
- 入院が必要な場合の費用
経済的な事情がある場合は、自治体の妊娠相談窓口や女性相談支援センターにも相談してください。
出産を希望しない場合でも相談できる特別養子縁組妊娠を継続して出産したいものの、自分で育てることが難しい場合には、特別養子縁組という制度があります。
これは、子どもの福祉を目的に、実親との法的な親子関係を解消し、養親との間に実の親子と同じ法的関係を成立させる制度です。
こども家庭庁が示す主な成立要件は次のとおりです。
- 養親は原則として配偶者のいる夫婦であること
- 養親となる夫婦の一方は25歳以上、もう一方は20歳以上であること
- 養子となる子どもは、原則として家庭裁判所への審判請求時に15歳未満であること
- 原則として実父母の同意があること
- 養親となる夫婦が6か月以上子どもを監護すること
- 家庭裁判所が子どもの利益のために必要と認めること
実父母が意思表示できない場合や、虐待、悪意の遺棄など子どもの利益を著しく害する事情がある場合には、実親の同意が不要となることもあります。
特別養子縁組は、出産を決断した時点で自動的に成立するものではありません。妊娠中から児童相談所や専門の支援機関に相談し、出産後の養育方針を検討することが大切です。
【高校生の妊娠と学校生活】退学・休学・進路への影響と経済的支援

高校生が妊娠した場合、身体の変化だけでなく、授業への出席、体育実技、進学、卒業後の就職などにも影響が生じます。
しかし、妊娠したことだけを理由に、必ず高校を辞めなければならないわけではありません。
妊娠を理由とする退学勧告は適切なのか文部科学省は2018年3月29日、妊娠した高校生への対応について教育委員会などに通知を出しています。
その背景には、2015年4月から2017年3月までの2年間に実施した実態調査があります。
学校が把握した生徒の妊娠は2,098件で、妊娠を理由に懲戒として退学処分を行った事案は確認されませんでした。
一方、生徒や保護者が通学継続を希望していたにもかかわらず、学校側が退学を勧めた事案は32件ありました。
文部科学省は、妊娠した生徒の母体保護を優先しながら、学業継続の意思がある場合には安易な退学処分や事実上の退学勧告を行わない対応も考えられるとしています。
高校を続けるための選択肢妊娠した高校生には、状況に応じて次のような方法があります。
1.在籍校で学業を継続する
体調に応じて体育実技を見学やレポートに変更するなど、学校と相談しながら学習を続ける方法です。
養護教諭、スクールカウンセラー、担任などを交えた支援体制を整えることも考えられます。
2.休学する
妊娠中や出産前後の身体的負担が大きい場合、休学して体調の回復や育児環境の整備を優先する選択肢があります。
3.通信制・定時制高校へ転籍する
通学時間や授業形態を調整し、育児と勉強を両立しやすくする方法です。
4.高校卒業程度認定試験を利用する
高校を離れた後でも、大学や専門学校への進学を目指せる制度です。
妊娠を理由に退学した場合でも、再び学ぶ意思があれば、高等学校等就学支援金などの対象になり得ます。
2025年4月開始の妊婦支援給付金は未成年も対象経済的支援で特に重要なのが、2025年4月から法律に基づく制度として始まった「妊婦のための支援給付」です。
こども家庭庁の自治体向けQ&Aでは、未成年の妊婦についても年齢要件はなく、成人と同じ手続きで支給することが示されています。
さらに重要なのは、給付金は未成年の妊婦本人に支給され、申請に親権者の同意は不要と考えられていることです。
基本的な支給額は次のとおりです。
合計10万円
単胎妊娠の場合の基本的な支給額
1回目:妊婦給付認定後
5万円
2回目:胎児の数の届出後
5万円
多胎妊娠の場合、2回目は胎児の人数×5万円。日本国内に住所を有する妊婦が対象です。
この給付金は、出産・育児に関する経済的な負担を軽減する制度です。申請時には住民票のある市区町村で手続きします。
未成年であることを理由に申請を諦める必要はありません。
出産費用を軽減する出産育児一時金出産を選択した場合に確認したいのが、健康保険の出産育児一時金です。
2026年現在、原則として子ども1人につき50万円が支給されます。
主な支給要件は次の2つです。
- 出産時点で日本の公的医療保険に加入していること
- 妊娠4か月(85日)以上で出産していること
親の健康保険の被扶養者として加入している場合でも、家族出産育児一時金の対象になる可能性があります。
直接支払制度を利用すれば、健康保険から医療機関へ一時金が直接支払われるため、窓口での負担を抑えられます。
また、妊娠12週以降の流産・死産や一定の要件を満たす人工妊娠中絶も支給対象になる場合があります。
妊婦健診にも公費助成がある妊娠中は、母体と胎児の健康を確認するために定期的な妊婦健診が必要です。
厚生労働省が示す望ましい基準は、妊婦1人につき14回程度です。
2024年4月時点では、全国すべての市区町村が14回以上の公費助成を実施していました。全国平均の公費負担額は109,730円です。
自治体から交付される受診券や補助券を利用することで、健診費用の負担を軽減できます。
妊娠した未成年者は、妊婦支援給付金、妊婦健診の助成、出産育児一時金をそれぞれ確認することが大切です。これらは別の制度であり、支給条件や申請先も異なります。
【2026年最新】緊急避妊薬と未成年が利用できる妊娠相談窓口
妊娠が確定する前の段階であれば、緊急避妊薬という選択肢があります。また、妊娠後の相談についても、自治体や専門機関が支援を行っています。
2026年2月から緊急避妊薬が薬局で購入可能に2026年の大きな変更点が、緊急避妊薬の薬局販売です。
厚生労働省によると、2026年2月2日から、要指導医薬品として承認された緊急避妊薬の薬局・店舗販売が開始されました。
これにより、従来の医療機関での診察やオンライン診療による処方に加え、一定の条件を満たす薬局で購入できるようになっています。
2026年の緊急避妊薬の利用方法
薬局での購入
研修を修了した薬剤師がいる販売対応薬局で購入・服用します。
産婦人科での対面診療
医師の診察を受け、処方を受ける方法です。
オンライン診療
対応する医師による診療後、調剤対応薬局で薬を受け取る方法です。
一般的なレボノルゲストレル製剤は、性交後72時間以内にできるだけ早く服用する必要があります。
ただし、緊急避妊薬は妊娠成立後に妊娠を終了させる中絶薬ではありません。避妊に失敗した場合などに、妊娠を防ぐ目的で使用する薬です。また、服用しても妊娠を完全に防げるわけではありません。
16歳未満は薬局で購入できない未成年者の利用については年齢に関する注意点があります。
厚生労働省の販売ルールでは、性交同意年齢である16歳未満の人には、薬局での緊急避妊薬の販売は認められていません。
この場合、購入希望者の同意を得たうえで、産婦人科医やワンストップ支援センターへの相談・受診を勧める仕組みです。
16歳以上については薬局での販売対象になり得ますが、薬剤師による確認や服薬指導があります。また、18歳未満で虐待が疑われる場合は、児童相談所への通告が大切です。
購入後も、避妊が成立したか確認するため、服用から約3週間後を目安に妊娠検査薬の使用または産婦人科受診が勧められています。
こども家庭庁の妊娠相談窓口妊娠が分かった後、親や学校に知られたくない、出産費用がない、相手と連絡が取れないなどの悩みを抱えた場合は、自治体の妊娠相談窓口を利用できます。
こども家庭庁では、妊娠期から出産・子育て期までの相談支援を進めています。
代表的な相談先は次のとおりです。
| 相談先 | 主な相談内容 |
|---|---|
| にんしんSOS | 思いがけない妊娠、出産、中絶、パートナーとの問題 |
| 妊娠相談ほっとライン | 妊娠に関する不安、受診や出産の相談 |
| こども家庭センター | 妊娠中の生活、経済面、育児環境の相談 |
| 性と健康の相談センター | 妊娠・出産、避妊、性と健康の相談 |
| 女性相談支援センター | 家庭内の問題、暴力、生活困窮など |
これらの窓口は自治体や地域によって名称、受付時間、電話・SNS・対面などの相談方法が異なります。全国共通の単一電話番号ではないため、居住地に対応する窓口を確認してください。
にんしんSOSは親に言えない場合も相談できるにんしんSOSは、予期しない妊娠や妊娠の可能性について悩んでいる人のための相談窓口です。
例えば、次のような悩みを相談できます。
- 妊娠したかもしれないが、親に知られたくない
- 妊娠検査薬を買うことが怖い
- 産婦人科に一人で行けるか分からない
- 出産するお金がない
- 中絶について相談したい
- 相手から連絡が取れなくなった
- 家庭内で暴力や虐待を受けている
相談内容に応じて、医療機関、自治体、女性相談支援センター、児童福祉関係機関などにつなぐことも可能です。
親に相談できないことと、支援を受けられないことは同じではありません。
【未成年妊娠に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:未成年で妊娠した場合、親の同意なしで産婦人科を受診できますか?
A:妊娠の相談や受診について、親の同意が一律に必要とされているわけではありません。ただし、未成年者の診療や入院、処置などの同意手続きは医療機関によって異なります。受診時に事情を説明し、親に知られずに相談できるか確認してください。自治体のにんしんSOSを先に利用する方法もあります。
Q2:未成年の人工妊娠中絶には親の同意が必要ですか?
A:母体保護法には、親権者の同意を一律に義務付ける規定はありません。日本産婦人科医会は、未婚の場合は本人の同意のみで足り、未成年者も本人の同意ができるとの解釈を示しています。ただし、手術や入院などの実際の手続きは医療機関に確認してください。
Q3:18歳未満でも妊婦支援給付金を受け取れますか?
A:受け取れます。こども家庭庁のQ&Aでは年齢要件がないこと、未成年の妊婦本人に支給すること、申請に親権者の同意は不要と考えられることが明示されています。申請は住民票のある市区町村で行います。
2026年の未成年妊娠をめぐる状況を見ると、統計上の出生数だけでは把握できない問題と、制度によって支えられる部分の両方が存在します。
2025年の人口動態統計では、19歳以下の母親による出生は4,167人でした。ただし、この数字には18歳・19歳も含まれており、18歳未満だけの妊娠件数を示すものではありません。
また、未成年で妊娠した場合でも、利用できる支援制度はあります。
- 妊娠検査薬と産婦人科による妊娠確認
- 妊婦支援給付金の受給
- 出産育児一時金と妊婦健診の公費助成
- 高校在籍や進学を継続するための支援
- 母体保護法に基づく人工妊娠中絶
- 特別養子縁組による養育の選択肢
- にんしんSOSや自治体の妊娠相談窓口
未成年妊娠に直面したとき、最初から出産か中絶かの二択だけで考える必要はありません。
まず妊娠の状態を医療機関で確認し、本人が安心して意思決定できる環境を整えることが重要です。
親に話せない場合でも、専門相談窓口を利用できます。経済的な理由だけで出産を諦める前に、給付金や自治体の支援を確認することも大切です。
一方、本人の意思に反して妊娠を継続させたり、中絶を強要したりすることも適切ではありません。性暴力や虐待が関係している場合は、医療と安全確保の両面から支援を受ける必要があります。
未成年妊娠への対応で大切なのは、年齢だけで本人の将来を決めつけないことです。正確な医療情報、法律上の権利、経済的支援、教育を継続する機会を知ることが、本人と生まれてくる子どもの双方を守る第一歩になります。
主な公的資料:厚生労働省「令和7年人口動態統計(確定数)」、こども家庭庁「妊婦のための支援給付・妊婦等包括相談支援事業Q&A」、文部科学省「妊娠した生徒への対応等について」、法務省「民法(成年年齢関係)改正Q&A」、日本産婦人科医会「人工妊娠中絶における配偶者同意について」。