『きみの色』の主人公は、女子高生の日暮トツ子。彼女には、周囲の人間が感情に応じた「色」をまとって見えるという不思議な感覚があります。
嬉しいときの色、楽しいときの色、穏やかなときの色。トツ子にとって、色は言葉だけでは伝わらない他人の気持ちを感じ取る手がかりです。
そんな彼女が強く惹かれたのが、同じ学校に通っていた作永きみ。トツ子の目には、きみは特別に美しい色を放つ存在として映っていました。
ところが、きみはある日突然学校を辞めてしまいます。
その後、街の古書店で偶然きみと再会したトツ子は、音楽好きの少年・影平ルイとも出会います。こうして3人はバンドを組むことになります。
3人が抱える秘密と葛藤物語の中心にあるのは、3人がそれぞれ抱えている、他人には打ち明けにくい悩みです。
- 日暮トツ子: 人の色は見えるのに、自分自身の色だけは見ることができない。
- 作永きみ: 自分の意思で学校を辞めたものの、その事実を家族に打ち明けられずにいる。
- 影平ルイ: 母親から医師になることを期待されながら、密かに音楽活動を続けている。
3人は離島にある古い教会を練習場所にして、バンド活動に取り組みます。
最初から強い絆があったわけではありません。音楽を一緒に作り、演奏し、少しずつ相手の考え方を知ることで、互いの距離が変わっていきます。
物語の後半では学園祭と初めてのライブが重要な舞台になります。
3人が人前で音楽を奏でることは、単なる演奏会ではありません。それぞれが自分の気持ちと向き合い、誰かに自分を見せるための一歩でもあります。
タイトルの「色」が意味するもの本作の「色」は、単なる視覚的なファンタジー設定ではありません。
他人の感情を色として感じるトツ子、自分の本心を隠しているきみ、周囲の期待と自分の希望の間で揺れるルイ。それぞれが異なる方法で、自分と他人の距離を測っています。
興味深いのは、トツ子が他人の色を認識できても、自分の色は分からないという設定です。
人の気持ちは分かるのに、自分がどう見られているかは分からない。この逆説が、思春期の自己認識や他者との関係を象徴しています。
そのため、本作は単純なバンド結成の成功物語というよりも、音楽を通じて自分の存在を肯定していく青春映画として楽しめます。
【きみの色の登場人物・声優キャスト一覧】鈴川紗由・髙石あかり・木戸大聖ら8人

本作のキャスティングで注目したいのは、中心となる3人の声を担当した鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖です。
映画公式サイトによると、3人は約1,600人が参加したオーディションから選ばれました。すでに知名度のある声優だけで主要人物を固めるのではなく、人物の雰囲気や声の自然さを重視したキャスティングが特徴です。
主要キャスト・登場人物の関係一覧
鈴川紗由(日暮トツ子役)
トツ子の持つ素直さや、相手の感情に敏感な性格を表現する主要キャストです。約1,600人のオーディションを経て抜擢されたことも、本作のキャスティングを語るうえで要点です。
髙石あかり(作永きみ役)
トツ子が特別な色を感じ取る少女。周囲から見える姿と、自分の内側にある気持ちとのギャップを抱えています。劇中では歌唱も担当しています。
木戸大聖(影平ルイ役)
音楽を愛する少年。母親の期待する将来と、自分が進みたい道との間で葛藤しています。トツ子ときみの関係に加わり、3人のバンドを支える存在です。
主要3人以外にも、幅広い出演者が作品を支えています。
特に注目したいのは、シスター日吉子役の新垣結衣です。映画『きみの色』では、主人公たちの青春を取り巻く大人の存在も物語の一部になっています。
また、やす子、戸田恵子、悠木碧、寿美菜子といった異なる分野・キャリアを持つ出演者が集まっている点も魅力です。
【山田尚子監督×吉田玲子脚本×牛尾憲輔音楽】サイエンスSARUが描く映像美
『きみの色』を理解するうえで欠かせないのが、監督・脚本・音楽を担当した3人のクリエイターです。
山田尚子監督の演出と作品の共通点は、『映画けいおん!』『映画 聲の形』などを手がけてきたアニメーション監督です。
山田監督の演出で特徴的なのは、大きな事件や説明的なセリフだけに頼らず、人物の視線、仕草、沈黙、日常の空気感を使って心の動きを描くところです。
『きみの色』でも、登場人物が自分の感情をうまく説明できない場面が多くあります。
その代わりに、色彩や音楽、表情の変化が人物の内面を伝えます。
公式サイトに掲載された企画書では、監督が描きたい方向性として「好きなものを好き」と言える強さを挙げています。これは、本作の青春描写を読み解くうえで重要な視点です。
吉田玲子の脚本が支える3人の心理描写は本作の脚本を担当しています。
山田監督とは『けいおん!』シリーズなどでもタッグを組んできたクリエイターです。
本作では、3人それぞれの事情を別々のエピソードとして描くだけではなく、バンド活動という共通の場所に集約しています。
きみの学校生活、ルイの将来、トツ子の自己認識。それぞれ違う悩みを抱えながら、同じ音楽を演奏することで関係が変わっていく構成です。
牛尾憲輔の音楽とサイエンスSARUの映像制作は音楽と音楽監督を担当。
音楽が単なる背景ではなく、人物の感情を伝える重要な要素になっています。
アニメーション制作はが担当しました。
同スタジオは『平家物語』『犬王』などでも知られ、作品ごとに異なる映像表現を追求してきた制作会社です。
本作では、色彩の使い方、人物の動き、風景の描写、演奏シーンが一体となり、音楽映画としての個性を形作っています。
【きみの色の主題歌はMr.Children「in the pocket」】劇中歌との違いも解説
映画『きみの色』の主題歌は、が本作のために書き下ろした「in the pocket」です。
主題歌「in the pocket」の制作陣| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 楽曲名 | in the pocket |
| アーティスト | Mr.Children |
| 作詞・作曲 | 桜井和寿 |
| 編曲 | Mr.Children・牛尾憲輔 |
| レーベル | TOY'S FACTORY |
この楽曲の注目点は、Mr.Childrenのバンドサウンドと牛尾憲輔の音楽的なアプローチが組み合わされていることです。
劇中で描かれる3人の成長や、他人に気持ちを伝える難しさと、映画全体のテーマが結びついています。
公式サイトでも、本作のために書き下ろされた主題歌として紹介されています。
劇中歌「水金地火木土天アーメン」も重要もう一つ、作品を語るうえで外せないのが、劇中歌の「水金地火木土天アーメン」です。
これは、劇中でトツ子たちが作るバンドの楽曲です。
山田監督が東宝の製作報告会で説明した内容によると、牛尾憲輔が楽曲を作り、歌詞はトツ子、きみ、ルイという登場人物たちが書く設定になっています。
歌唱では髙石あかりがボーカル、鈴川紗由がコーラスを担当しました。
つまり、主題歌と劇中歌は役割が異なります。
- 「in the pocket」:Mr.Childrenによる映画の主題歌。
- 「水金地火木土天アーメン」:物語の中で3人が演奏するバンドの楽曲。
この違いを知っておくと、音楽が物語にどう組み込まれているか、より深く理解できます。
【きみの色の受賞歴と評価・感想】上海国際映画祭から2026年の国際評価まで
『きみの色』は日本国内の公開前から海外映画祭で紹介され、複数の国際的な評価を獲得してきました。
上海国際映画祭で金爵賞を受賞大きな実績となったのが、2024年6月に開催された第26回上海国際映画祭です。
同映画祭で『きみの色』は、金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞しました。
受賞発表は現地時間の2024年6月22日。日本作品が同部門の最優秀作品賞を受賞するのは5年ぶりと、公式発表や関係者の報告で紹介されました。
加えて、現地でのプレミア上映はチケット発売後すぐに完売したと映画公式サイトが伝えています。
アヌシー国際アニメーション映画祭にも選出では、2024年の長編コンペティション部門に選出されました。
アヌシーの公式アーカイブでは、作品の上映時間を1時間41分と紹介し、監督、脚本、音楽、制作に関わったスタッフも掲載しています。
ここで注意したいのは、コンペティション部門への選出と受賞は別の実績だということです。
アヌシーについてはコンペティション参加、上海については実際の受賞として整理する必要があります。
2025年・2026年にも続く海外での評価公開後も国際的な評価は続いています。
| 年 | 映画祭・賞 | 実績 |
|---|---|---|
| 2024年 | 上海国際映画祭 | 金爵賞アニメーション最優秀作品賞 |
| 2024年 | アヌシー国際アニメーション映画祭 | 長編コンペティション部門選出 |
| 2024年 | ロカルノ国際映画祭 | 作品選出 |
| 2025年 | Crunchyroll Anime Awards | Film of the Yearノミネート |
| 2026年 | Saturn Awards | Best International Animated Filmノミネート |
| 2026年 | Anime Trending Awards | Anime Movie of the Year第5位 |
特に2026年の実績は見逃せません。
第53回Saturn Awardsでは、Best International Animated Film部門にノミネートされました。同部門の受賞作は『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』で、『きみの色』はノミネート作品の一つです。
また、第12回Anime Trending Awardsでは、Anime Movie of the Yearで第5位、7,252票、得票率9.12%を記録しています。
Filmarksの評価と実際の感想3.8 / 5.0
Filmarks評価
2026年11月5日確認時点17,071件
レビュー投稿数
同サイト掲載値
Filmarksのレビューを確認すると、作品の評価にはいくつか共通した傾向があります。
好意的に受け止められているポイント
- 色彩や背景美術の美しさ。
- バンド演奏と劇中歌の印象的な使い方。
- 3人が少しずつ打ち解けていく青春描写。
- 山田尚子監督らしい繊細な演出。
評価が分かれているポイント
- 物語の展開が比較的穏やかであること。
- 登場人物の悩みが深く掘り下げられないと感じる人がいること。
- 「色が見える」という独特の設定を、もっと物語の展開に活用してほしかったという意見。
- 明確な対立や大きな感情の爆発を期待すると、物足りなさを感じる場合があること。
実際、レビューには映像や音楽を高く評価する声がある一方、ストーリーの掘り下げ方に疑問を示す投稿も見られます。
【プロの結論】この映画の評価はストーリーの派手さだけでは決まらない『きみの色』の評価を考えるとき、一般的な青春映画と同じ基準だけで判断すると、作品の特徴を見落とす可能性があります。
本作の魅力は、問題が次々と発生して解決していく展開よりも、登場人物の感情が音楽や色彩に変換されていく過程にあります。
特に、音楽が3人の共通言語になっている点は重要です。
それぞれの悩みを言葉で完全に説明できなくても、一緒に演奏することで関係が変わっていく。そこに本作ならではの青春映画としての価値があります。
おすすめできるのは、次のような人です。
- 山田尚子監督の繊細な映像表現が好きな人。
- 音楽と青春を組み合わせた作品を見たい人。
- キャラクターの心理や微妙な距離感を楽しめる人。
- 美術、色彩、劇伴に注目して映画を鑑賞する人。
反対に、テンポの速いストーリー、強い対立、明確な伏線回収、派手なライブ演出を最優先する人には、好みが分かれる作品です。
【きみの色の配信情報2026年最新】Prime Video・U-NEXTなどで視聴できる?
2026年11月現在、日本国内で『きみの色』を視聴する方法として、定額制動画配信サービスとBlu-ray・DVDがあります。
2026年10月28日調査の配信情報では、6つのサービスで配信が確認されています。
2026年10月28日時点の動画配信状況| 配信サービス | 配信形態 | 月額料金(税込) |
|---|---|---|
| Amazon Prime Video | 見放題 | 600円 |
| U-NEXT | 見放題 | 2,189円 |
| DMM TV | 見放題 | 550円 |
| Hulu | 見放題 | 1,320円 |
| FOD | 見放題 | 1,320円 |
| Lemino | レンタル | 別料金 |
| Netflix | 配信なし | ― |
| ABEMA | 配信なし | ― |
| Disney+ | 配信なし | ― |
出典:配信INDEXの2026年10月28日調査。料金は同サイトの2026年10月22日確認値。プランやキャンペーン、配信権の変更により変動する場合があります。
どの動画配信サービスを選ぶべき?選び方はシンプルです。
- Amazon Prime Video: すでにAmazonプライム会員なら、追加料金なしで視聴できる選択肢。
- U-NEXT: 初回登録時の31日間無料トライアルが案内されている。
- DMM TV: 月額料金を抑えて見放題作品を楽しみたい人向け。
- Hulu・FOD: すでに契約している人は、追加登録を避けられる可能性がある。
- Lemino: 見放題ではなくレンタル形式で視聴する選択肢。
無料体験の適用条件や対象作品は、登録前に各サービスの公式情報で確認してください。
なお、上記は日本国内向けの配信情報です。海外からのアクセスでは配信権や視聴可否が異なる場合があります。
Blu-ray・DVDは2025年2月26日に発売配信だけでなく、パッケージ版も発売されています。
東宝の公式商品情報によると、Blu-ray・DVDの発売日は2025年2月26日です。
Blu-ray豪華版
8,800円
発売時の税込価格
- 本編ディスク
- 約170分の特典ディスク
- 52ページのブックレット
- スタッフオーディオコメンタリー
Blu-ray通常版
5,500円
発売時の税込価格
- 本編ディスク
- 予告編集
DVD通常版
4,400円
発売時の税込価格
- 本編ディスク
- 予告編集
特典映像には、山田尚子監督と牛尾憲輔によるオーディオコメンタリー、劇中歌のダンス映像、イベント映像などが収録されています。
音楽や制作過程まで楽しみたい人には、豪華版も選択肢になります。
【きみの色に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:映画『きみの色』はどんな話ですか?
A1:人の感情が色として見える女子高生・日暮トツ子が、作永きみと影平ルイに出会い、3人でバンドを組む青春物語です。音楽を通じて、それぞれの悩みや本心と向き合っていきます。
Q2:きみの色の上映時間は何分ですか?
A2:日本の映画情報データベースでは100分です。アヌシー国際アニメーション映画祭やBlu-rayの収録情報では101分と表記される場合もあります。
Q3:トツ子・きみ・ルイの声優は誰ですか?
A3:日暮トツ子役が鈴川紗由、作永きみ役が髙石あかり、影平ルイ役が木戸大聖です。
Q4:きみの色の主題歌は何ですか?
A4:Mr.Childrenの書き下ろし楽曲「in the pocket」です。編曲には牛尾憲輔も参加しています。
Q5:きみの色は上海国際映画祭で何を受賞しましたか?
A5:2024年の第26回上海国際映画祭で、金爵賞アニメーション最優秀作品賞を受賞しました。アヌシー国際アニメーション映画祭では長編コンペティション部門に選出されています。
Q6:きみの色はNetflixで配信されていますか?
A6:2026年10月28日の日本国内向け調査ではNetflixでの配信は確認されていません。Prime Video、U-NEXT、DMM TVなどでは見放題配信が確認されています。
Q7:きみの色は原作漫画や小説がありますか?
A7:本作は山田尚子監督による完全オリジナル長編アニメーション映画です。既存の漫画や小説を原作とした映画ではありません。
映画『きみの色』は、山田尚子監督が吉田玲子、牛尾憲輔と組み、サイエンスSARUの制作によって完成させた音楽×青春のオリジナルアニメーションです。
鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖が演じる3人の主人公を軸に、他人に合わせること、自分の本心を隠すこと、自分の好きなものを大切にすることを繊細に描いています。
上海国際映画祭での受賞、アヌシーでのコンペティション選出に加え、2025年のCrunchyroll Anime Awards、2026年のSaturn AwardsやAnime Trending Awardsでも国際的な評価を受けました。
作品の見どころを整理すると、次の3点に集約できます。
1. 映像表現: 色彩を通して登場人物の感情を表現する山田尚子監督の演出。
2. 音楽: Mr.Childrenの「in the pocket」と劇中歌が物語に与える一体感。
3. 青春描写: 3人が音楽を通じて自分らしさを見つけていく過程。
派手な展開や分かりやすい感動を求める映画とは少し違います。しかし、映像や音楽、登場人物の小さな心の変化を味わいたい人にとっては、何度も見返す価値のある作品です。
2026年に初めて見る人はもちろん、劇場で鑑賞した人も、配信やBlu-rayで音楽と色彩に改めて注目してみると、新しい発見があるはずです。
主な情報確認先:映画『きみの色』公式サイト、東宝、サイエンスSARU、アヌシー国際アニメーション映画祭、上海国際映画祭、Crunchyroll、Saturn Awards、Anime Trending、Filmarks。配信情報は2026年10月28日調査分を基準としています。