河瀬直美(河瀨直美)は、『萌の朱雀』『殯の森』『あん』『朝が来る』など、故郷・奈良の風景や人間の生と死、家族のつながりを描いてきた日本を代表する映画監督の一人だ。カンヌ国際映画祭での受賞をはじめ、国内外で高い評価を獲得している。
2026年は、6年ぶりの劇映画となる監督最新作『たしかにあった幻』が2月6日に公開されたほか、10月30日公開の中川龍太郎監督作品『恒星の向こう側』では俳優として出演。加えて、故郷で主宰する「なら国際映画祭」も開催され、映画監督・俳優・映画文化の担い手という複数の顔が注目されている。ここでは代表作の見どころ、監督作品一覧、作風の変化、受賞歴、最新作の評判まで整理する。
【2026年最新情報】河瀬直美の新作は『たしかにあった幻』と『恒星の向こう側』

2026年の河瀬直美関連映画を調べる際、最初に区別しておきたいのが『たしかにあった幻』と『恒星の向こう側』の立ち位置だ。前者は河瀬自身が監督・脚本を担当した作品であり、後者は別の監督による映画への出演作である。
『たしかにあった幻』は6年ぶりの劇映画『たしかにあった幻』は2025年製作、2026年2月6日公開の115分の人間ドラマ。河瀬直美が監督・脚本・編集を担当し、フランス、日本、ベルギー、ルクセンブルクによる国際共同製作作品として完成した。
主演はヴィッキー・クリープスと寛一郎。尾野真千子、北村一輝、永瀬正敏、中野翠咲、中村旺士郎、岡本玲、小島聖、中嶋朋子らも出演している。
物語の中心となるのは、フランスから来日し、神戸の臓器移植医療センターで小児移植医療の促進に取り組む女性コリー。日本とヨーロッパの死生観や医療制度の違いに直面するなか、屋久島で出会った恋人・迅が突然姿を消す。やがて、失踪の背景と心臓移植を待つ少女の存在が交差していく。
本作が扱うのは、恋愛や失踪という個人の物語だけではない。臓器提供をめぐる倫理観、家族の選択、死後も誰かの身体のなかで続いていく命という、社会的にも重いテーマだ。
配給元の公式発表によると、本作は第78回ロカルノ国際映画祭のインターナショナル・コンペティション部門に正式招待され、ワールドプレミア上映された。河瀬監督にとっては『Vision』(2018年)以来、オリジナル脚本による劇映画として8年ぶりの作品でもある。
『恒星の向こう側』では俳優として母親を演じる一方、『恒星の向こう側』は河瀬直美が監督した映画ではない。中川龍太郎が監督・脚本を担当し、2026年10月30日に劇場公開された92分の人間ドラマだ。
河瀬は、福地桃子演じる主人公・未知の母親である可那子役を担当。余命わずかな母と、母との関係に葛藤を抱えながら故郷に戻る娘の姿を通して、喪失と再生、親子の愛情を描く。
この作品は2025年の第38回東京国際映画祭コンペティション部門に出品され、河瀬と福地桃子がそろって最優秀女優賞を受賞した。河瀬にとって監督としてではなく、俳優として映画祭の評価を受けた点も大きな転機となった。
つまり、2026年の作品を整理する場合は、次のように理解すると分かりやすい。
- 『たしかにあった幻』:河瀬直美が監督・脚本を担当した最新劇映画。
- 『恒星の向こう側』:中川龍太郎監督作品。河瀬直美は俳優として出演。
【映画一覧】河瀬直美の監督作品を年代順に整理
河瀬直美の映画キャリアは、最初から劇映画一色だったわけではない。1990年代初頭の自主制作ドキュメンタリーから始まり、故郷の奈良を舞台にした劇映画、社会的なテーマを持つ人間ドラマ、国際的な共同製作へと活動領域を広げてきた。
以下は、主要な監督作品を中心にまとめた一覧だ。
| 公開年 | 作品名 | 作品の位置づけ・特徴 |
|---|---|---|
| 1992年 | につつまれて | 初期の自分史的ドキュメンタリー |
| 1994年 | かたつもり | 身近な人間関係を記録したドキュメンタリー |
| 1997年 | 萌の朱雀 | 劇映画デビュー作。カンヌ新人監督賞を受賞 |
| 2000年 | 火垂 | 家族や喪失、人間の孤独を描く劇映画 |
| 2003年 | 沙羅双樹 | 奈良を舞台に生と死、地域の営みを描く |
| 2006年 | 垂乳女 | 出産や母性を題材にしたドキュメンタリー |
| 2007年 | 殯の森 | カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作 |
| 2008年 | 七夜待 | 異文化との出会いを描く作品 |
| 2010年 | 玄牝 | 自然なお産と生命を見つめるドキュメンタリー |
| 2011年 | 朱花の月 | 奈良の自然と歴史を背景にした劇映画 |
| 2014年 | 2つ目の窓 | 思春期の少年少女と生死を描く作品 |
| 2015年 | あん | ハンセン病への偏見と人間の尊厳を描く |
| 2017年 | 光 | 視覚障害と映画、愛を題材にした作品 |
| 2018年 | Vision | 国際的なキャストと自然を融合させた作品 |
| 2020年 | 朝が来る | 特別養子縁組を題材にした人間ドラマ |
| 2022年 | 東京2020オリンピック SIDE:A・SIDE:B | 東京2020大会の公式記録映画 |
| 2026年 | たしかにあった幻 | 臓器移植と失踪を題材にした最新劇映画 |
1995年の山形国際ドキュメンタリー映画祭などで注目を集めた『につつまれて』『かたつもり』は、河瀬映画の原点を理解するために重要な作品だ。
大規模なセットや劇的な演出に頼るのではなく、身近な人間や日常生活を撮影し、そのなかにある感情や時間を映像に残す。こうした記録映画の経験は、その後の劇映画にも引き継がれていく。
劇映画監督として世界的評価を獲得1997年の『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭のカメラドールを受賞したことで、河瀬は国際的な注目を集めた。2007年の『殯の森』では、さらに大きな賞を獲得。奈良を舞台にした作品が、世界の映画関係者に強い印象を残した。
その後は『あん』『光』『朝が来る』など、特定の地域や家族を描きながら、差別、障害、養子縁組といった社会的な問題にも踏み込むようになった。
【代表作を深掘り】『萌の朱雀』『殯の森』『あん』『朝が来る』の見どころ
河瀬直美の代表作を選ぶときは、受賞歴だけでなく、監督の表現がどのように変化したのかという視点も大切だ。ここでは、初期から近年までの重要作品を取り上げる。
『萌の朱雀』|奈良の山村に生きる人々の喪失1997年公開の『萌の朱雀』は、河瀬直美の劇映画デビュー作。奈良県の山間部を舞台に、過疎化が進む地域で暮らす一家の変化と、家族の関係が崩れていく過程を描いている。
物語の中心にあるのは、派手な事件ではなく、日常のなかで少しずつ失われていくものだ。山の風景、家のなかの沈黙、登場人物の何気ない表情が、家族の距離や時代の変化を伝える。
本作は第50回カンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞。河瀬は27歳で同賞を獲得し、当時の最年少受賞者として知られるようになった。
河瀬映画を初めて観る人にとって、監督の原点を知るための一本だ。
『殯の森』|死者を悼む時間と生きる意味2007年公開の『殯の森』は、奈良の介護施設を舞台に、認知症の男性と介護職員の女性の交流を描く作品。男性は亡くなった妻への思いを抱えており、二人は森への旅を通して、それぞれの喪失と向き合う。
作品の大きな特徴は、悲しみを言葉で説明しすぎないことだ。森の音、風景、歩く人物の姿、長く続く時間が、登場人物の心情を伝えていく。
第60回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門に出品され、グランプリ(審査員特別大賞)を受賞した。『萌の朱雀』と並ぶ河瀬直美の代表作であり、国際的な評価を決定づけた作品といえる。
『あん』|社会的偏見の向こうにある人間の尊厳2015年公開の『あん』は、ドリアン助川の小説を原作とする人間ドラマ。どら焼き店で働くことになった老女・徳江と、店主の千太郎を中心に物語が進む。
徳江は優れたあん作りの技術を持っているが、ハンセン病を患った過去が周囲に知られたことで、偏見や差別に直面する。
本作の見どころは、病気や社会的な立場によって人間の価値を決めてしまうことの危うさを、日常の仕事や食べ物を通して描いた点だ。
樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅らの出演も話題となり、第68回カンヌ国際映画祭のある視点部門に出品された。河瀬作品のなかでも、比較的物語を追いやすく、初めて観る人にも勧めやすい作品だ。
『朝が来る』|血縁だけでは説明できない母と子の関係2020年公開の『朝が来る』は、辻村深月の小説を原作とする作品。特別養子縁組を通して子どもを迎えた夫婦と、産んだ子どもを手放した若い女性、それぞれの人生を描いている。
作品の中心にあるのは、母親とは誰なのか、家族とは何によって成立するのかという問いだ。血縁、育てること、産むこと、それぞれの立場にある人物の苦悩を一方的に裁かずに描く。
河瀬がこれまで取り組んできた家族や生命というテーマが、社会制度と結びついた作品でもある。
第73回カンヌ国際映画祭の公式セレクションに選ばれたほか、第45回報知映画賞監督賞、第75回毎日映画コンクール監督賞を受賞。第44回日本アカデミー賞でも優秀監督賞などに選ばれた。
『東京2020オリンピック SIDE:A・SIDE:B』|個人の人生から社会全体へ2022年公開の『東京2020オリンピック SIDE:A』と『SIDE:B』は、東京2020大会の公式映画として制作された2部作。河瀬直美が総監督を務めた。
『SIDE:A』は主にアスリートに焦点を当て、競技に臨む選手たちの情熱や葛藤を記録。『SIDE:B』はボランティアや大会関係者など、競技を支える人々の視点から大会を描いている。
これまで家族や地域の小さな生活圏を撮ってきた河瀬が、世界規模のスポーツイベントに向き合った点で、キャリアのなかでも異色の作品だ。
【作風を分析】河瀬直美映画が描き続ける生と死、自然、家族
河瀬直美の映画には、作品ごとに異なる題材が登場する。しかし、複数の作品を見比べると、繰り返し現れる表現上の特徴がある。
1. ドキュメンタリーとフィクションの境界を越える河瀬映画の大きな特徴は、ドキュメンタリー的な観察と劇映画の物語性を組み合わせることだ。
俳優に決められた台詞を演じさせるだけでなく、実際の場所で時間を過ごし、人物や環境との関係を築くことで、自然な反応を映像に取り込もうとする。
『たしかにあった幻』の制作時にも、主演のヴィッキー・クリープスが実際の病院に滞在し、医師の衣装を着て子どもたちと交流する取り組みが行われた。ハリウッド・リポーター・ジャパンのインタビューでは、撮影現場で生まれた会話の一部が最終的な映画の台詞にも取り入れられたことが紹介されている。
こうした制作方法は、観客に作り物らしさを感じさせない人物描写につながっている。
2. 奈良の自然が単なる背景ではない河瀬作品では、森、山、川、雨、風といった自然の存在感が非常に強い。
『萌の朱雀』では山村の風景が過疎化する地域の時間を伝え、『殯の森』では森そのものが登場人物の喪失と再生を表現する空間になる。
自然は人物の感情を説明するための背景ではなく、人間もその一部として生きているという感覚を伝える役割を担っている。
3. 家族を血縁だけで定義しない『萌の朱雀』『あん』『朝が来る』『たしかにあった幻』には、異なる形の家族や人間関係が描かれている。
とりわけ『朝が来る』では、出産した母親と育てる母親という二つの立場を通して、母性や家族の意味を問い直した。『たしかにあった幻』では、臓器移植によって他者の命がつながるというテーマにまで視点を広げている。
血縁や社会的な立場だけでは説明できない人間同士の結びつきに関心を向けている点が、河瀬映画を貫く重要な特徴だ。
4. 生と死を明確な答えにまとめない河瀬作品では、死別や喪失が描かれても、分かりやすい解決や劇的な救済が必ず用意されるわけではない。
『殯の森』では亡き妻への思いが、『光』では失われていく視力と人間の関係が、『たしかにあった幻』では心臓移植と失踪が、それぞれ物語の中心に置かれている。
観客に考える時間を残す演出は、河瀬映画の魅力であると同時に、好みが分かれる理由にもなっている。
【受賞歴と映画の評判】カンヌでの評価と2026年の最新作への反応
河瀬直美の主な受賞歴河瀬直美の国際的な評価を語るうえで、カンヌ国際映画祭は欠かせない。劇映画デビュー作から主要作品が継続的に同映画祭に選出され、監督本人も審査員を務めるなど、長年にわたって関係を築いてきた。
- 1997年:『萌の朱雀』で第50回カンヌ国際映画祭カメラドール受賞。
- 2007年:『殯の森』で第60回カンヌ国際映画祭グランプリ(審査員特別大賞)受賞。
- 2009年:カンヌ国際映画祭の黄金の馬車賞受賞。
- 2013年:カンヌ国際映画祭コンペティション部門の審査員に就任。
- 2015年:フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。
- 2021年:『朝が来る』で第45回報知映画賞監督賞、第75回毎日映画コンクール監督賞などを受賞。
- 2022年:フランス芸術文化勲章オフィシエ受章。
- 2025年:『恒星の向こう側』で第38回東京国際映画祭最優秀女優賞受賞。
特に注目したいのは、監督としての評価と俳優としての評価が両立している点だ。『恒星の向こう側』での受賞は、映画を作る側から演じる側へと表現領域を広げていることを示している。
『たしかにあった幻』の評判は?2026年公開の『たしかにあった幻』は、臓器移植と行方不明という二つの問題を結びつけた作品として、観客の関心を集めている。
映画.comのレビュー集計では、掲載時点で平均3.8点、81件の評価が確認できる。KINENOTEでは平均評点77.2点、89人の評価が掲載されている。集計方法や評価尺度が異なるため単純比較はできないが、一定の好意的な反応を得ていることが分かる。
観客レビューでは、臓器移植に関わる人々の葛藤や、病院での会話のリアリティ、命の受け渡しというテーマを評価する声が見られる。
一方、恋愛的な導入から医療現場を中心とする展開へ移っていく構成や、幻想的な演出については、物語の分かりやすさを重視する観客には好みが分かれる部分もある。
この作品を評価する際は、単純な恋愛映画や医療ドラマとして見るよりも、失踪という個人の問題と、移植医療という社会の問題をどう重ねたのかに注目すると理解が深まる。
河瀬映画の評判が分かれる理由河瀬直美の映画は、明快なストーリー展開や説明的な台詞を重視する作品とは異なる。自然の映像や沈黙、俳優の表情に長い時間を割くことがあり、観客に解釈を委ねる場面も少なくない。
そのため、映像の余白や人間の感情をじっくり味わいたい人には魅力的に映る一方、テンポの速い展開や明確な結末を求める人には長く感じられることがある。
評価が分かれること自体は、作品の価値を否定するものではない。むしろ、河瀬映画の特徴を理解したうえで作品を選ぶことが、鑑賞の満足度を高めるポイントだ。
【なら国際映画祭】河瀬直美が故郷・奈良で続ける映画文化の育成
河瀬直美の活動を理解するうえで、映画監督としての仕事と並んで重要なのが「なら国際映画祭」だ。
同映画祭は、奈良の平城遷都1300年にあたる2010年にスタートした。河瀬をエグゼクティブディレクターに迎え、2年に1度の開催を基本としながら、国内外の若手監督の育成や奈良を舞台にした映画制作、子どもや学生向けの映像ワークショップなどを展開している。
2026年は第9回なら国際映画祭を開催第9回なら国際映画祭2026は、2026年9月19日から23日までの5日間にわたって開催された。
公式発表では、世界各国の映画作品や若手クリエイターの作品を奈良から発信することが掲げられている。インターナショナルコンペティションやNARA-wave学生映画コンペティションなど、多様なプログラムが用意された。
また、公式上映スケジュールには、中川龍太郎監督の『恒星の向こう側』が特別招待作品として掲載されている。河瀬が出演した作品が、彼女自身の映画文化活動の拠点である奈良の映画祭でも紹介されたことは興味深い。
映画を作るだけでなく、次世代へつなぐ活動映画祭の存在は、河瀬直美の活動が個人の作品制作だけにとどまらないことを示している。
若手監督が映画を制作し、作品を発表する機会を設けることは、日本映画の将来にとっても意味がある。映画祭を通じて地域と世界の映像文化を結びつける活動は、奈良を拠点に創作してきた河瀬ならではの取り組みだ。
2026年時点での河瀬の活動を整理すると、劇映画の制作、俳優としての出演、国際映画祭への参加、地域の映画文化の育成という複数の領域が並行している。
【よくある質問】河瀬直美の映画に関するFAQ
Q1:河瀬直美の代表作は何ですか?
A1:代表作としてよく挙げられるのは『萌の朱雀』『殯の森』『あん』『光』『朝が来る』です。特に『萌の朱雀』はカンヌ国際映画祭カメラドール、『殯の森』は同映画祭グランプリを受賞しており、国際的な評価を知るうえで重要な作品です。
Q2:河瀬直美の2026年最新作は何ですか?
A2:監督最新作は『たしかにあった幻』です。2026年2月6日に公開され、臓器移植と行方不明をテーマにしています。一方、俳優として出演した2026年公開作には『恒星の向こう側』があります。
Q3:『恒星の向こう側』は河瀬直美が監督した映画ですか?
A3:いいえ。監督・脚本は中川龍太郎です。河瀬直美は可那子役で出演し、福地桃子とともに第38回東京国際映画祭の最優秀女優賞を受賞しました。
Q4:河瀬直美の映画にはどのような特徴がありますか?
A4:ドキュメンタリー的なリアリティ、奈良の自然を生かした映像表現、家族や生命、死別、再生といったテーマが特徴です。長い沈黙や自然の音を使い、観客に解釈を委ねる演出も多く見られます。
Q5:河瀬直美の映画を初めて観るなら何がおすすめですか?
A5:物語の分かりやすさを重視するなら『あん』、家族や社会問題に関心があるなら『朝が来る』がおすすめです。監督独自の映像表現を知りたい場合は『萌の朱雀』や『殯の森』から始めるとよいでしょう。
河瀬直美の映画は、1990年代の自主制作ドキュメンタリーから始まり、『萌の朱雀』『殯の森』による国際的な評価、『あん』『朝が来る』での社会的テーマへの展開を経て、2026年の『たしかにあった幻』へとつながっている。
一貫しているのは、人間の生と死、家族、故郷、他者とのつながりを見つめる姿勢だ。一方で、作品ごとに題材や物語の規模は変化しており、東京オリンピックの公式映画や国際共同製作作品にも活動の幅を広げている。
2026年は『たしかにあった幻』で監督として新たな劇映画を発表し、『恒星の向こう側』では俳優として東京国際映画祭の最優秀女優賞を獲得した節目の年となった。
初めて河瀬作品に触れるなら『あん』や『朝が来る』、映画表現の原点を知りたいなら『萌の朱雀』、より深く死生観や自然との関係を味わいたいなら『殯の森』がおすすめだ。作品を年代順にたどることで、河瀬直美が長年追い続けてきた「人はどのように生き、他者とつながるのか」という問いが、より鮮明に見えてくる。
主な事実確認資料: 河瀬直美公式プロフィール・組画、国立映画アーカイブ、ハピネットファントム・スタジオ、JFDB、第38回東京国際映画祭、なら国際映画祭、映画.com、KINENOTE。