「ぐわし!」という掛け声とともに、独特な指の形を相手に向けるポーズ。昭和の漫画やテレビに親しんだ人なら、一度は目にしたことがあるのと考えられます。
ぐわしとは、漫画家・楳図かずおの代表作『まことちゃん』から広まった、特徴的な指サインです。中指と小指を曲げ、親指・人差し指・薬指を伸ばすという、一見簡単そうで実際には難しい形が特徴。実は、現在知られている形になる前には、まったく違う初代グワシが存在しました。加えて、似たポーズの「サバラ」には、別れの挨拶という独自の意味があります。
2024年に楳図かずおが88歳で亡くなった後も、グワシは作品とともに受け継がれています。2026年は生誕90周年のメモリアルイヤーでもあります。指の形、言葉の由来、変更された理由、サバラとの違い、そして現在の展開まで整理します。
【基本知識】ぐわしとは?楳図かずおと『まことちゃん』から生まれた指サイン

ぐわしは、楳図かずおが生み出した漫画『まことちゃん』を代表するギャグの一つです。
単なる掛け声ではなく、独特の指の形と組み合わせて使うハンドサインとして知られています。
その語源については、楳図本人が生前のインタビューで説明しています。
「グワシ!」という言葉は、ものをつかむときの「ガシッ」という感覚から生まれたものです。
つまり、辞書に載るような具体的な物の名称というより、力強くつかむ動作をイメージさせる擬態的な表現です。
楳図かずお情報を扱うUMEZZ.comの歴史解説でも、手でものをつかむときの擬態語として紹介されています。
『まことちゃん』はどんな漫画だった?『まことちゃん』は、楳図かずおによる昭和を代表するギャグ漫画です。
主人公は幼稚園児の沢田まこと。常識にとらわれない行動や、独特の言葉遣い、強烈な表情、下ネタを交えたギャグなどで人気を集めました。
作品の原形は、楳図が1971年から1972年にかけて『週刊少年サンデー』で連載した『アゲイン』にあります。
『アゲイン』に登場した主人公の孫・まことが読者から人気を集めたことから、スピンオフ作品として発展しました。
そして、1976年から1981年まで『週刊少年サンデー』で正式連載され、大きな人気を獲得します。
1980年には劇場版アニメも公開されました。
なぜグワシが社会現象になったのか『まことちゃん』の魅力は、漫画の中だけで完結しないところにもありました。
読者が実際に真似できる掛け声やポーズがあり、友達同士で再現して楽しめる仕組みになっていたのです。
特にグワシは、見た目のインパクトと指を動かす難しさが組み合わさった遊びでした。
単に漫画の登場人物の真似をするだけではなく、「自分はグワシができるか」という挑戦そのものが楽しみになっていたのです。
楳図本人も、2023年の自伝的なインタビューで、当時の『週刊少年サンデー』の読者層が大学生にまで広がっていたことを振り返っています。
幼稚園児を主人公にしながら、大人も楽しめる大胆なギャグを展開したことが、作品の幅広い人気につながりました。
【実践ガイド】ぐわしの指の形と正しいやり方を解説
現在のグワシはどんな手の形?現在一般的にグワシと呼ばれているのは、次の指の組み合わせです。
| 指 | 正しい状態 |
|---|---|
| 親指 | 伸ばす |
| 人差し指 | 伸ばす |
| 中指 | 曲げる |
| 薬指 | 伸ばす |
| 小指 | 曲げる |
要点は、中指と小指だけを曲げることです。
親指・人差し指・薬指の3本を伸ばした状態にすることで、特徴的なグワシの形が完成します。
グワシのやり方を3ステップで紹介ステップ1:手を軽く握る
最初に、手の力を抜き、指を軽く曲げた状態にします。
ステップ2:中指と小指を曲げる
中指と小指を手のひら側に折り曲げます。この2本を曲げた状態に保つことが重要です。
ステップ3:残りの3本を伸ばす
親指、人差し指、薬指を伸ばします。手のひら側を相手に向けて形を整えれば、一般的なグワシの完成です。
最後に「グワシ!」と声を添えれば、漫画でおなじみのポーズになります。
ぐわしができない理由は?グワシを試した人が最初につまずきやすいのが、薬指を伸ばしたまま中指と小指を曲げる動作です。
指はそれぞれ完全に独立して動くわけではありません。特に薬指は隣接する指との連動があり、細かな動きの調整が難しい場合があります。
そのため、次のようなことが起こります。
- 中指を曲げると薬指まで曲がってしまう。
- 小指を曲げようとすると薬指が一緒に動く。
- 3本を伸ばそうとすると中指や小指が戻ってしまう。
- 指先に力が入りすぎて、形を維持できない。
ただし、これは練習不足だけが原因ではありません。手指の柔軟性や動かしやすさには個人差があります。
無理に指を押し込んだり、強く引っ張ったりする必要はありません。自然に動かせる範囲で練習するのがおすすめです。
実は楳図かずお本人もグワシができなかった?意外な事実があります。
UMEZZ.comの「グワシの歴史」では、楳図かずお自身も自分の手ではグワシを作ることが難しく、紙製の「グワシハンド」を開発していたことが紹介されています。
本人が再現できないほど難しいポーズだったというのは、興味深いエピソードです。
加えて、読者が考案したグワシの難易度を級や段で分ける「グワシ免許証」という遊びも生まれました。
初代グワシは二級、現在一般的な形は免許皆伝として紹介されています。
つまり、グワシができないからといって、特別に不器用というわけではありません。もともと難しい指サインとして親しまれてきたのです。
【歴史を検証】初代グワシと現在のグワシは何が違う?変更理由の真相
初代グワシは現在とはまったく違う形だった現在のグワシが広く知られるようになる前、初代グワシが存在しました。
初代の形は、中指を1本だけ立てるポーズです。
現在のように中指と小指を曲げる形ではありません。
当時の日本では、このポーズが海外でどのような意味を持つのか、広く知られていませんでした。
しかし、ある読者からの手紙によって状況が変わります。
変更のきっかけはアメリカ在住の読者からの指摘UMEZZ.comの「グワシの歴史」によると、ニューヨーク在住の読者、SHIGEKI・TANABE氏が、初代グワシの危険性を楳図に伝えました。
中指を立てる仕草は、アメリカをはじめとする地域では非常に侮辱的な意味を持つ場合があります。
日本では漫画のギャグとして使われていたポーズが、海外では相手を侮辱するジェスチャーとして受け取られる可能性があったのです。
楳図本人も、後年のインタビューで、外国ではタブーとなるポーズだと後から知って驚いたと語っています。
二代目を考案したのも読者だった初代グワシを変更する際、重要な役割を果たしたのも読者でした。
UMEZZ.comの記録によると、石川県山代温泉の細川昭司氏が新しい指サインを提案しています。
それが、現在一般的に知られている中指と小指を曲げる形です。
作者が一方的に形を変えたのではなく、読者から寄せられた意見やアイデアが作品の文化を発展させたのです。
これは、グワシが単なる漫画の小道具ではなく、読者も参加する遊びとして広がっていたことを示すエピソードです。
初代と二代目の違いを比較| 比較項目 | 初代グワシ | 二代目グワシ |
|---|---|---|
| 基本形 | 中指を立てる | 中指と小指を曲げる |
| 指の形 | 中指以外を握る形 | 親指・人差し指・薬指を伸ばす |
| 海外での問題 | 侮辱的な意味を持つ | 初代とは異なる形に変更 |
| 誕生の経緯 | 楳図が考案 | 読者の細川昭司氏が提案 |
| 現在の扱い | 初代として歴史的に紹介 | 一般的なグワシとして定着 |
この変更は、単なるデザイン変更ではありません。
日本の漫画文化と海外のジェスチャー文化が接触したことで生まれた、興味深いエピソードです。
また、初代の形と現在の形を混同すると、海外で誤解を招く可能性があります。昔の漫画に登場するポーズを真似するときには、時代や文化による意味の違いにも注意が必要です。
【徹底比較】グワシとサバラの違いは?意味と指の形を解説
サバラとは「さよなら」を意味する言葉『まことちゃん』には、グワシと並んで有名な「サバラ!」という掛け声があります。
こちらは、別れ際に使う挨拶です。
楳図かずお情報サイトのUMEZZ.comに掲載された2008年の本人Q&Aでは、楳図自身がサバラについて次のように説明しています。
「サバラ」は「サラバ」の間違いなので、サヨナラのときに、最後に別れるときにするポーズです。
つまり、サバラは「さらば」という言葉が変化したものです。
単なる意味のない奇声ではなく、別れを表す言葉遊びから生まれた表現だったのです。
サバラの指の形はグワシと違う一般的なサバラのポーズは、次のような形です。
- 親指:伸ばす
- 人差し指:伸ばす
- 中指:曲げる
- 薬指:曲げる
- 小指:伸ばす
グワシと同じように特徴的な指の形ですが、曲げる指が異なります。
グワシは中指と小指、サバラは中指と薬指です。
この違いを覚えておけば、2つのポーズを混同しにくくなります。
グワシとサバラの違い一覧| 項目 | グワシ | サバラ |
|---|---|---|
| 主な意味 | 決めポーズ・掛け声 | さよなら・別れの挨拶 |
| 曲げる指 | 中指・小指 | 中指・薬指 |
| 使う場面 | 登場時や印象的な場面 | 別れ際 |
| 語源・由来 | つかむときの「ガシッ」という感覚 | 「さらば」の言い間違い |
| 作品内の役割 | インパクトのある決めポーズ | 別れを印象づけるポーズ |
2025年5月28日に吉祥寺で開催された「楳図かずお サバラ!お別れの会」でも、この言葉が大切にされました。
一般財団法人UMEZZの代表理事・上野勇介氏は、会の挨拶で、サバラは単なるさよならではなく「また会うための合言葉」だと伝えています。
楳図の作品や人柄を象徴する言葉として、亡くなった後も大切に受け継がれていることが分かります。
【2026年最新】ぐわしは現在も使われている?楳図かずおの功績と継承
楳図かずおは2024年10月28日に88歳で逝去漫画家・芸術家の楳図かずおは、2024年10月28日、88歳で亡くなりました。
一般財団法人UMEZZの発表では、楳図は『まことちゃん』だけでなく、『漂流教室』『おろち』『わたしは真悟』など、恐怖・SF・ギャグの幅広いジャンルで作品を残しました。
その功績は漫画の世界にとどまりません。
2022年には27年ぶりとなる新作『ZOKU-SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館』を発表。2023年には手塚治虫文化賞の特別賞を受賞しています。
2025年には「サバラ!お別れの会」が開催2025年5月28日、楳図が長く親しんだ吉祥寺で「楳図かずお サバラ!お別れの会」が開催されました。
会場には漫画家や関係者、一般のファンが集まり、楳図の功績を振り返りました。
会場には赤と白の花を使った祭壇が設けられ、遺影にはおなじみのグワシのポーズを決めた笑顔の楳図が選ばれました。
作品の中から生まれた指サインが、本人を偲ぶ象徴として使われたことも印象的です。
2026年は生誕90周年のメモリアルイヤー一般財団法人UMEZZは、2025年10月28日に楳図かずお生誕90周年プロジェクトの始動を発表しました。
2026年には、次のような関連企画が展開されています。
- 2026年1月29日~3月15日:フランスのアングレーム市立美術館で回顧展を開催。
- 2026年2月27日:『妖怪伝 猫目小僧』のDVD BOXを発売。
- 2026年5月1日~31日:吉祥寺で「UMEZZ GUWASHI CARNIVAL 2026」を開催。
特に「UMEZZ GUWASHI CARNIVAL 2026」は、グワシの名前を冠した大規模な地域企画です。
吉祥寺PARCOでのポップアップ展示、コラボカフェ、フォトブース、漫画にちなんだ謎解き企画などが展開されました。
吉祥寺サンロード商店街にも、まことちゃんの街頭フラッグが登場する企画が案内されています。
こうした取り組みからも、グワシが過去の漫画の中だけに存在する言葉ではなく、楳図の作品世界を象徴する文化的なシンボルとして受け継がれていることが分かります。
【よくある質問】ぐわしに関するFAQ
Q1:ぐわしとは簡単にいうと何ですか?
A1:楳図かずおの漫画『まことちゃん』から広まった指サインです。中指と小指を曲げ、親指・人差し指・薬指を伸ばす独特なポーズと、「グワシ!」という掛け声が特徴です。
Q2:初代グワシと現在のグワシは何が違いますか?
A2:初代は中指を1本だけ立てる形でした。海外で侮辱的な意味を持つと読者から指摘されたことをきっかけに変更され、現在の中指と小指を曲げる形になりました。
Q3:グワシができないのはなぜですか?
A3:中指と小指を曲げながら、薬指や人差し指を伸ばす動きが難しいためです。指の柔軟性や連動の個人差も関係します。楳図かずお本人も自分の手では再現できず、紙製のグワシハンドを使っていました。
Q4:サバラとグワシの違いは何ですか?
A4:グワシは中指と小指を曲げるポーズで、サバラは中指と薬指を曲げるポーズです。グワシは決めポーズ、サバラは別れの挨拶として使われます。
Q5:サバラの意味と由来は何ですか?
A5:「さらば」の言い間違いから生まれた言葉です。楳図かずお本人も、最後に別れるときに使うポーズだと説明しています。2025年のお別れの会では「また会うための合言葉」として紹介されました。
Q6:2026年現在もグワシは使われていますか?
A6:はい。楳図かずおの作品を象徴するポーズとして親しまれています。2026年には生誕90周年プロジェクトの一環として、吉祥寺でUMEZZ GUWASHI CARNIVALも開催されました。
ぐわしとは、楳図かずおの『まことちゃん』から生まれた、掛け声と指の形を組み合わせた独特のハンドサインです。
その歴史を振り返ると、現在の形になるまでには興味深い変遷がありました。
特に押さえておきたいのは、次の4点です。
- 意味と由来: ものをつかむときの「ガシッ」という感覚から生まれた。
- 指の形: 現在は中指と小指を曲げる形が基本。
- 変更理由: 初代の中指を立てる形が海外で問題になると読者から指摘され、改良された。
- サバラとの違い: グワシは決めポーズ、サバラは別れの挨拶として使われる。
そして、見逃せないのが読者の存在です。
初代グワシの問題を指摘した読者も、新しい形を提案した読者も、作品を楽しむ一人のファンでした。作者と読者が一緒になって生み出した文化だったからこそ、グワシは漫画の枠を越えて広がったのでしょう。
2026年の生誕90周年プロジェクトでも、その象徴的な存在感は健在です。
楳図かずお本人はもう新しい作品を描くことはありません。しかし、『まことちゃん』とグワシ、そして「サバラ!」という言葉は、これからも世代を越えて受け継がれていくはずです。
グワシの形を覚えたら、最後はぜひ「サバラ!」も一緒に覚えてみてください。
主な参考資料・事実確認資料
- 一般財団法人UMEZZ「グワシの歴史」
- 楳図かずお本人のQ&A(UMEZZ.com、2008年)
- 『婦人公論』2025年4月掲載・楳図かずお自伝インタビュー
- 集英社オンライン「幻の“初代グワシ”」
- 一般財団法人UMEZZ「生誕90周年プロジェクト」「UMEZZ GUWASHI CARNIVAL 2026」
- 週刊きちじょうじ「楳図かずお サバラ!お別れの会」報道