みかんの皮をむいたとき、果肉の周りにまとわりつく白い筋や、皮の内側に残る白い綿。口当たりが気になって、食べる前に丁寧に取り除いている人も多いのと考えられます。実は、みかんの白い部分はすべて同じ組織ではありません。房の表面に網目状に広がる白い筋は「維管束」、外側のオレンジ色の皮の裏にある白いスポンジ状の部分は「アルベド」と呼ばれ、それぞれ異なる役割を持っています。
農林水産省の2026年度更新の解説でも、房についている白い筋は水分や栄養分を運ぶ維管束と説明されています。加えて、この部分や薄皮には食物繊維やヘスペリジンなどの成分が含まれています。白い筋は食べても大丈夫なのか、取ると栄養面で損をするのか。みかんの構造と公的な食品成分データ、研究報告をもとに、その正体と食べ方を詳しく解説します。
【まず正体を解説】みかんの白い筋と白い綿は別物!名前と構造の違い
みかんの白い部分を理解するには、まず果実の構造を知ることが大切です。普段は一つの果物として食べているみかんですが、植物学的には複数の組織が組み合わさってできています。
特に混同されやすいのが、房についている細い白い筋と、皮をむいたときに残る白い綿です。この2つは見た目が似ていても、正式な呼び方と構造上の役割が異なります。
房についている白い筋は「維管束」みかんの房を包む薄皮の外側に、細い糸のように張り巡らされている白い筋。これは「維管束(いかんそく)」と呼ばれる組織です。
維管束は、植物の内部で水分や養分を運ぶための通路です。人間の体に例えるなら血管に近い役割を担っています。
みかんの木は、根から吸収した水分や土壌由来の養分、葉でつくられた栄養分などを枝を通じて果実に届けます。維管束は果実の内部まで伸びており、房の中にある小さな果汁の粒ともつながっています。
農林水産省の「消費者の部屋通信」でも、房の表面に網目状に広がる白い筋を維管束と説明しています。つまり、食べるときに取り除いてしまうあの細い筋は、みかんが成長するために欠かせない組織なのです。
皮の内側にある白い綿は「アルベド」一方、みかんの外皮をむいたとき、皮の裏側に残っている白くてふわふわした部分は「アルベド」と呼ばれます。
アルベドは、果皮の内側にある中果皮に相当する部分です。オレンジ色の外側の部分は「フラベド」と呼ばれ、両者を合わせてみかんの果皮を構成しています。
アルベドは海綿のようなスポンジ状の組織で、果実を外側から支える役割も持っています。柑橘類では、この部分に食物繊維やフラボノイド類が含まれています。
果肉を包む薄皮は「じょうのう膜」もう一つ覚えておきたいのが、みかんの房を包んでいる薄い袋状の部分です。これは「じょうのう」と呼ばれ、その表面の膜は「じょうのう膜」といいます。
じょうのうの内部には、果汁を含む小さな粒が集まっています。この粒は「砂じょう」と呼ばれ、私たちが普段みかんの果肉として食べている部分です。
それぞれの名前を整理すると、次のようになります。
- フラベド:みかんの外側にあるオレンジ色の皮。
- アルベド:フラベドの内側にある白い綿状の組織。
- じょうのう膜:一つ一つの房を包む薄い膜。
- 維管束:房の表面に網目状に広がる白い筋。
- 砂じょう:果汁が詰まった粒状の果肉。
なお、農林水産省の2017年の広報誌には白い筋をアルベドと表現した食べ方の説明もありますが、同省の2021年の詳しい構造説明や2026年度更新の相談回答では、房の表面にある筋を維管束として区別しています。見た目の場所によって呼び分けると、混乱せずに理解できます。
【なぜ白い筋がある?】農林水産省が説明する維管束の役割
みかんの白い筋は、単なる不要な繊維ではありません。果実が成長するために必要な水分や栄養分を届ける、重要な輸送システムです。
農林水産省の説明によると、みかんは果実の中心部分から房が円状に並び、その周囲を維管束が取り囲む構造になっています。
果汁の一粒一粒に栄養を届ける仕組みみかんの果肉をよく見ると、小さな粒が集まって房を構成していることが分かります。この一粒一粒が砂じょうです。
維管束は果実の中心側から房の周囲へと伸び、砂じょうの各部分に水分や養分を供給できるようにつながっています。
そのため、白い筋は房の外側に付着しているだけのものではありません。みかんの果肉が成長し、果汁を蓄えるための重要な通路なのです。
白い筋を取っても果肉の栄養が失われるわけではないここで誤解しやすいのが、白い筋を取り除くと果肉に栄養が届かなくなるのではないか、という疑問です。
維管束は果実が成長している間に働く組織です。収穫されたみかんを食べる段階では、白い筋を取り除いても果肉から栄養が抜けてしまうわけではありません。
取り除くことで減るのは、主に白い組織そのものに含まれる食物繊維やヘスペリジンなどの摂取機会です。果肉の栄養を守るために白い筋を残さなければならない、ということではありません。
【栄養を徹底比較】みかんの白い部分に含まれる食物繊維とヘスペリジン
みかんの白い筋を残して食べるメリットは、果肉とは異なる栄養成分を一緒に摂取できることです。特に注目したいのが、食物繊維とヘスペリジンです。
白い筋や薄皮には食物繊維が含まれているみかんの白い筋やじょうのう膜には食物繊維が含まれています。食物繊維は、人間の消化酵素では十分に分解されない成分で、食生活のバランスを整えるうえで欠かせない栄養素です。
水溶性食物繊維は水に溶けてゲル状になり、食後の糖の吸収速度などに関係します。不溶性食物繊維は水分を吸収して膨らみ、便のかさを増やす働きがあります。
みかんの薄皮や白い部分を取り除かずに食べることで、果肉だけを食べる場合よりも、こうした食物繊維を含む組織を一緒に摂取できます。
文部科学省の食品成分データで見る食物繊維の違い文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」では、温州みかんの普通品について、房の状態と果汁を含む粒の状態を分けて成分を掲載しています。
可食部100g当たりの食物繊維を比較すると、次のようになります。
| 比較する部分 | 食物繊維総量 | 水溶性 | 不溶性 |
|---|---|---|---|
| じょうのう(房・薄皮を含む) | 1.0g | 0.5g | 0.5g |
| 砂じょう(果汁を含む粒) | 0.4g | 0.2g | 0.2g |
この数値から、房の状態で食べる場合には、果汁を含む粒だけを食べる場合より食物繊維を多く摂取できることが分かります。
ただし、この差は薄皮などを含む房全体と砂じょうを比較したものです。白い筋だけを取り出して測定した数値ではありません。維管束だけの食物繊維量として読み替えないよう注意が必要です。
ヘスペリジンとは?みかんの白い部分に多いフラボノイドもう一つの注目成分が「ヘスペリジン」です。
ヘスペリジンは柑橘類に含まれるフラボノイドの一種で、ビタミンPという別名でも知られています。ポリフェノールに分類される植物由来の成分で、特にみかんの果皮や白い部分、薄皮などに含まれています。
農林水産省の解説でも、維管束には食物繊維とヘスペリジンが含まれていると紹介されています。
公益財団法人東洋食品研究所の1983年の研究報告では、温州みかんの部位別ヘスペリジン含量が調査されています。報告された測定値は、果汁で100g当たり6.9~15mg、じょうのう膜で334.4~752.6mg、アルベドで1,446.0~4,705.2mgでした。
この研究では、アルベドにヘスペリジンが多く含まれることが示されています。ただし、品種や収穫時期によって含有量は変化します。1983年の研究値を現在流通しているすべてのみかんに当てはめることはできません。
ヘスペリジンを食べると健康効果が期待できる?ヘスペリジンは、血管機能や血流との関係などが研究されている成分です。柑橘類に含まれる機能性成分として、食品科学の分野でも研究が続けられています。
ただし、ヘスペリジンを含むみかんを食べれば、特定の病気を予防したり、血管の状態を確実に改善したりできるという意味ではありません。
食品に含まれる成分の研究結果と、実際にみかんを食べたときの健康効果は分けて考える必要があります。白い筋を残して食べることは、食物繊維や植物由来成分を無駄なく摂取するための自然な選択肢です。
【食べても大丈夫?】みかんの白い筋は取るべきか、残すべきか
結論からいえば、みかんの白い筋は食べても問題ありません。白い筋やアルベド、じょうのう膜は、いずれも通常のみかんに含まれる食べられる部分です。
毒性があるから取り除かなければならない、という理由はありません。むしろ、食物繊維なども一緒に摂取したい場合には、できるだけ残して食べる方法が合理的です。
白い筋を取らずに食べるメリット- 食物繊維を摂取できる:白い筋や薄皮に含まれる食物繊維を果肉と一緒に食べられる。
- ヘスペリジンを摂取できる:柑橘の白い部分に含まれるフラボノイドを無駄なく取り入れられる。
- 食べる準備が簡単:細かい筋を一本ずつ取る手間がなく、手軽に食べられる。
- 食品ロスを減らせる:食べられる部分を必要以上に取り除かずに済む。
一方、白い筋を取り除いて食べることにも理由があります。最も多いのは、口当たりの問題です。
維管束は細い繊維状の組織なので、果肉の柔らかい食感とは異なります。口の中に筋が残る感覚が苦手な人や、薄皮の食感が気になる人にとっては、取り除いたほうが食べやすく感じられます。
また、デザートやケーキなど、見た目を重視する料理では、白い筋を取った果肉が使われることもあります。小さな子どもや、噛む力が弱い人にとっても、食べやすさを優先する選択は自然です。
栄養と食べやすさのどちらを優先するべき?栄養面を重視するなら、白い筋や薄皮を残して食べる方法がおすすめです。反対に、食感がどうしても苦手なら、無理に食べる必要はありません。
みかんの栄養は白い部分だけにあるわけではありません。果肉にもビタミンC、カリウム、β-クリプトキサンチンなどが含まれています。
白い筋を取り除いたからといって、みかんを食べるメリットがなくなるわけではありません。毎日の食生活に取り入れやすい方法を選ぶことが大切です。
【見分け方を解説】みかんの白い筋・アルベド・カビの違い
みかんを食べるときには、自然な白い部分と、傷みやカビによる異常を見分けることも大切です。特に白い綿状の部分は、アルベドとカビを混同しないようにしましょう。
食べられる白い筋の特徴正常な維管束は、房の外側に沿って細い糸のように規則的に広がっています。白色から淡いクリーム色で、房の薄皮に付着しているのが特徴です。
アルベドは、外皮の裏側にある白いスポンジ状の組織です。ふわふわした見た目をしており、皮をむいたときに果実側に残ることもあります。
どちらもみかん本来の組織であり、通常の状態なら食べられます。
カビや傷みが疑われる場合注意したいのは、房の一部分だけに不自然な綿毛状のものが広がっていたり、異臭や変色、柔らかく崩れるような状態が見られたりする場合です。
自然な維管束は果実の構造に沿って存在しますが、カビは局所的な斑点や毛羽立ちとして現れることがあります。
カビが疑われるみかんは、白い筋と判断して食べずに廃棄してください。傷んだ部分だけを取り除けば安全というわけではありません。
白い筋が苦手な人におすすめの食べ方白い筋を少なくしたい場合は、みかんを房に分けるときに、果肉を傷つけないように薄皮に沿って優しく扱うとよいでしょう。
また、みかんをそのまま食べるだけでなく、ヨーグルトやスムージーに加える方法もあります。白い筋の食感が気になる場合でも、ほかの食材と組み合わせることで食べやすくなることがあります。
アルベドについても、無理にすべて取り除く必要はありません。食感が気にならない範囲で残せば十分です。
【プロの結論】みかんの白い部分は全部取らなくていい!栄養を逃さない食べ方
みかんの白い部分について、最も大切なのは、白い筋と白い綿を同じものとして扱わないことです。
房についている筋は維管束、皮の内側の白い綿はアルベド、房を包む膜はじょうのう膜。それぞれ役割が異なり、含まれる栄養成分にも違いがあります。
特に注目したいのは、白い部分が単なる食べ残しではないという点です。維管束や薄皮には食物繊維が含まれ、アルベドやじょうのう膜にはヘスペリジンなどのフラボノイドが含まれています。
毎日の食生活で栄養を無駄なく取り入れたい人は、白い筋をわざわざ一本ずつ取らず、房ごと食べる習慣をおすすめします。
ただし、食感が苦手な人や、料理の仕上がりを優先したい人は取り除いても問題ありません。白い部分を食べること自体を義務のように考える必要はないのです。
選び方の基準はシンプルです。
- 栄養をできるだけ残したい人:白い筋や薄皮を残して食べる。
- 口当たりを重視したい人:気になる筋だけ取り除く。
- 料理やデザートに使いたい人:用途に合わせて果肉だけを取り出す。
- 異臭やカビがある場合:食べずに廃棄する。
みかんは果肉だけでなく、その周囲の組織にも植物が成長するための仕組みと栄養が詰まっています。白い筋を見つけたら、取り除くべき異物ではなく、果実の一部として捉えてみてください。
みかんの白い部分に関するよくある質問(FAQ)
Q1:みかんの白い筋の正体は何ですか?
A1:白い筋の正体は維管束です。みかんの木から果実に水分や養分を運ぶ通路で、房の表面に網目状に広がっています。
Q2:みかんの白い筋は食べても大丈夫ですか?
A2:はい。正常なみかんの白い筋は食べられます。毒性があるものではなく、食物繊維やヘスペリジンなどを含んでいます。
Q3:みかんの白い筋は取るべきですか?
A3:基本的に取る必要はありません。栄養面を重視するなら残して食べるのがおすすめですが、食感が苦手なら取り除いても問題ありません。
Q4:アルベドと維管束は同じものですか?
A4:厳密には異なります。アルベドは外皮の内側にある白いスポンジ状の中果皮で、維管束は房の表面に網目状に広がる白い筋です。
Q5:みかんの白い部分にはどんな栄養がありますか?
A5:食物繊維やヘスペリジンなどが含まれています。特にヘスペリジンは柑橘類に多いフラボノイドの一種で、アルベドやじょうのう膜などに含まれています。
Q6:ヘスペリジンはビタミンなのですか?
A6:ヘスペリジンはビタミンPという別名を持つフラボノイドです。一般的な必須ビタミンとは異なり、植物に含まれるポリフェノールの一種として知られています。
みかんの白い部分には、維管束、アルベド、じょうのう膜という異なる組織があります。房の表面にある白い筋は水分や養分を運ぶ維管束で、皮の内側の白い綿はアルベドです。
これらの組織には食物繊維やヘスペリジンなどが含まれています。特に、薄皮を含む房ごと食べることは、果肉だけを食べるよりも食物繊維を取り入れやすい方法です。
2026年現在も、農林水産省の説明から分かる基本は変わりません。白い筋は食べても問題なく、栄養を無駄なく摂取したいなら残して食べるのが合理的です。
ただし、食べやすさも大切な判断基準です。白い筋を残すか取るかは、好みや用途に合わせて選べば十分。次にみかんを食べるときは、白い部分にも果実の成長を支えてきた役割と栄養があることを思い出してみてください。
主な根拠資料(公的機関・研究機関)
- 農林水産省「みかんの皮をむくと白い筋があるが、これは何ですか」(令和8年度更新)
- 農林水産省「消費者の部屋通信」令和3年12月号
- 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
- 公益財団法人東洋食品研究所「温州みかん果実及び果汁の収穫時期によるヘスペリジン含量の変化」