大相撲のニュースで耳にする「殊勲賞(しゅくんしょう)」とは、本場所で横綱・大関を倒したり、幕内優勝に関係する重要な白星を挙げたりした力士に贈られる特別な賞です。敢闘賞・技能賞と並ぶ「三賞」の一つで、原則として関脇以下の幕内力士が対象となります。
殊勲賞は、単に勝ち星を多く重ねれば獲得できる賞ではありません。誰を倒したのか、優勝争いにどのような影響を与えたのか、そして場所全体を通じてどれだけ優れた成績を残したのかが評価されます。2026年11月5日時点の最新記録や、賞金の2027年改定、歴代最多受賞者の魁皇・朝潮の記録まで、仕組みと見どころを整理します。
【基礎知識】殊勲賞とは?大相撲三賞の意味と役割
殊勲賞とは、大相撲の本場所で際立った功績を残した力士を表彰する制度です。読み方は「しゅくんしょう」。殊勲という言葉には、特別に優れた功績や手柄という意味があります。
大相撲では、殊勲賞・敢闘賞・技能賞の3種類をまとめて「三賞」と呼びます。いずれも本場所を盛り上げた力士を評価する賞ですが、評価する要点はそれぞれ異なります。
三賞が設けられたのは1947年三賞制度が始まったのは、昭和22年(1947年)11月場所です。戦後の相撲界の復興と発展を目指し、幕内で活躍した力士を評価する仕組みとして設けられました。
当時から現在まで続く制度であり、優勝力士だけでは測れない場所ごとの活躍を評価する役割を担っています。
例えば、横綱や大関が優勝争いを繰り広げる中で、平幕力士が上位陣を次々と破ることがあります。優勝には届かなくても、優勝争いの行方を左右するような勝利は大きな価値を持ちます。
こうした功績を評価するのが殊勲賞です。優勝力士だけでなく、上位陣に挑戦する側の力士にも注目が集まる点が、三賞制度の魅力といえます。
三賞の対象になるのは誰?三賞の基本的な対象は、関脇以下の幕内力士です。具体的には、関脇・小結・前頭の力士が該当します。
一方、横綱と大関は対象外です。また、十両以下の力士も三賞の対象にはなりません。
加えて、原則として本場所で勝ち越していることが前提です。幕内は15日間の取組が基本となるため、8勝7敗以上が通常の勝ち越しラインになります。
【受賞条件】殊勲賞の選考基準は?横綱・大関を倒すだけでは不十分
殊勲賞の選考で最も重視されるのは、勝った相手と、その白星が本場所全体に与えた影響です。
日本相撲協会の三賞選考委員会内規では、殊勲賞について、横綱・大関を倒すか、幕内優勝に関係する勝ち星を挙げた成績優秀な力士から選ぶという基準が設けられています。
主な受賞条件は3つのポイント1.横綱を倒す
横綱は最高位に位置する力士です。その横綱を関脇以下の力士が破れば、殊勲賞の有力な評価材料になります。
特に、前頭上位の力士が横綱を破る金星を挙げ、さらに勝ち越しまで達成すれば、殊勲賞の候補として注目されます。
2.大関を倒す
大関からの白星も評価対象です。複数の大関を破るなど、上位陣に対して際立った成績を残せば、受賞の可能性が高まります。
3.優勝力士を破る
優勝争いに関係する白星も重要です。特に、最終的に幕内優勝を果たした力士を倒した場合、その一番が優勝争いに与えた影響も評価されます。
このため、必ずしも横綱・大関を倒すことだけが殊勲賞の条件ではありません。関脇以下の力士が優勝した場合、その優勝そのものが殊勲賞につながるケースもあります。
上位撃破だけでは受賞できない理由注意したいのは、横綱や大関に勝っただけで殊勲賞が確定するわけではないことです。
基本となる勝ち越しを達成できなければ、どれほど価値のある白星を挙げても受賞には至らない場合があります。
実例が2026年9月場所の高安です。高安は優勝した横綱・大の里を破りましたが、千秋楽に敗れて7勝8敗となり、負け越しました。その結果、殊勲賞は該当者なしとなっています。
この事例は、殊勲賞が一番の勝利だけで決まるものではなく、場所全体の成績も重視されることを示しています。
殊勲賞は誰が選ぶ?三賞選考委員会の仕組み受賞者を決定するのは、日本相撲協会の三賞選考委員会です。
委員は、協会の審判委員、相撲記者クラブ員、維持員などから理事長が委嘱する仕組みで、人数は45名以内。任期は1年間です。
選考は本場所の千秋楽に行われ、満場一致または多数決によって受賞者を決定します。各賞にふさわしい力士がいないと判断された場合は、該当者なしになることもあります。
2026年3月場所では、選考委員会に22人が出席し、過半数の12票を獲得することが受賞決定の条件となりました。殊勲賞を受けた関脇・霧島は22票すべてを獲得しています。
また、委員会は千秋楽の取組が終わる前に開催されるため、「千秋楽に勝てば受賞」という条件付きの選考も行われます。最終的な受賞は、その後の取組結果によって決まります。
【徹底比較】殊勲賞と敢闘賞・技能賞の違い
大相撲の三賞は、いずれも関脇以下の幕内力士を対象とする賞ですが、評価の方向性が違います。
簡単に整理すると、殊勲賞は「誰に勝ったか」、敢闘賞は「どれだけ奮闘したか」、技能賞は「どのような技術を見せたか」を評価する賞です。
殊勲賞と敢闘賞の違い殊勲賞は、横綱・大関や優勝力士を倒した功績などが評価の中心です。
一方、敢闘賞は、旺盛な敢闘精神を発揮し、本場所を盛り上げた力士に贈られます。
例えば、上位陣に勝てなかったとしても、平幕力士が11勝4敗や12勝3敗といった優れた成績を残し、最後まで優勝争いに加わっていれば、敢闘賞の有力候補になります。
つまり、殊勲賞が対戦相手や勝利の価値を重視するのに対し、敢闘賞は場所全体を通じた奮闘を評価する賞です。
殊勲賞と技能賞の違い技能賞は、相撲の技術が特に優秀だった力士に贈られます。
押し、突き、投げ、寄りなどの技術や、相手の動きに対応する巧みな取り口が評価対象です。
必ずしも横綱や大関を倒す必要はありません。多彩な技を使いこなし、安定した相撲を見せた力士が選ばれることがあります。
2026年5月場所では、小結・若隆景が吊り出しやおっつけなどの技術を評価され、7度目の技能賞を受賞しました。
このように、同じ三賞でも評価の物差しは明確に異なります。
なお、一人の力士が同じ場所で複数の三賞を受賞することもあります。実力だけでなく、上位撃破、相撲内容、技術のすべてが高く評価された場合には、複数受賞という結果につながります。
【2026年最新】大相撲三賞の受賞者と殊勲賞の結果一覧
2026年11月5日現在、終了している本場所は初場所・春場所・夏場所・名古屋場所・秋場所の5場所です。
日本相撲協会の公式記録や各場所の三賞選考委員会の発表をもとに、2026年の受賞者を整理しました。
| 2026年の場所 | 殊勲賞 | 敢闘賞 | 技能賞 |
|---|---|---|---|
| 1月・初場所 | 義ノ富士 | 霧島・熱海富士 | 該当なし |
| 3月・春場所 | 霧島 | 琴勝峰・藤青雲 | 藤ノ川 |
| 5月・夏場所 | 該当なし | 義ノ富士・伯乃富士 | 若隆景 |
| 7月・名古屋場所 | 藤ノ川 | 熱海富士・琴栄峰・高安 | 安青錦 |
| 9月・秋場所 | 該当なし | 藤ノ川・美ノ海 | 該当なし |
義ノ富士:2026年1月場所
初場所では、西前頭筆頭の義ノ富士が8勝7敗で殊勲賞を初受賞しました。勝ち越しを確保しながら上位陣との対戦で結果を残したことが評価されました。
霧島:2026年3月場所
春場所では、関脇・霧島が12勝3敗で幕内優勝を果たし、初の殊勲賞を獲得しました。
霧島は以前から敢闘賞と技能賞をそれぞれ4回受賞していましたが、殊勲賞は初めてでした。しかも選考委員22人全員から票を獲得する満票での決定です。
優勝と殊勲賞を同時に獲得した、2026年前半を代表する記録となりました。
藤ノ川:2026年7月場所
名古屋場所では、藤ノ川が殊勲賞を初受賞しました。
序盤に2人の横綱から金星を挙げ、8勝7敗で勝ち越したことが評価されました。上位陣を倒すという殊勲賞の趣旨を象徴する受賞です。
2026年9月場所は殊勲賞が該当者なし秋場所では、横綱・大の里が12勝3敗で優勝しました。関脇・藤ノ川は11勝4敗で敢闘賞を受賞し、前頭3枚目の美ノ海も10勝5敗で敢闘賞を獲得しています。
一方、優勝した大の里を倒していた高安は7勝8敗と負け越し、殊勲賞を逃しました。
この結果、秋場所では殊勲賞と技能賞がともに該当者なしとなりました。
なお、2026年の九州場所は11月8日初日、11月22日千秋楽の予定です。11月5日時点ではまだ開催前のため、2026年の最新の殊勲賞受賞者は7月場所の藤ノ川となります。
【歴代記録】殊勲賞の受賞回数ランキング!魁皇・朝潮が10回で最多
殊勲賞の歴代受賞者を振り返ると、長年にわたって上位陣に通用する実力を示した力士が並びます。
昭和22年(1947年)11月場所から令和8年(2026年)9月場所までの447場所を集計した記録では、殊勲賞の受賞は延べ405回。最多記録は、元大関の魁皇と朝潮が持つ10回です。
殊勲賞の歴代最多受賞ランキング1位:朝潮・魁皇(各10回)
殊勲賞の最多受賞者は、元大関の朝潮と魁皇です。2人とも10回受賞しており、現在も歴代1位タイの記録を保持しています。
朝潮は高砂部屋の元大関で、1980年3月場所に初受賞し、1983年3月場所までに計10回を記録しました。
魁皇は友綱部屋の元大関で、1994年3月場所に初受賞。最後の殊勲賞は2000年7月場所でした。上位陣との対戦で長く存在感を示した力士です。
3位タイ:土佐ノ海・安芸乃島・琴錦(各7回)
続く3位タイには、土佐ノ海、安芸乃島、琴錦の3人が並びます。
特に安芸乃島は、殊勲賞7回に加え、敢闘賞8回、技能賞4回を受賞。三賞の合計では19回となり、歴代最多の記録を持っています。
ここで注意したいのは、三賞全体の最多受賞者と殊勲賞単独の最多受賞者は異なるという点です。安芸乃島は三賞合計ではトップですが、殊勲賞だけなら魁皇・朝潮が上回ります。
6位タイ:御嶽海・高見山(各6回)
御嶽海は大関経験者で、2017年5月場所に初めて殊勲賞を獲得しました。最後の受賞は2020年7月場所です。
高見山も6回の殊勲賞を受賞しています。ハワイ出身の力士として活躍し、1970年代の大相撲を彩った存在です。
歴代記録から分かる殊勲賞の価値殊勲賞は、必ずしも大関や横綱に昇進した力士だけが多く受賞する賞ではありません。
三賞は関脇以下が対象であるため、早く大関に昇進した力士は、その後の受賞機会がなくなります。逆に、関脇・小結・前頭で長く活躍した実力者は、複数回受賞する機会があります。
また、殊勲賞の受賞がなかった場所も、447場所中73場所あります。これは、上位撃破という目立った結果があっても、勝ち越しや総合的な評価を満たさなければ受賞できないことを示しています。
受賞回数は単なる人気や知名度ではなく、番付上位との対戦で継続的に結果を残した証しとして見ることができます。
【賞金事情】殊勲賞はいくらもらえる?2027年から300万円に増額
殊勲賞には賞金が用意されています。2026年11月場所までの賞金額は1回につき200万円です。
殊勲賞だけでなく、敢闘賞と技能賞も同額で、三賞の賞金はそれぞれ200万円となっています。
2027年1月場所から賞金が300万円に2026年7月30日、日本相撲協会は理事会で力士の待遇改善に関する改定を発表しました。
その中には三賞の賞金増額も含まれており、2027年1月場所から従来の200万円を300万円に引き上げることが決定しています。
今回の改定は1994年以来33年ぶりです。幕内優勝賞金も1000万円から2000万円へ倍増するなど、力士の待遇全体が見直されました。
賞金の変更を整理すると、次のようになります。
- 2026年11月場所まで:殊勲賞200万円
- 2027年1月場所以降:殊勲賞300万円
- 増額幅:100万円
- 増額率:50%
殊勲賞の価値は、賞金だけではありません。
横綱や大関を倒すことは、力士の実力を証明する大きな機会です。特に前頭や小結の力士にとって、上位陣を破ることは自身の評価を高める重要な実績になります。
また、三賞の受賞歴は力士のプロフィールにも記録され、引退後もその活躍を振り返る材料になります。
大関昇進などの番付上の地位が自動的に約束されるわけではありませんが、上位陣に勝つ力を持つことを示す実績として、相撲ファンや関係者から注目されます。
【よくある質問】殊勲賞に関するFAQ
Q1:殊勲賞を受賞するには何勝必要ですか?
A1:通常は幕内で8勝以上の勝ち越しが必要です。ただし、8勝すれば自動的に受賞できるわけではありません。横綱・大関を倒したり、優勝に関係する白星を挙げたりした実績が評価されます。
Q2:横綱に勝てば必ず殊勲賞をもらえますか?
A2:必ずではありません。横綱に勝つことは有力な評価材料ですが、場所全体の成績や選考委員会の判断も関係します。2026年9月場所の高安のように、優勝力士を倒しても負け越せば受賞できないケースがあります。
Q3:殊勲賞と金星は同じものですか?
A3:違います。金星は、前頭の力士が横綱を破ったときに記録される特別な白星です。殊勲賞は三賞の一つで、横綱・大関や優勝力士を倒した功績などを評価する表彰です。金星を獲得しても殊勲賞が自動的に決まるわけではありません。
Q4:殊勲賞を最も多く受賞した力士は誰ですか?
A4:元大関の魁皇と朝潮です。それぞれ10回受賞しており、歴代1位タイの記録です。続いて土佐ノ海、安芸乃島、琴錦が7回で並んでいます。
Q5:2026年の最新の殊勲賞受賞者は誰ですか?
A5:2026年11月5日時点では、7月の名古屋場所で受賞した藤ノ川です。1月場所は義ノ富士、3月場所は霧島も受賞しています。9月場所は該当者なしでした。
Q6:殊勲賞の賞金は2027年からいくらになりますか?
A6:2027年1月場所から300万円になります。2026年11月場所までは200万円で、今回の改定によって100万円増額されます。
殊勲賞とは、大相撲の三賞の一つで、横綱・大関を倒したり、幕内優勝に関係する白星を挙げたりした関脇以下の幕内力士に贈られる賞です。
受賞には基本的に勝ち越しが必要で、最終的な判断は日本相撲協会の三賞選考委員会が行います。上位陣に勝ったという事実だけでなく、場所全体の成績や優勝争いへの影響も重要です。
歴代最多受賞は魁皇と朝潮の10回。2026年は義ノ富士、霧島、藤ノ川が殊勲賞を受賞し、秋場所は該当者なしとなりました。
賞金は2026年11月場所まで200万円、2027年1月場所から300万円に増額されます。
殊勲賞を見る際に注目したいのは、単純な勝ち星の数だけではありません。どの横綱・大関を倒したのか、その一番が優勝争いにどう影響したのか、そして勝ち越しを達成できたのかという3つの視点です。
次の本場所では、優勝争いだけでなく、上位陣に挑む関脇以下の力士にも注目してみてください。殊勲賞の選考基準を知っておくと、千秋楽の三賞発表や力士たちの一番を、より深く楽しめます。
主な根拠資料
- 日本相撲協会:三賞の定義、2026年本場所日程、歴代場所別受賞記録。
- 日刊スポーツ:2026年3月・5月・7月の三賞選考、賞金改定の発表。
- 大相撲のはてなに効く!観戦ガイド:1947年から2026年9月までの殊勲賞受賞回数・歴代ランキング集計。
- デイリースポーツ:2026年9月場所の三賞結果と高安の受賞見送り。