最初に押さえておきたいのは、2016年と2026年の熊本地震では、どちらも最大震度7を観測しているものの、マグニチュードは異なるという点です。
気象庁の観測記録では、2016年4月14日の地震がM6.5、4月16日の地震がM7.3、2026年7月28日の地震がM7.1です。震源の深さはいずれも20km未満で、比較的浅い場所で発生しました。
平成28年(2016年)熊本地震 M7.3
2016年4月16日・最大震度7
益城町・西原村で震度7を観測した本震。
令和8年(2026年)熊本地震M7.1
2026年7月28日・最大震度7
宇城市・氷川町で震度7を観測。
2026年の地震は、速報時点では震源の深さが約10kmと発表されました。その後の更新で16kmに修正されています。したがって、現在の比較では深さ16kmを使用するのが適切です。
【震度とマグニチュードの違い】M7.1なのに震度7になる理由
「マグニチュード7.1だから震度7」という関係ではありません。両者は地震を異なる角度から評価する指標です。
震度は、その場所でどれだけ揺れたかを示す震度は、ある地点で観測された地震の揺れの強さを表します。日本の気象庁震度階級は、震度0から7までの10段階です。震度5と6には、それぞれ弱・強の区分があります。
震度7は最も上の階級であり、計測震度6.5以上に相当します。震度7より上の階級はありません。
同じ地震でも、震源からの距離、地盤の性質、地形、建物の構造などによって観測される震度は変わります。隣り合う地域であっても、揺れ方が違うことがあります。
マグニチュードは地震そのものの規模を示すマグニチュードは、地下の岩盤がずれ動くことによって発生する地震の規模を示す数値です。震度のように観測地点ごとに変わるものではなく、原則として1つの地震に対して1つの値が示されます。
例えば、M7.1の地震でも震源から離れた地域では震度が小さくなることがあります。一方、震源に近く、揺れが伝わりやすい地盤では非常に強い揺れになる可能性があります。
気象庁マグニチュード(Mj)とは?2026年の熊本地震で使われているM7.1は、気象庁が算出したマグニチュードです。一般に気象庁マグニチュード(Mj)と表記されます。
気象庁マグニチュードは、地震計で観測した地震波の振幅などを基に算出する指標です。一方、モーメントマグニチュード(Mw)は、断層の面積や岩盤のずれの量、岩石の硬さなどから地震の規模を評価します。
大規模地震の規模を物理的に評価する場合にはMwが有効ですが、算出には複雑な解析が必要です。気象庁マグニチュードは、地震発生直後の迅速な情報提供にも使われています。
マグニチュードが0.2違うと何が変わる?マグニチュードは単純な足し算の尺度ではありません。気象庁の解説では、マグニチュードが1大きくなると、地震波として放出されるエネルギーは約32倍になるとされています。
この関係を使って比較すると、M7.3とM7.1では、理論上のエネルギー比は約2倍です。また、2016年4月14日のM6.5と4月16日のM7.3を比べると、約16倍の差になります。
ただし、これは地震のエネルギーの比較であり、建物の被害がそのまま2倍、16倍になるという意味ではありません。実際の被害には地盤、揺れの周期、建物の耐震性能などが関係します。
【熊本地震の発生経緯】2016年と2026年の地震を時系列で整理
熊本県では、2016年の地震活動から約10年後に再び震度7を観測しました。ただし、両者は同じ断層が同じように動いた地震ではありません。
気象庁の資料に基づき、発生日時、規模、震源の深さ、最大震度を整理すると次のようになります。
出典:気象庁「平成28年(2016年)熊本地震」「令和8年熊本地震」関連資料。
2016年4月14日:最初の震度72016年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震源とするM6.5の地震が発生しました。震源の深さは11kmで、熊本県益城町では最大震度7を観測しました。
当初の速報値はM6.4でしたが、その後の気象庁の更新でM6.5となりました。この地震は、日奈久断層帯の一部が活動したものと考えられています。
2016年4月16日:M7.3の地震が発生4月14日の地震から約28時間後の4月16日午前1時25分、熊本県熊本地方でM7.3の地震が発生しました。震源の深さは12kmです。
益城町と西原村で再び震度7を観測しました。この地震は主に布田川断層帯の一部が活動したものと考えられています。
このように、2016年の熊本地震では、最初の震度7の後にさらに規模の大きな地震が発生しました。最初の揺れが収まったことだけを理由に、安全と判断できないことを示す事例です。
2026年7月28日:令和8年熊本地震が発生2026年7月28日16時27分、熊本県熊本地方でM7.1の地震が発生しました。震源の深さは16kmで、宇城市と八代郡氷川町で最大震度7を観測しています。
気象庁は、この地震とその後に続いた一連の地震活動を「令和8年熊本地震」と命名しました。
2016年の熊本地震と比較すると、熊本県内で震度7を観測する地震は約10年3か月ぶり、日本国内では2024年の能登半島地震以来、約2年6か月ぶりとなりました。
【2026年熊本地震の発生原因】日奈久断層帯と布田川断層帯の関係
2026年の熊本地震は、プレート境界で発生した海溝型地震ではなく、陸側の地殻内部で起きた浅い内陸地震です。
地震調査研究推進本部の評価では、今回のM7.1の地震は、北北西-南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型とされています。断層の長さは約30~40kmと推定されています。
日奈久断層帯の一部が活動熊本県周辺には、布田川断層帯と日奈久断層帯という主要な活断層帯があります。
2026年の地震について、地震調査研究推進本部は、震源断層の主な部分が日奈久断層帯の高野-白旗区間の一部と、日奈久区間の北東部に及んでいると評価しました。
また、2026年7月30日から8月3日にかけて、産業技術総合研究所の研究者らが現地調査を実施。布田川断層帯の宇土区間、日奈久断層帯の高野-白旗区間、日奈久区間で地表地震断層を確認しました。
氷川町宮原では道路の白線を基準に最大184cmの右横ずれ変位が確認されるなど、地表にも断層運動の痕跡が残りました。これは、地下の岩盤のずれが地表にまで及んだことを示す重要な観測結果です。
2016年の熊本地震との関係は?2016年の地震と2026年の地震には、熊本県内の活断層帯周辺で発生した内陸地震という共通点があります。
ただし、2016年の地震では4月14日に日奈久断層帯、4月16日に布田川断層帯の一部が活動したと考えられているのに対し、2026年のM7.1の地震では日奈久断層帯の一部が主要な震源断層と評価されています。
地震調査研究推進本部は、2016年の熊本地震の活動域と2026年の活動域が近接していること、また2016年以前と比較して周辺の地震活動が活発な状態にあったことも指摘しています。
しかし、これだけで2016年の地震が2026年の地震を直接引き起こしたと結論づけることはできません。地殻内の応力変化や断層の活動状況など、複数の要素を検討する必要があります。
【日本国内で震度7を観測した地震】熊本地震は何回目?
震度7は、気象庁が1949年に震度階級を設定した際に設けられた最も高い階級です。
気象庁のFAQによると、2024年10月1日時点で震度7を観測した地震は7回でした。そこに2026年7月28日の熊本地震が加わり、2026年11月現在、国内で震度7を観測した地震は8回となります。
なお、2016年の熊本地震は4月14日と16日の2つの地震で、それぞれ震度7を観測しています。
震度7を観測した国内の地震一覧- 1995年1月17日:平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)
- 2004年10月23日:平成16年新潟県中越地震
- 2011年3月11日:平成23年東北地方太平洋沖地震
- 2016年4月14日:平成28年熊本地震の最初の震度7
- 2016年4月16日:平成28年熊本地震のM7.3の地震
- 2018年9月6日:平成30年北海道胆振東部地震
- 2024年1月1日:令和6年能登半島地震
- 2026年7月28日:令和8年熊本地震
この一覧から分かるのは、震度7は非常に限られた地震で観測されてきたということです。特に熊本県では、2016年に2度、2026年に1度、合計3回の地震で震度7が観測されました。
震度7の観測回数を調べる際には、地震の名称と実際に震度7を記録した個々の地震を区別することが大切です。2016年の熊本地震のように、一連の地震活動の中で複数回の震度7が発生するケースもあります。
【津波注意報と余震活動】2026年11月現在の最新状況
2026年7月28日の熊本地震では、強い揺れだけでなく、津波への警戒も必要になりました。また、発生直後から続いた余震活動についても、長期的な観察が続いています。
有明海・八代海に津波注意報が発表気象庁は7月28日16時29分、有明海と八代海に津波注意報を発表しました。
津波注意報は、津波による被害のおそれがある場合に発表される情報です。地震の揺れを感じた地域だけでなく、海岸付近や海中にいる人にも避難や安全確保を求めるものです。
気象庁は当日の発表で、海から上がって海岸から離れること、注意報が解除されるまで海岸に近づかないことを呼びかけました。地震の規模や最大震度だけでなく、沿岸地域では津波情報も確認する必要があります。
余震は何回発生した?最新の公式データ2026年7月28日の本震以降、熊本県周辺では多数の地震が観測されています。
気象庁が2026年10月30日に更新した最大震度別地震回数表によると、7月28日16時から10月30日午前9時までに、震度1以上を観測した地震は合計876回に達しました。
令和8年熊本地震の震度別観測回数876回
2026年7月28日16時~10月30日9時・気象庁速報値
{#each [{label:"震度7",value:1},{label:"震度5弱",value:5},{label:"震度4",value:25},{label:"震度3",value:77},{label:"震度2",value:212},{label:"震度1",value:556}] as item}
{item.label}
{item.value}回
{/each}
震度5強・6弱・6強は0回。観測回数は後日の調査で変更される場合があります。
このデータからは、発生直後に比べて強い揺れを伴う地震の頻度が低下していることが読み取れます。震度5弱以上の地震は、8月1日のM4.7の地震を最後に、10月30日までの集計では新たに観測されていません。
一方、震度1以上の地震活動そのものは継続しています。10月30日の時点でも、7月28日以降の累計は876回でした。
気象庁が示した今後の見通し気象庁は2026年9月24日の第12報で、平常時より地震発生数が多い状態は当分続くとの見通しを示しました。
一方で、最大震度5弱程度以上の地震が発生する可能性は低下しており、その発生頻度は1か月に1回程度の発生に相当する状況を下回っていると説明しています。
これは危険が完全になくなったという意味ではありません。大きな地震の後は、地震活動の減少とともに注意すべき現象も変化します。強い揺れの可能性が低くなっても、日常的な備えを続ける必要があります。
余震と本震を見分けるための注意点一般に、本震の後に同じ地域や周辺で続く地震は余震と呼ばれます。ただし、地震活動が続いている最中に、どの地震を本震と位置づけるかは、活動の推移や解析結果によって変わることがあります。
2026年の熊本地震についても、M7.1の地震だけを見るのではなく、その後の地震活動の範囲、規模、回数を継続的に確認が必要です。
また、気象庁のポータルサイトでは、活動が活発であるため、震度データベースに一部の観測記録がまだ反映されていない場合があると説明しています。速報値と後日の確定値を区別して読むことも必要です。
【プロの結論】熊本地震の震度7とマグニチュードから分かること
2016年と2026年の熊本地震を比較すると、注目すべき点は3つあります。
第一に、震度7とマグニチュードは別の指標であること。 2016年4月14日はM6.5、4月16日はM7.3、2026年7月28日はM7.1でしたが、いずれも最大震度7を観測しました。Mの数値が違っても、局地的には同じ震度階級になることがあります。
第二に、熊本県周辺には複数の活断層帯が存在すること。 2016年の地震では布田川断層帯と日奈久断層帯の一部が活動し、2026年の地震では日奈久断層帯の一部が主要な震源断層と評価されています。単に「過去に大地震が起きた場所」として捉えるのではなく、地質学的な背景を理解が必要です。
第三に、地震活動は本震の後も続くこと。 2026年10月30日までの気象庁の集計では、震度1以上の地震が876回発生しています。強い地震が減少しても、活動が完全に終息したわけではありません。
地震情報を読むときは、マグニチュードだけでなく、最大震度、震源の深さ、発震機構、余震活動、津波情報を合わせて確認してください。これが地震の規模と実際の危険性を正しく理解するための判断基準です。
【熊本地震の震度7とマグニチュード】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年の熊本地震のマグニチュードはいくつですか?
A1:気象庁マグニチュード(Mj)7.1です。2026年7月28日16時27分に発生し、震源の深さは16km、最大震度7を観測しました。
Q2:2026年の熊本地震で震度7を観測した場所はどこですか?
A2:熊本県宇城市と八代郡氷川町です。具体的な観測地点は宇城市豊野町と氷川町島地です。
Q3:2016年の熊本地震のマグニチュードはいくつでしたか?
A3:2016年4月14日の地震がM6.5、4月16日の地震がM7.3です。どちらの地震でも最大震度7を観測しました。
Q4:震度7とマグニチュード7は同じ意味ですか?
A4:違います。震度7はある地点の揺れの強さを示し、マグニチュード7は地震そのものの規模を示します。M7.1の地震でも、場所によって震度は異なります。
Q5:熊本県で震度7を観測したのは何回目ですか?
A5:2026年7月28日の地震は、熊本県内で震度7を観測した3回目の地震です。2016年4月14日と16日の2回に続く記録です。
Q6:2026年の熊本地震で津波は発生しましたか?
A6:気象庁は2026年7月28日16時29分に有明海・八代海へ津波注意報を発表しました。注意報が発表された事実と、実際に観測された津波の状況は区別して確認する必要があります。
Q7:2026年11月現在、熊本地震の余震は続いていますか?
A7:気象庁の10月30日更新資料では、7月28日以降に震度1以上を観測した地震が876回記録されています。地震活動は平常時より多い状態が続くとの見通しが示されており、引き続き防災への備えが必要です。
2026年7月28日の令和8年熊本地震は、M7.1、震源の深さ16km、最大震度7を記録しました。宇城市と氷川町で観測された強い揺れは、2016年の熊本地震以来、約10年3か月ぶりに熊本県内で発生した震度7の記録です。
2016年4月14日のM6.5と4月16日のM7.3も、それぞれ最大震度7を観測しています。つまり、熊本県では2016年に2回、2026年に1回、震度7を観測したことになります。
2026年11月現在、余震活動は減少傾向にあるものの、気象庁は平常時より地震が多い状態が続くとしています。
地震のニュースを見る際には、Mの数値だけで判断せず、震度、震源の深さ、断層の位置、津波情報、最新の地震回数を総合的に確認することが大切です。気象庁の地震情報・震度データベースと地震調査研究推進本部の評価資料を活用し、熊本県だけでなく全国どこにいても、日頃から地震と津波への備えを続けてください。
主な参考資料:気象庁「令和8年熊本地震ポータルサイト」「平成28年(2016年)熊本地震」「震度・マグニチュード・地震情報について」、地震調査研究推進本部「2026年の主な地震活動の評価」、産業技術総合研究所「令和8年熊本地震の関連情報」。