ロラン・ティリ(Laurent Tillie)氏は、選手としても指導者としても国際舞台で実績を積んできたフランスのバレーボール指導者です。
1963年12月1日生まれ、アルジェリア出身。現役時代はアウトサイドヒッターとしてフランス代表で活躍し、オリンピック2大会を含む国際試合に400試合以上出場した経歴があります。1991〜1992年にはフランス代表の主将も務めました。
2001年に現役を引退すると指導者へ転身。フランス国内のクラブチームで経験を積み、2005〜2006年にはチェコ代表監督も兼任しました。2012年にはフランス男子代表監督に就任し、長期的なチーム強化に取り組みます。
指導者としての代表的な実績
2021年・東京オリンピック
フランス男子代表を初のオリンピック金メダルに導く。ティリ氏の指導者キャリアを象徴する実績。
2020〜2024年・日本のクラブチーム
パナソニック パンサーズ(現・大阪ブルテオン)の監督を務め、日本の選手や競技環境への理解を深める。
2025年〜・男子日本代表
ロサンゼルス五輪を見据えた代表チームの強化を担当。2026年にはアジア選手権優勝と五輪出場権獲得を実現。
フランス代表監督時代には、2015年と2017年のワールドリーグでも優勝。2021年東京五輪の金メダルは、長年にわたってチームを育てた結果でした。
大阪ブルテオンで残した実績ティリ氏の日本での指導歴を語るうえで欠かせないのが、大阪ブルテオン(旧パナソニック パンサーズ)です。
2020年に監督へ就任し、フランス代表監督との兼務も経験しました。日本代表監督への就任が決まった2024年まで、約5シーズンにわたってチームを率いています。
| シーズン | 主な成績 |
|---|---|
| 2020-21 | V.LEAGUE準優勝 |
| 2021-22 | V.LEAGUE3位 |
| 2022-23 | 天皇杯準優勝、V.LEAGUE3位 |
| 2023-24 | 天皇杯優勝、V.LEAGUE準優勝 |
特に2023-24シーズンの天皇杯優勝は、日本のクラブで積み上げた指導成果を示す実績です。クラブ側も、ティリ氏の指導力や経験だけでなく、人柄や選手・スタッフの成長への貢献を高く評価していました。
【就任経緯】なぜフィリップ・ブランの後任に選ばれたのか?

ティリ氏が日本代表の監督に選ばれた背景には、2024年パリオリンピック後のチーム強化という課題がありました。
前任のフィリップ・ブラン氏が率いた日本代表は、2023年と2024年のネーションズリーグで好成績を残し、世界ランキングでも過去最高の2位に到達しました。しかし、パリオリンピックでは準々決勝で敗退し、最終順位は7位。目標としていたメダル獲得には届きませんでした。
ブラン氏はパリ五輪を最後に退任する意向を示しており、日本バレーボール協会はロサンゼルス2028を目指す新体制の選考を進めました。
日本バレーボール協会が評価した3つのポイントJVAは監督候補者選考委員会を設置して複数の候補者を検討。2024年12月2日の就任内定会見では、川合俊一会長がティリ氏の選考理由を説明しました。
東京2020オリンピックで初めてフランスチームを金メダルに導いた実績と、日本のクラブチームで監督をしており、日本選手の気質や風土などに慣れている。
川合俊一JVA会長の就任内定会見での説明を要約。
選考の決め手となった要素は、次の3点に整理できます。
- 五輪での実績: フランス代表を東京五輪金メダルに導いた経験。
- 日本での指導経験: 大阪ブルテオンで5シーズンにわたり選手を指導した実績。
- 国際経験と適応力: 世界の強豪国との対戦経験を持ち、日本の競技文化にも理解があること。
川合会長によれば、候補者の中からティリ氏を選ぶ判断は全会一致だったといいます。単に海外の有名監督を招いたのではなく、日本の選手を理解しながら世界基準の指導経験を持ち込める人物として期待されたのです。
前任フィリップ・ブランとの関係ブラン氏とティリ氏は、どちらもフランス出身の指導者です。ただし、日本代表における役割とチーム作りの時期は異なります。
ブラン氏は2017年に中垣内祐一監督の下でコーチに就任し、2017年には一時監督代行も務めました。その後、2021年に正式な男子日本代表監督へ就任。東京五輪以降の日本代表の成長を支え、パリ五輪まで指揮を執りました。
一方、ティリ氏は、ブラン体制で築かれた日本代表の技術的な土台を引き継ぎ、五輪のメダル獲得を目指す段階を担当しています。
【男子バレー日本代表の歴代監督一覧】中垣内祐一からティリまで
男子バレー日本代表の監督は、長い歴史の中で何度も交代してきました。特に2000年代以降は、国内の競技力強化と世界大会での成績を背景に、さまざまな指導者がチームを率いています。
以下は、歴代監督の主な在任時期を年代順に整理した一覧です。初期の監督には特定の国際大会で指揮を執った人物も含まれます。
歴代監督の年代整理はスポーツ史資料を参照。近年の監督交代についてはJVAの公式発表と代表登録を照合。
歴代監督の中でも注目したい3人1.植田辰哉
2005〜2013年に監督を務めた人物です。比較的長い期間、日本代表の強化を担いました。国際大会での経験を積み重ねる一方、世界の強豪との差を埋めることが課題となった時期でもあります。
2.中垣内祐一
2017年から2021年まで代表監督を務めました。元日本代表選手としての経験を持ち、東京五輪を目指すチームを率いた人物です。2017年にはフィリップ・ブラン氏が一時監督代行を務め、その後コーチとして中垣内体制を支えました。
3.フィリップ・ブラン
2021年から2024年まで正式監督を務めました。東京五輪後の代表強化を引き継ぎ、ネーションズリーグでの好成績や世界ランキング上昇を実現。日本代表が世界の強豪と互角に戦うための基礎を築いた指導者です。
こうした歴史を踏まえると、ティリ氏はブラン氏が築いた競争力をさらに高め、五輪メダルという次の目標に挑む監督と位置づけられます。
【ロラン・ティリの指導方針と評判】強さを生むチーム作りとは?
ティリ氏の指導スタイルを理解するうえで重要なのが、選手との関係構築とチームの継続性です。
単に個々の選手の能力を高めるだけではなく、同じメンバーで試合と練習を重ね、勝利も敗北も共有しながらチームとして成熟させる考え方を重視しています。
1.選手との信頼関係を大切にするスポーツ総合誌『Number』の2024年の人物取材では、ティリ氏は選手にポジティブな言葉をかけ、親身に寄り添う指導者として紹介されています。
同記事では、選手にとって単なる監督や先生ではなく、家族のような存在でありたいという本人の考え方も伝えられています。
ただし、優しいだけの指導者ではありません。プレーのあらゆる要素について高い精度と全力を求める厳しさも持っています。選手との距離が近いことと、競技上の要求水準が高いことを両立させている点が特徴です。
2.チームを頻繁に作り直さず、経験を共有する2026年9月14日、アジア選手権優勝とロサンゼルス五輪出場権獲得を受けた記者会見で、ティリ監督は今後のチーム強化について明確な方向性を示しました。
「リスタートではなく、継続が大事」
日刊スポーツの報道によると、ティリ監督は同じメンバーを中心に試合経験を重ねることの重要性を強調しました。
その背景には、フランス代表を東京五輪金メダルに導いた経験があります。2012年ロンドン五輪の出場を逃したフランス代表を、長期的な計画のもとで育成し、2021年に頂点へ導きました。ティリ氏は、この成功過程を日本代表にも生かそうとしています。
3.若手の育成とポジション争いも重視継続を重視するからといって、選手を固定するわけではありません。
2026年10月20日のJVAシーズン総括会見では、ティリ監督はAチームとBチームの選手を入れ替えながら、若手にも試合経験を与えたことを成果として挙げています。
また、所属クラブでの成長やコンディション、パフォーマンスによってはチーム編成を調整する考えも示しています。つまり、現在の主力を軸にしながら、競争によってチーム全体のレベルを上げる方針です。
ティリ監督の評判をどう見るべきかティリ氏への評価は、主に次の3つの観点から整理できます。
- 国際実績への評価: フランス代表を五輪金メダルに導いた実績がある。
- 人間性への評価: 選手やスタッフとの信頼関係を築く姿勢が、クラブ関係者や取材記事で評価されている。
- 結果と課題: 2026年はアジア選手権優勝を達成した一方、VNLでは4位。世界大会のメダル獲得は引き続き課題として残る。
とりわけ重要なのは、アジアで勝つことと、オリンピックでメダルを取ることは別の競技水準を求められるという点です。ティリ氏の評価は、2026年の成功だけで完結するものではなく、今後の強豪国との対戦でどこまでチームを成長させられるかによって深まっていきます。
【2027年以降の展望】ロサンゼルス五輪でメダルを獲得できるか?
2026年9月のアジア選手権優勝によって、日本男子代表はロサンゼルス2028への出場権を早期に獲得しました。これにより、残る約2年間を五輪本番に向けた強化に使えるようになりました。
2026年10月20日のJVAシーズン総括会見で、ティリ監督は今後の強化について具体的な課題を説明しています。
これからの強化で重要になる3つのポイント① 世界の強豪国との接戦を勝ち切る力
2026年VNLでは予選ラウンドから13連勝を記録したものの、準決勝でアメリカに敗れ、3位決定戦でもスロベニアに敗れました。
ティリ監督は、アメリカ、イタリア、ポーランド、ブルガリア、キューバなどの強豪国に勝つ経験を積む必要性を指摘しています。準決勝や決勝のようなプレッシャーの大きい試合で勝ち切る力が、五輪メダルへの重要な条件です。
② 主力の継続と新戦力の融合
ティリ監督は現在の主力メンバーを中心にチームを成熟させる方針です。ただし、新しい選手を加える可能性も示しています。
特定の選手に依存するのではなく、各ポジションで競争を生み、故障やコンディションの変化にも対応できる選手層を整えることが大切です。
③ 2027年VNLとワールドカップでの結果
2026年のアジア選手権優勝によって五輪への道は開けましたが、五輪本番でメダルを獲得するためには、世界のトップチームとの対戦を重ねる必要があります。
JVAのシーズン総括によると、ティリ監督は2027年のVNLとワールドカップでもメダルを目指す高い目標を掲げています。これらの大会は、日本代表が世界のトップレベルにどこまで近づいたかを測る重要な機会になります。
【プロの結論】ティリ監督の評価は五輪メダルへの過程で決まる監督の実力を判断する際、目の前の大会の順位だけを見るのは十分ではありません。
男子日本代表の場合、次の4つを確認が必要です。
1. 国際大会で強豪国と互角に戦えているか。
2. 主力選手と若手選手の競争が機能しているか。
3. 接戦やプレッシャーのかかる試合で勝ち切れるか。
4. チームとしての戦術や連係が大会を重ねるごとに成熟しているか。
2026年のティリ体制は、アジア選手権優勝と五輪出場権獲得という大きな成果を残しました。一方、VNLの最終4位という結果は、世界のトップと戦ううえで改善すべき部分が残っていることも示しています。
この両面を踏まえると、ティリ監督に期待される役割は、アジアで勝つチームを作ることから、世界の頂点を争えるチームへ進化させることに移っています。
【男子バレーの監督に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:2026年現在の男子バレー日本代表の監督は誰ですか?
A1:ロラン・ティリ氏です。日本バレーボール協会の2026年度男子日本代表公式登録にも、監督として掲載されています。
Q2:ロラン・ティリ監督はいつから日本代表を率いていますか?
A2:2024年11月25日に新監督就任が内定し、2025年シーズンから指揮を執っています。前任者はフィリップ・ブラン氏です。
Q3:ティリ監督は2026年のアジア選手権で優勝しましたか?
A3:はい。2026年9月13日の決勝でイランを3対0で破り、日本を2大会連続11度目のアジア王者に導きました。この優勝により、ロサンゼルス2028オリンピックの出場権も獲得しています。
Q4:ティリ監督は東京オリンピックで金メダルを獲得していますか?
A4:はい。2021年の東京オリンピックでフランス男子代表を初の金メダルに導きました。これが日本代表の監督に選ばれた大きな理由の一つです。
Q5:前任のフィリップ・ブラン監督とは何が違いますか?
A5:ブラン氏は日本代表の技術力や戦術面の強化を進め、パリ五輪までチームを率いました。ティリ氏はその基盤を引き継ぎ、国際大会での経験を共有しながら、ロサンゼルス五輪のメダル獲得を目指す長期的なチーム作りを進めています。
2026年11月現在、男子バレー日本代表の監督はロラン・ティリ氏です。
フランス代表を東京五輪金メダルに導いた実績に加え、大阪ブルテオンでの指導経験、日本の競技文化への理解が評価され、2025年から日本代表を率いています。
2026年はVNLで最終4位となった一方、アジア選手権ではイランを破って優勝。ロサンゼルス2028オリンピックの出場権を早期に獲得するという大きな成果を残しました。
今後の焦点は、主力選手の継続的な強化、若手の育成、そしてアメリカやイタリアなど世界の強豪国に勝てるチームへの成長です。
2026年のアジア王者から、2028年のオリンピックメダリストへ。ティリ監督が日本男子バレーをどこまで進化させるのか、今後の代表活動に注目が集まります。
主な情報源
- 日本バレーボール協会:2026年度男子日本代表登録、監督就任発表、シーズン総括
- 国際バレーボール連盟(FIVB):ロサンゼルス2028出場権決定情報
- Volleyball World:2026年アジア選手権・ネーションズリーグ公式結果
- 大阪ブルテオン:ティリ監督の経歴とクラブ実績
- 日刊スポーツ、Number:ティリ監督の人物像・指導方針に関する取材報道