大人同士でも養子縁組はできるのでしょうか。結論からいえば、日本では成人同士の養子縁組が認められており、原則として「普通養子縁組」という制度を利用します。親子ほど年齢が離れていない相手や、血縁関係のない成人であっても、法律上の条件を満たせば養親・養子になることが可能です。
ただし、誰とでも自由に親子関係を結べるわけではありません。2026年11月現在、養親は20歳以上であること、養子が養親より年長者や尊属ではないこと、本人同士の合意があることなど、民法で定められた条件があります。また、双方に配偶者がいる場合の同意、養子縁組届の提出先、成立後の戸籍・氏の変更、相互扶養義務、相続権や相続税についても理解しておく必要があります。
【基本知識】大人同士の養子縁組は普通養子縁組なら成立する
成人同士の養子縁組を理解するには、まず日本の養子縁組制度を整理する必要があります。
日本の養子縁組には、大きく分けて「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。
普通養子縁組と特別養子縁組の違い普通養子縁組は、養親と養子の間に法律上の親子関係を成立させる制度です。
養子が成人していても利用でき、血縁関係のない他人同士でも、法律上の条件を満たせば縁組できます。
一方、特別養子縁組は、子どもの利益や安定した養育環境を重視した制度です。原則として15歳未満の子どもを対象とし、家庭裁判所の審判によって成立します。成人同士が親子関係を作るために利用する制度ではありません。
両者の大きな違いは、実親との親子関係がどうなるかという点です。
普通養子縁組では、養親との親子関係が新たに成立しても、実父母との法律上の親子関係は原則として残ります。特別養子縁組では、原則として実父母やその血族との親族関係が終了します。
法務省が公表する養子縁組制度の案内でも、普通養子縁組を中心に、成立要件や法的効果が整理されています。
成人同士でも法律上の親子になれる理由普通養子縁組は、実際に幼少期から養育していたことを成立の必須条件としていません。
そのため、成人してから親子関係を築く場合でも、当事者双方に縁組の意思があり、民法上の要件を満たしていれば成立します。
例えば、次のような関係が考えられます。
- 血縁関係のない年下の成人を養子にする。
- 成人した親族と養子縁組をする。
- 婿養子として成人男性を家族の養子に迎える。
- 家業や事業承継などを背景に、成人同士で親子関係を成立させる。
ただし、事業承継や相続を目的とする場合でも、養子縁組によって生じる親子関係の法的効果は避けられません。
単なる呼び名や家族内の慣習ではなく、法律上の身分関係を作る手続きだという点が重要です。
【成立条件】成人同士の養子縁組で確認すべき4つの法律要件
大人同士の養子縁組では、民法792条から796条などに定められた条件を確認する必要があります。
特に注意したいのが、養親の年齢と養子の年齢に関する規定です。
1.養親は20歳以上でなければならない民法792条では、養親となる人について、20歳に達していることを条件としています。
ここで混同しやすいのが、2022年4月1日に施行された成年年齢の引き下げです。
現在の民法上の成年年齢は18歳ですが、養親になるための年齢要件は20歳のままです。
つまり、18歳や19歳の人は法律上の成人であっても、養親になることはできません。
一方、養子になる側は、養親より年下であれば成人でも問題ありません。
この2つの年齢基準は別々に判断する必要があります。
2.尊属や養親より年上の人は養子になれない民法793条では、尊属または年長者を養子にすることを禁止しています。
尊属とは、自分より上の世代に属する直系の親族です。
例えば、次のようなケースは認められません。
- 自分の父親を養子にする。
- 自分の母親を養子にする。
- 自分の祖父母を養子にする。
- 自分より年上の成人を養子にする。
血縁関係がなくても、養親となる人より年上であれば養子にはできません。
反対に、年下の成人であれば、血縁関係がない相手や一定の親族を養子にすることは可能です。
重要なのは、単に年齢差があるかではなく、民法793条に該当する関係ではないかという点です。
3.養親と養子本人の合意が必要成人同士の普通養子縁組では、養親になる人と養子になる人の双方に縁組の意思が必要です。
どちらか一方が望んでいない場合、本人の意思に反して養子縁組を成立させることはできません。
また、書類上の届出だけを整えればよいわけではありません。
民法802条では、当事者間に縁組をする意思がない場合などについて、養子縁組の無効を定めています。
例えば、本人が縁組の内容を理解していない場合や、強制されて届出に至った場合には、縁組の有効性が問題になる可能性があります。
4.養親・養子に配偶者がいる場合は原則として同意が必要民法796条では、配偶者のある人が養子縁組をする場合、原則として配偶者の同意を得ることを求めています。
この規定は、養親になる人だけでなく、養子になる人にも関係します。
例えば、次のようなケースです。
- 既婚者が成人を養子に迎える場合、その配偶者の同意が原則必要。
- 既婚者が別の人の養子になる場合も、その配偶者の同意が原則必要。
- 養親とその配偶者が共同で縁組する場合は、別途の同意を要しない例外がある。
- 配偶者が意思表示できない場合にも、法律上の例外がある。
配偶者がいる場合には、本人同士だけで手続きを進めるのではなく、配偶者の意思確認も必要です。
【手続きガイド】家庭裁判所の許可・必要書類・提出先を解説
成人同士の養子縁組は、原則として家庭裁判所の許可を必要としません。
養親と養子の合意があり、法律上の要件を満たしていれば、市区町村役場への届出によって成立します。
ただし、家庭裁判所の許可が必要になる例外も存在します。
成人同士でも家庭裁判所の許可が必要になるケース代表的な例外が、民法794条に定められた「後見人が被後見人を養子とする縁組」です。
被後見人には、未成年被後見人だけでなく成年被後見人も含まれます。
したがって、成人同士であっても、養親になろうとする人が養子となる人の後見人である場合などには、家庭裁判所の許可が必要です。
また、普通養子縁組でも未成年者を養子にする場合は、原則として家庭裁判所の許可が必要になります。ただし、自己または配偶者の直系卑属を養子にする場合には例外があります。
裁判所の公式案内でも、未成年者の養子縁組許可について具体的な手続きが説明されています。
養子縁組届に必要な書類成人同士の一般的な普通養子縁組では、次の書類や確認事項を準備します。
| 関係者・機関 | 必要な手続き・役割 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 養親 | 養子縁組届への署名 | 20歳以上であること |
| 養子 | 養子縁組届への署名 | 養親より年下であること |
| 配偶者 | 必要に応じて同意 | 既婚者の配偶者の同意 |
| 証人2人 | 届書の証人欄に署名 | 成年者であること |
| 市区町村役場 | 届出の受付・審査 | 本籍地または所在地 |
| 家庭裁判所 | 例外的な許可手続き | 後見人による縁組など |
一般的には、以下を準備します。
1. 養子縁組届書1通
2. 成人の証人2人の署名
3. 窓口に提出する人の本人確認書類
4. 必要に応じた配偶者の同意
5. 家庭裁判所の許可が必要な場合は、その許可書類
なお、2024年3月1日から戸籍証明書の添付は原則不要になっています。ただし、コンピューター化されていない一部の戸籍などでは、追加書類を求められる場合があります。
実際の必要書類は届出内容や自治体によって確認が必要です。
養子縁組届の提出先届出先は、原則として次のいずれかの市区町村役場です。
- 養親の本籍地
- 養子の本籍地
- 養親または養子の所在地
届出人は、養親と養子の双方です。
成人同士の場合、双方が本人として手続きを行います。
養子縁組は届出が受理されることによって法律上の効力が発生します。事前に自治体の戸籍担当窓口で必要書類や記載内容を確認しておくと、書類の不備による手続きの遅れを防ぎやすくなります。
【戸籍・氏の変更】養子縁組後に名字や家族関係はどう変わる?
成人同士の養子縁組で見落とされやすいのが、成立後の戸籍と氏の取り扱いです。
養子縁組が成立すると、単に養親と養子という呼び方が生まれるだけではありません。戸籍にも法律上の親子関係が反映されます。
養子の名字は原則として養親の氏になる民法810条では、養子は原則として養親の氏を称すると定められています。
そのため、結婚していない成人が養子になった場合、原則として養親の名字に変わります。
ただし、婚姻によって氏を改めた人については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は例外となります。
つまり、既婚者が養子になったからといって、必ず養親の名字に変更されるわけではありません。
この点は、結婚している成人が養子縁組を検討する際に特に注意したい部分です。
戸籍には養親との親子関係が記録される普通養子縁組が成立すると、戸籍上も養親と養子の関係が記録されます。
戸籍法18条では、養子は原則として養親の戸籍に入ることが定められています。
ただし、成人の養子が既婚者である場合など、戸籍の構成によって取り扱いが異なることがあります。
また、養子本人に実子がいる場合、その実子が自動的に養親の戸籍に移るわけではありません。子どもの戸籍や氏を変更したい場合には、別途手続きが必要になることがあります。
実親との親子関係は残る普通養子縁組の大きな特徴は、実父母との親子関係が原則として継続することです。
例えば、成人AがBの養子になった場合、AはBとの法律上の親子関係を取得しますが、実父母との親子関係も原則として残ります。
そのため、養親と実親の双方との間で、法律上の扶養や相続に関係する権利義務が生じます。
養子縁組によって実家との法律関係がすべて消えると考えるのは誤りです。
【扶養義務・相続権】成人同士の養子縁組で発生する経済的な影響
養子縁組を検討する際には、戸籍や名字だけでなく、経済面の変化も確認する必要があります。
特に重要なのが、養親と養子の相互扶養義務、相続権、相続税の取り扱いです。
養親と養子は互いに扶養義務を負う民法877条では、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養する義務があると定めています。
普通養子縁組が成立すると、養親と養子の間には法律上の親子関係が生じるため、双方に扶養義務が発生します。
例えば、養親が高齢になって生活に困った場合や、養子が経済的に困窮した場合には、相互の扶養が法律上問題になる可能性があります。
ただし、扶養義務があるからといって、相手の生活費を無条件にすべて負担するわけではありません。
民法879条では、扶養の程度や方法について、扶養を受ける人の必要性、扶養する人の資力などを考慮するとされています。
当事者間で合意できない場合には、家庭裁判所が判断することもあります。
養子は養親の法定相続人になる普通養子縁組が成立すると、養子は養親の法律上の子どもとして扱われます。
そのため、養親が亡くなった場合、養子は原則として実子と同じ立場で法定相続人になります。
また、養子に子や孫などの直系卑属がいない状態で養子が亡くなった場合には、養親が相続人となる可能性もあります。
加えて、普通養子縁組では実親との親子関係も残るため、実親が亡くなった場合の相続権も原則として維持されます。
つまり、成人同士の養子縁組では、養親側だけでなく養子側の相続関係にも影響が及ぶのです。
養子縁組による相続税の変化と注意点相続税の計算では、法定相続人の人数に応じて基礎控除額などが変わります。
2026年現在、相続税の基礎控除額は次の計算式で求められます。
\[
3,000万円+600万円\times法定相続人の数
\]
ただし、相続税の計算上、法定相続人の数に含められる養子の人数には制限があります。
| 被相続人の実子の有無 | 相続税計算上、人数に含められる養子 |
|---|---|
| 実子がいる場合 | 1人まで |
| 実子がいない場合 | 2人まで |
これは、相続税の基礎控除だけでなく、生命保険金や死亡退職金の非課税限度額などにも関係します。
また、養子縁組によって相続税の負担を不当に減少させる結果になると認められる場合には、養子の数を法定相続人の数に含められないことがあります。
一方、一般的な養子は被相続人の一親等の法定血族となるため、原則として相続税の2割加算の対象ではありません。ただし、被相続人の孫を養子にした場合には、代襲相続人に該当しないなどの条件によって2割加算の対象となることがあります。
相続税対策だけを目的とした養子縁組は無効なのかこの問題については、最高裁判所の重要な判例があります。
2017年1月31日の最高裁判決では、相続税の節税を動機とした養子縁組であっても、その動機と親子関係を成立させる意思は併存し得ると判断されました。
つまり、節税目的があるという理由だけで、直ちに養子縁組が無効になるわけではありません。
ただし、この判決は、形式だけの養子縁組や、実際に親子関係を成立させる意思がない縁組まで認めたものではありません。
相続税の計算と民法上の親子関係の成立は、別々に検討する必要があります。
【離縁・解消】成人同士の養子縁組をやめることはできる?
養子縁組は一度成立すると、当事者の気持ちだけで簡単に取り消せるものではありません。
ただし、法律上の手続きを踏めば、普通養子縁組を解消することは可能です。
双方が合意すれば協議離縁ができる民法811条では、養親と養子が協議によって離縁できると定めています。
成人同士の場合、双方が離縁に合意すれば、市区町村役場に離縁届を提出することで養子縁組を解消できます。
離縁届には、原則として証人2人の署名が必要です。
合意できない場合は家庭裁判所の手続きへ養親と養子の間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の離縁調停を利用できます。
裁判所の案内でも、当事者間の話し合いが成立しない場合に調停を利用できることが説明されています。
調停でも合意に至らない場合には、一定の法定事由があれば離縁の訴えを提起できます。
民法814条では、主に次の事情が規定されています。
- 相手から悪意で遺棄されたとき。
- 相手の生死が3年以上明らかでないとき。
- その他、養子縁組を継続し難い重大な事由があるとき。
単に関係が悪くなったというだけで、必ず裁判上の離縁が認められるわけではありません。
離縁後の名字や戸籍はどうなる?離縁すると、養親と養子の法律上の親子関係は終了します。
原則として、養子は縁組前の氏に戻ります。
ただし、養子縁組から7年を経過した後に離縁した場合には、離縁の日から3か月以内に届出をすることで、離縁時に称していた氏を引き続き使用できる制度があります。
このように、養子縁組の解消にも戸籍や氏に関する影響があります。成立時だけでなく、将来的に離縁する可能性も考慮しておくことが大切です。
【よくある質問】大人同士の養子縁組に関するFAQ
Q1:成人した18歳や19歳でも養子になれますか?
A1:養子になる側については、成人であること自体が一律の年齢制限になるわけではありません。ただし、養親は20歳以上でなければならず、養子は養親より年下である必要があります。18歳や19歳の人は養親になることはできません。
Q2:成人同士の養子縁組には家庭裁判所の許可が必要ですか?
A2:原則として不要です。養親と養子の合意があり、法律上の条件を満たしていれば、市区町村役場への届出で成立します。ただし、後見人が被後見人を養子にする場合などには家庭裁判所の許可が必要です。
Q3:養子になると実の親との親子関係はなくなりますか?
A3:普通養子縁組では、原則として実親との親子関係は残ります。養親との新しい親子関係が成立するため、実親と養親の双方との間に法律上の扶養義務や相続関係が生じます。
Q4:既婚者でも成人同士の養子縁組はできますか?
A4:可能です。ただし、養親または養子に配偶者がいる場合は、原則として配偶者の同意が必要です。また、婚姻によって氏を変更している人は、養子縁組後も婚姻時の氏を称する例外があります。
Q5:養子縁組をすると相続税は必ず安くなりますか?
A5:必ず安くなるわけではありません。相続税の基礎控除などには養子の人数制限があり、税負担を不当に減らす結果になる場合には人数に算入されないこともあります。個別の財産状況や相続人の構成を踏まえた税務上の確認が必要です。
2026年11月現在、日本では成人同士の普通養子縁組が認められています。
養親は20歳以上でなければならず、養子になれるのは養親より年下で、尊属に該当しない人です。また、養親と養子本人の合意、必要に応じた配偶者の同意が大切です。
一般的な成人同士の縁組であれば、市区町村役場への届出が基本であり、家庭裁判所の許可は原則不要です。
ただし、養子縁組によって生じる影響は、戸籍や名字の変更だけではありません。
特に確認しておきたい判断基準は次の4つです。
1. 親子関係を成立させる意思が双方にあるか: 名字や戸籍を変えるだけの手続きではない。
2. 配偶者や既存の家族への影響を理解しているか: 配偶者の同意、実親との親子関係、養子本人の子どもの戸籍なども確認する。
3. 扶養義務と相続関係を受け入れられるか: 成人同士でも法律上の親子となり、経済的な権利義務が生じる。
4. 将来的な離縁や税務上の問題も検討しているか: 相続税対策だけで判断せず、法律と税務の両面から検討する。
大人同士の養子縁組は、家族関係や事業承継、相続などに関わる重要な法律行為です。
手続きそのものは比較的シンプルでも、成立後の影響は長期に及びます。届出前に市区町村の戸籍担当窓口へ確認し、相続や財産に関わる場合は弁護士や税理士などの専門家にも相談することが、後々のトラブルを防ぐための現実的な方法です。